イダイナキバとテツノワダチが食べていたと思われる秘伝スパイス、すぱスパイスをゲットし早速サンドイッチにして実食しているのだが―――
「「―――すっっっっっぺぇぇ!!?」」
「……滋養強壮にも効き栄養も豊富。これ以上の栄養食はないと断言出来る、出来るけど……」
「す、すっぱいちゃんだぜこりゃ……」
ペパーの持っている本、スカーレット&バイオレットブックに載っていた通りにすぱスパイスは栄養たっぷりで滋養強壮効果もあり、疲れた身体と心に染み渡ってみるみるうちに回復させる効果があった。実際にバトルで疲れていたアーマーガアやアチゲータ達にも振舞った所、あっという間に回復してしまった。それを見て効果はある!!と確信していざ、自分達も……と口にしたのだが、その名前の通りに酸味が酷く強い。
「アギャ!!」
「ガツガツガツ……ギャアッ!!」
「コライドンとミライドンは美味そうに食ってんなぁ……ポケモンには美味いのかぁ?」
「味覚の違いはあるとは思いますが……ペパーさん、マフィティフさんの様子は?」
「ああ、こっちも良い喰いっぷりでもりもり食べてくれてる。前よりも体温も上がってるし確実に元気になってると思う」
ペパーの相棒のマフィティフ。パルデアの大穴で大怪我を負ってしまい、バトルどころか歩いたり目を開くことさえままならないほどに衰弱しきっていた彼を元気にする為にスパイスを求めるのがペパールートのレジェンドルートの根幹ともされている。
「マフィティフさん、早く元気になられるといいですね……だいぶ良くなっているのですか?」
「ああ相当な!!今までは目を開ける所か声も出せない程だったのに、まだ動けないけどこうしてご飯をモリモリ食べてくれるぐらいには回復してるんだ……俺はもう、それだけで嬉しいちゃんだぜ……!!」
「そうなると、肉体的なダメージですか……となると秘伝の薬などは試さなくて正解でしたね」
「秘伝の薬……?」
「なんだそれ、秘伝スパイスと何か関係あるんですか?」
秘伝の薬はジョウト地方のタンバシティにて調合されている特別な薬でこの薬で灯台のデンリュウが回復した事もある薬。
「ですがこの薬は余りにも効果が強すぎて余程重症でなければ使えません。加えて強い薬ですのである程度ポケモンの方の体力も求められますので」
「じゃあマフィティフには無理かもな……いや大丈夫だ、残り秘伝スパイスはあと一つ。それさえ食べれば絶対に元気になる!!してみせる、だってマフィティフは……俺の大事な……」
「バフゥ……」
「おっ何だ水か?よし、ゆっくり飲むんだぞ」
その様子から矢張りペパーはマフィティフの事を酷く大切にしているのがよく分かる、それも当然だろう。彼にとっては両親がいない間、共に居てくれたのはマフィティフなのだから……
「それでは皆さんはこのまま次のヌシへ向かうと?」
「うんそうかな、ジムに挑みながら鍛えながら行きたい。今回の事で私ももっと育てないとって危機感あるし」
「次のヌシもこんな感じだったらやばいもんな……」
「確かに……」
次となると偽竜のヌシ、シャリタツの所になる。今回とある意味条件は似ているが、今回よりかはマシだろう。まあシャリタツがヘイラッシャと共に居るととんでもない爆発力を発揮するが……その辺りは彼らの成長に期待するしかないだろう。
「ラビさんは如何するんですか?」
「お手伝いしたいのは山々ですが、私は私で仕事やらがありますからね……」
「そりゃしょうがないさ、今回手伝って貰えただけでも助かったし」
「すみません、お詫びと言っては何ですが……ペパーさん此方をどうぞ」
バッグから取り出したのは紙袋、ペパーはそれを受け取りながらも中身を確認するとそこにあったのは丁寧に小分けにされた薬の袋と何かのゼリーだった。
「これは?」
「知り合いの漢方薬剤師が作ったポケモンさん用の漢方薬です。身体の調子を整えてくれる物です、一緒のゼリーに包んで飲ませれば苦みを感じずに飲めますよ」
「おおっマジか!?有難うちゃんだぜラビさん!!」
「アギャッ?」
「ギャッス?」
漢方薬に興味があるのか匂いを嗅ぐミラコラコンビ。ペパーは取られないように隠し、アオイとハルトが二匹を止める。
「お二人はまだ食べ足りないのかもしれませんね」
「全く食いしん坊ちゃんめが……分かったよ、今回お前ら頑張ったもんな、追加でなんか作ってやるよ」
「「アギャッス!!」」
「うわぁっ!?分かった、分かった分かったから舐めるな!!?やめろ圧し掛かってくるな、うわあああ!?ア、アオイ助けてくれ~!!?」
二匹からしたらペパーのご飯が食べられる事が嬉しい上にこれまで塩対応だったのが褒めてくれて嬉しくなってしまったのだろう。ペパーにじゃれつく姿は本当に犬のようだ。そんな二匹を見て少しだけ笑うマフィティフ、もしかしてこの二匹が犬っぽいのはマフィティフと一緒に居たからなのではなかろうか。
「ったく持ってきた食材の殆どを喰いやがって……」
「ご、ごめん私もいっぱい食べちゃって……」
「い、いや気にすんなよアオイ。結局俺が作ったんだしさ……味、如何だった……?」
「とっても美味しかった!!すぱスパイスの後だからすごい美味しかった!!」
「そうか、そうか……!!へへっ今度はすぱスパイスだって最高に美味く調理してみせるからな!!」
と何やら青春をしているアオイとペパーを生暖かい目で見つめるラビとハルト。ミラコラは頭にハテナを浮かべているが、何やら楽し気な雰囲気は感じているのか尻尾を振っている。
「それでは皆さん、お気を付けて。私はまだロースト砂漠の方に居ますから何かありましたら連絡してください。それと何か力になれる事があれば是非お声掛けを」
「うん有難う御座います!!私はこれからカラフシティでジム戦をお願いしてきます!!」
「そういえば直ぐにこっちに来ちゃったもんな……よし頑張るか!!」
「んじゃ俺も付き合うぜ、カラフシティで食材とかの調達したいし」
そこでアオハルペパーと別れたラビ、何故ロースト砂漠に残ったかと言われれば―――勿論理由は一つしかない。ゲットした二匹のポケモン、イダイナキバとテツノワダチの事があるからだ。
「出てきなさいイダイナキバ!!」
「……ファアド」
スパイスの効果だったのか、巨大だった体躯は小さくなっている。それでも十分大きなポケモンではあるのだが……イダイナキバは何処かムスっとしたような顔をしながらも此方を見つめて来る。
「貴方にとって私の手持ちになる事は不服かもしれません、ですが貴方がこの世界で生きていく為には必要な処置なんです。如何か分かってください、そしてこれから私と一緒に行きましょう」
「……」
流石に難しいか、とも思ったのだがイダイナキバは静かに近づいてくると鼻で手に触れてきた。小さく頷いて鳴くイダイナキバ。如何やら彼からすれば戦いに敗れた自分に選択肢はない、敗者は勝者に従うまでだと言わんばかりの態度。強い者には従う、ある意味で力が全ての古来らしい価値感かもしれない。
「宜しくお願いしますね、イダイナキバ」
「……ファアド」
「さてと、問題は多分……」
今度はテツノワダチを出してみるのだが……こちらはイダイナキバのような事はなかった。
「ウィ・ルドン・ファァアアアアア!!!!」
「ええいしょうがない!!迎えうちます!!」
「ドンファアアアアアアドッ!!!」
「いや貴方はまだ回復してないんだから戻りなさいってこらっ!!ああもうしょうがない、アーマーガア、彼の援護!!」
「ガアアアアア!!!」