初めて見たバトルは幼馴染のホップと見た彼のお兄さん、ダンデさんのバトルだった。その時既にチャンピオンの座にあったダンデさんのバトルは当時から洗練されていた、ガラルでは無敗を誇り世界大会でも上位入賞をする実力者、そんな彼のバトルを見て自分は思った。バトルって楽しそう、そんな子供が抱く当然の感想を抱いて私はバトルの世界に憧れた。
あれから強くなった自覚はある、ホップやマサルと一緒にジムチャレンジをしてトーナメントを勝ち上がって、ホップにもマサルにも勝って挑んだダンデとのチャンピオンカーニバル。私はそれに勝って無敗を継承して新しいチャンピオンになった。でも……訪れたそれに私は首を傾げ、次第に現実その物に嫌気がさし始めた。
誰も私を求めずにダンデさんの後継としてのチャンピオンを求めた。そこに私は介在していない事に気づくのは遅かれ早かれだった、気づけば私のスタイルはダンデさんの物に近づいて行った……大好きだったリザードンポーズをして二代目と言われたり、マントを付けないかとも言われたり……そして、誰も私を本気で倒そうとしなくなっていった。
「ユウリは本当に凄いな!!兄貴みたいに最強のチャンピオンになって!!」
博士としての道を歩み始めたホップが私を褒め称える、幼馴染として、ライバルとして誇らしいと胸を張って毎日ポケモンの研究に楽しそうに取り組んでいる彼がどうしようもなく輝いて見えて、戦ってもいないのに、酷く打ちのめされたような気分になっていった。負けていない筈、それなのに私は敗北者となっていくのが分かってしまった。気づけば、私は誰かと関わる事が嫌になり始めていた、だからバトルにのめり込もうともしたが……自分が大好きなそれで抑え込もうとする自分が酷く醜く思えてしまった。そして、私は仕事が入っていない時はワイルドエリアにいるようになった。誰かと過ごすよりも一人でポケモン達といる方が、ずっと楽しい事に気づいてしまった。
「……なんで、私チャンピオンになったんだっけ……」
始まりは、ホップやマサルと見たダンデさんのバトルだった筈……だけど思えばホップとマサルはチャンピオンになりたい、ダンデさんを超えるトレーナーになりたいという明確なヴィジョンがあったように思えた。比べて私は―――ただ漠然と友たちがそうするなら付き合おうかな、惰性にも似た何かで同じ道を歩んだだけじゃないのか……?と思った瞬間に、バトルにすら軽い嫌悪感を覚えてしまった。
「……バトルが、楽しくないなんて思ったことなかったのに」
そんな私の元を訪れた人が居た、最近様子を見に来ることが多いキバナさんかと思ったが違った。そこにいたのは私が大好きな配信者のラビさんだった。ラビさんの配信は何時も好きで大好きでずっと見ている、暇な時があればアーカイブを見直したりもする。この人は本当にポケモンの事をよく理解していて知識も凄くて、夢特性の話を聞いた時の衝撃は凄かった。そんな人が会いに来た理由は分からなかったけど―――
「ポケモントレーナーが目を合わせたらやる事は一つ」
その言葉を聞いて血流が一気に加速するように全身が熱くなった、本当にバトルしてくれるの⁉ゲスト主演するチャンピオンや四天王の話を聞いてずっとしたいと思っていたけど、本当にっ……!!
「目と目があったらそれは、ポケモンバトルの合図!!」
「名刺交換替わりの一勝負!!行きますよ、ネンドールさん!!」
「行くよっアーマーガア!!」
私は、この人の象徴の一つであり配信でマスコット扱いされているアーマーガアを繰り出した。相手の強さを乗りこえてみせる、それが自分のバトル。
「アーマーガアアイアンヘッド!!」
「高速スピン!!」
アーマーガアが突撃していく、だがネンドールは高速で回転し始めた。回転によって生まれた空気の渦による障壁、だけではない。湖の水をまき上げて巨大な水の竜巻を生み出してしまった。それに向かっていくアーマーガア、だがアイアンヘッドはいとも簡単に跳ね返されてしまった。
「冷凍ビーム!!」
「アーマーガア避けて!!」
「ガアアアッガ、ガアアッ!!?」
「こ、氷状態!?い、いや違う、身体の水が⁉」
水の竜巻の内部から放たれる冷凍ビーム、それを回避した筈なのにアーマーガアの翼の半分が凍り始めていた。氷を引いた、いや違う。高速スピンで巻き上げられた水を凍らせている、アーマーガアの機動力が奪われた、マズいと思ったが
「チャージビーム!!」
「ネェエエンッ!!!」
竜巻が四散、即座に放たれるチャージビームがアーマーガアを貫く。それによってアーマーガアは撃ち落されて戦闘不能になっていた。アーマーガアが簡単に倒された事実にユウリは驚いた、彼は自分の手持ちの切り込み隊長、それがこんな簡単に……体が震える、恐怖じゃない―――でも湧き上がるそれを抑えられない……!!
「アーマーガア戻ってっ!!お疲れ様……オーロンゲ!!」
「ゲーロンゲ!!」
「マジカルシャインッ!!」
「光の壁!!」
悪戯心で先制で光の壁を張る、だがその輝きで想定以上のダメージを負ったオーロンゲは片膝をついた。信じられない光の壁でダメージを抑えてるのに⁉こんなにもトレーナーとしての差があるの?ポケモン一体でこんなにも力の差があるの―――最高、彼に勝ちたい、乗り越えたい、ラビさんが立っている景色を目に焼き付けたい!!
「オーロンゲ戻って!!行くよ、エースバァン!!!」
「バァアアンッ!!」
相手の手持ちが分からない、だけどここは最大戦力を投入して流れを変えなければ勝機はない。相棒からあまりにも早すぎないかという視線が飛んでくるが、自分の顔を見て納得したように気迫を込めて大声を出す。
「エースバーン、回転火炎ボール!!」
「スッエンバァアアンッ!!」
「高速スピン!!」
見事な脚捌きからのシュートを放つエースバーン、それに対して再び水を巻き上げて竜巻を引き起こすが、火炎ボールは水の竜巻を突破した。回転を加えられた火炎ボールはドリルのように竜巻を食い破ってネンドールへと直撃、その威力は半端ではなくネンドールは竜巻から押し出される形で吹き飛ばされる。それを必死に堪えるが
「テレポート!!」
「ネ、ネンッ!!」
吹き飛ばされながらもネンドールは指示を聞いてテレポート、その直後に追い打ちの火炎ボールが飛来し、湖に炸裂して巨大な水柱を打ち上げる。テレポートアウトしたネンドールは直ぐに状況の把握に努めるが、それよりもずっと早く、空中のネンドールの懐へとエースバーンが踏み込んだ。
「ダメ押しぃ!!」
「バァァアアンッ!!!」
ネンドールの身体に炸裂する猛烈なソバット、そのままネンドールごと湖の畔へと墜落する。そして立ち上がったエースバーンは目を回しているネンドールを見てガッツポーズを取った。
「戦闘不能ですね、ネンドールさんお疲れさまでした。ゆっくり休んでください」
ネンドールを戻したラビはどこか楽し気な顔をしていた、久しぶりに味わうハイレベルの攻防にトレーナーとしての血が騒いでいるようにも見えた。その顔にユウリは益々嬉しくなった、戦慄して動けなくなった訳でもなければ戦意を失ったわけでもない。まだまだ戦ってくれる瞳だ!!
「行きますよゴルーグさん!!」
「ルッグッ!!」
「行くよ、もっともっともっとギアを上げていくよエースバーン!!!」
「バアアアアッン!!!」