バクフーンへと進化したマグマラシ、だが進化したのは通常のバクフーンではなく現代では失われた進化形であるヒスイバクフーン。此処はパルデア地方、元ヒスイ地方のシンオウ地方ならば兎も角何故こんな事になってしまったか全くわからない。
「バグゥ~♪」
「ケ、ケェン……」
そんなラビの焦りを気にしないと言わんばかりにバクフーンはダイケンキに寄り添いながら笑みを浮かべている。ダイケンキの傍にいられるだけで幸せだと言わんばかりの様子、肝心のダイケンキはどうしたらいいのか分からずに狼狽えてしまっている。海千山千百戦錬磨のダイケンキもこういう事には不慣れなのである。
「え、え~っと……ラビ、如何いう事なんだろ……」
「俺に聞かんでくれ……俺だって混乱してるんだ」
幾ら研究者顔負けの知識を持っていると言われているが、いわばメタ知識の結晶。こんな事は本当に想定外すぎて分からない。一先ず、改めてヒスイのポケモン図鑑を読んでみる事にする。
「ヒスイの中心にそびえし 霊山の気が 影響した姿と 考察。 行き場 失いし 霊魂を 己の炎で浄化し 送ると言う……霊山ってのはテンガン山の事でパルデア地方で言えば……エリアゼロかナッペ山か?いや確かにナッペ山の中腹にはゴーストタイプのジムリーダーのライムさんがいるがその程度の事でなんてあり得ないだろ常識的に考えて……」
「それじゃあ……元々この子がヒスイの血を引いててそれが開花した……とか?」
「それが一番可能性としてはありそうなんだよなぁ……」
先祖返りというのが現状では一番あり得る選択肢……それかこのパルデアの何かがヒスイに近い環境に近づけていた……という事になるのだが、このパルデアにそんなものが―――
「……あっ」
「あっその顔、何か心当たりがあるって顔だね!?」
付き合いの長さ故かサザレにはお見通しだった。かと言ってそれは可能性としては先祖返りよりも少ない可能性……だと思うが、絶対にないとも言い切れないのも事実……。
「サザレ、このパルデア地方に伝わるおとぎ話を知ってるか?」
「お、おとぎ話?知らないけど……関係あるの?」
「大有りだ。ある所に宝を集めるのが大好きな王様がいました、王様は異国の宝が大好き。噂を聞きつけてある日東の国から商人が来ました、商人は四つの宝を王様の前に並べました、並べられた物は……器、剣、木簡、勾玉……」
「4つの宝……でもそれが如何関係あるの?」
「ポケモンだったのさその宝が。宝として人々の手を渡っていくうちに欲望、呪いをその身に宿していき、王の欲望に当てられた事で遂には災いとなって暴れたらしい。ンでその宝は今も封印されているって話がある」
「そ、そんなのが……」
パルデア地方に存在する厄災とされる四災、ディンルー、パオジアン、チオンジェン、イーユイが関係しているかもしれない。元々使われていた器物に人間の強い負の感情が宿り、周囲の自然を取り込みながら変化・誕生した、付喪神または怨霊のようなポケモン。
「それは四災と言われ、今もどっかで眠っている。まあ俺が言いたいのは……マグマラシがヒスイの姿に進化したのは四災がその身に宿している呪いやら欲望やらに反応したんじゃないかって事。図鑑にも行き場 失いし 霊魂を 己の炎で浄化って書いてあるし……この場合は呪いやらを浄化する為にヒスイの姿になったんじゃないかなぁって」
「う、う~ん……もしかしたらそのポケモン達の餌食になった人達の霊魂がこのパルデアにある……とかだったり」
「ないとも言い切れないのがまたやだねぇ……悪行重ねた末に封印されたポケモンやら捨てられたぬいぐるみに怨念が宿って生まれたポケモンがいる世界だからねぇ……」
そう、絶対にないとは言い切れない。ゲームでも聖なる杭が災いの力を抑え込んでいるらしいが、長い時を経ている為か、杭は黒く禍々しく変色し抜いた途端に崩壊したほど。だがしかし、この仮説が本当だとするとある事が明らかになる。それは―――四災が封印を破ってくる可能性である。
「そうなるとマジでやばいぞ……仮にも災厄とすら呼ばれる連中だ……」
「そ、そんなにやばいの……?」
ゲームのポケモン図鑑の表記を借りるならば……災いの器たるディンルーは頭一振りで深さ50mの地割れを生み出し、災いの剣たるパオジアンは100トンの積雪を操り雪崩を起こしてその中を出入りして無邪気に遊び、災いの木簡たるチオンジェンは草木、森などからエネルギーを吸い上げて土地を荒廃させる力を持ち、災いの勾玉たるイーユイは3000℃に及ぶ炎を操る力でそれで砂利や岩を溶かしてマグマに変えてその中で過ごすという……。どいつもこいつも洒落にならない物ばかりだ、山を崩すバンギラスの生態が可愛く思える。
「早急に手を打つ必要があるな……」
「でももしも、だよ?」
「もしもでも動く理由には十分すぎる、無駄になる苦労ならばそれで良しだ、考え過ぎと心配のし過ぎでしたねで済む」
正直驚いたが、ヒスイの姿に進化した事でまたパルデアに危機が訪れているかもしれない事が分かった。バクフーンには感謝を―――……と思ったが、バクフーンはダイケンキの隣で既に幸せそうだった。
「もしかしてバクフーンってダイケンキの事が好きなの?」
「かもしれんな……」
バクフーンもといヒノアラシとの出会いは偶然崖から落ちて来たヒノアラシをダイケンキで助けた事から始まった。そこで一悶着が起きたが見事にダイケンキが一刀両断に解決、メスの個体だったのは知っていたが……こういう事になるとは思っていなかった、マグマラシになっても大してアプローチは掛けていないように見えたのだが……。
「まあ良かったじゃないかダイケンキ、お前にも相手が出来て」
「ケ、ケン!?ダ、ダイキンキケェン!!!ケェンッ!?」
「バッグゥッ……♪」
明らかに狼狽えている相棒、ラビとしてもダイケンキが何を言っているかは完全に分かる。しかもそれを受けてバクフーンは更に顔を赤くしながらそっとダイケンキの身体に寄りかかり始めた、それにも吃驚してバクフーンと自分を交互に見る相棒。こんなに慌てる相棒なんて何時以来だろうか……いや初めてかもしれない。
「フフフッお熱い二人の邪魔しちゃ悪いよラビ」
「そうだな、取り合えず封印の調査をしないと……んじゃダイケンキ、バクフーンごゆっくり」
「ケ、ケエェェェンッ!!?」
「バッグゥ……フゥゥン……♡」
頑張れ相棒、とエールを送るラビ。そんな場面をこっそりと見ていたチラチーノはうんうん、乙女の恋が叶って何より♪と嬉しそうにするのであった。何より……ダイケンキとバクフーンは子供が出来るタマゴグループなのでそっちでも安心だ、ラビを巡るあれらと違って建設的だと少しだけ笑うのであった。
「ケ、ケェェン……」
「バグ♪」
悪意ではなく純然たる好意なのでダイケンキも邪険に出来ずどうすればいいのか途方に暮れるのであった。相棒の心配をしてたらこれかよ……と言いたげに肩を落とす一方でバクフーンは酷く幸せそうな表情でダイケンキに寄り添うのであった。