「それではラビさん、お話を伺いましょう。チリから面談希望が来ていると聞いた時は驚きました……それで一体どのようなご用件で?」
「私は今回書記として同席させて頂きますのでご了承を」
パルデアポケモンリーグ本部へと到着したラビは早速オモダカへの面談に挑む事になった、チリは眼鏡を掛けた面接モードで書記を務める事になった。何処から話すべきかと悩んだが、素直に最初からすべてを白状する事にした。
「……チリ、如何ですか?」
「……申し訳ありませんがトップ、私はこのようなバクフーンを見た事がありません。此処まで温厚で大人しいなんてバクフーンとしてあり得ないと言ってもいい」
「太古のヒスイの地にて確認されたヒスイのリージョン、ヒスイバクフーンです。私の家でマグマラシが突如としてこの姿に進化してしまった、それが事の発端です」
そこからの話にオモダカは極めて真剣な表情を作っていたつもりなのだが、話を聞くたびに驚愕に染まり、パルデアが知らぬ間に大きな危機を迎えていた事を理解し頭を抱えた。それはチリも同様である。そしてそのポケモンの捕獲に成功し、ラビ達の元に居る事も理解した。
「何っちゅうかまぁ……とんでもない事になってたんやなパルデア」
「全く、確かに各地で地割れの被害や小規模の火災の被害は報告はされていましたが……ポケモン達のバトルによるものだと思って軽く見ていました、ですが……そのように考えていた自分が恨めしい……」
話を聞いてパルデアに眠っていた厄ネタに頭が痛くなってきた二人。まあそんなことを言ったらパルデアの大穴の奥に眠っている物なんて……まあ敢えて言う事もあるまい。
「しかし、なぜ我々に連絡も―――いえ、ポケモンの進化に疑問に思ったからと言われただけでは此方も動きようがありませんね……寧ろよく封印されているポケモンに辿り着く事が出来ましたね、と驚きすら覚えます」
「霊魂を鎮める、霊魂とはゴーストタイプ、それらが悪戯好き、そこからの思考の転換です。そして……これがその四災の一角、チオンジェンです」
「カキシルスッ」
「「っ!!」」
ボールから出されたチオンジェンに思わず二人は腰を浮かせた。ポケモンには様々な種類がいて姿も全く違う、中には古代の剣に宿って誕生したポケモンなども居るが、チオンジェンのそれはそれらとは全く違うように思えて致し方なかった。
「キ、キルス……」
「大丈夫、大丈夫だよチオンジェン。この人達は敵じゃない」
何処か怯えているようなチオンジェンの様子に膝をついて身体を撫でるラビ。それに縋るように蔓を出してラビの腕に巻き付く姿は子供が大人にしがみ付く姿を連想させ、二人は慌ててチオンジェンに謝罪をする。怖がらせるつもりは毛頭なかったのだ。
「これが、封印されていたポケモンですか……確かに他のポケモンとは異なる、異質な何かを感じますね」
「チオンジェンは土地から栄養を吸い取る力があります、それによって不作や土地の砂漠化……といった事も考えられますね」
「とんでもない力や……そんなんが4体もいっぺんに復活したなんて、下手せんでも大パニック間違いなしやったな……トップ、こりゃラビさんを下手に怒る事がでけへんね」
「ええ……寧ろ感謝すべき点が多すぎる……私達がその話を聞いていたとしても、動く為の材料が少なすぎる上に編成などを考えて時間が掛って何もできずにいた可能性の方が高い……しかし、ラビさん申し訳ありませんが軽々とそういう事にする事も出来ないのもご理解頂きたいのです……」
オモダカの言いたい事は分かる、ハッキリ言って自分の行いは愚行だ。組織のトップとしてそれを許すという事は出来ないのは重々承知しているつもりでいる。故にラビは幾つかの事を想っている。
「分かっているつもりです、今回の一件については私の責任です。故に私としてはパルデアリーグに早業と力業の中心地となって頂こうと思います」
「な、なんやて?」
「皆さんに技の皆伝やその為の訓練方法などをお伝えします、そしてそれをアカデミーで教えていく体制を整える手伝いをさせて貰おうと思います」
それはつまり、以前チリが考えるだけ考えていたという早業と力業をパルデア地方に還元する事に近い提案であった。各地方ではラビが教えた人達が一応教えてはいるのだが……立場が立場である為にそこまで広く指導出来ていないのが現状、一応ナンジャモが技皆伝への道!!と称した配信シリーズもあるのだが……それを真似て練習し成果が出す者も少なからずいるが、それでも皆伝にまで至れた者はごく少数でしかない。
「つまり、パルデアから早業と力業を各地方へと発信していくと……?」
「そう出来ればパルデアとしても多くの人が訪れる事になり、各地方との交流も盛んになっていき経済も発展します」
「良い事づくめやな……」
「勿論これにも問題はあるでしょう、受け入れの問題や業の専門的な知識の蓄積など……それらは私も協力しますし、シンオウ地方のヒスイの一族の皆さまの紹介も出来ます」
素直なことを言えば今回はラビを制御する為に叱責をする用意があった。だがそれらは容易に挫かれて感謝しか浮かばなくなってきた。そして今度はパルデアの大発展のチャンスが巡ってきた……自分達にとっていい条件過ぎて笑いそうになる。
「では、ラビさんのメリットをお聞かせ頂けますか?これまで私のスカウトには常に首を横に振られていました。ですが今回のこれは貴方が私達パルデアリーグと強い結びつきとなるという事になります」
「条件は……私、レビ、レベ、ロルが捕獲したポケモン達の安全の保障です。彼らに罪はありません、寧ろ彼らは純粋だという事が分かります。確かに持つ力は強大ですが、だからこそ深い理解と触れ合いが必要です。ですので彼らについては私達に一任してほしい、それが条件です」
そんな条件を……と思った。この人は本当にポケモンの事を大切に思っているんだなと思い知らされる。ポケモンを愛していると言っても過言でもない。捕獲して間もないポケモンの為に其処まで身体を張るなんて事は普通は出来ないだろう。だからこそ―――好ましい。
「分かりました。しかし此方としても興味深い存在ですので定期的な検査などはご理解ください」
「その位でしたら大丈夫です」
「ほなら交渉成立やな、ほな早速技の伝授頼む!!チリちゃん力業使いたいねんで!!」
「折角ですから四天王全員で伝授を目指してみますか」