週刊エンジョイポケモン放送局   作:魔女っ子アルト姫

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スタート:サーベイチーム

「ガラルファイヤー、それが大怪我をした理由の調査ですか」

「そう、それをキバナさんから貴方の推薦を受けましてね」

 

スパーリングの後にラビはユウリに会いに来た本当の理由について話した。配信を見ているユウリはファイヤーについては知っており、それについての調査も納得したようだった。

 

「カンムリ雪原……確かに近々行こうかな、と思ってた所ですね」

 

だが何処かユウリは悩んでいるような様子だった、何を悩んでいるのだろうか。

 

「何か予定でも?」

「……いえその、チャンピオンとしての仕事とかその……」

 

このワイルドエリアにいるのもチャンピオンの役目がない時のみ、ガラルのポケモンリーグから通達がくれば自分はそれに従わなければならなくなる。それに備える必要もある、調査をするからにはしっかりとやらなければいけないのでそちらを放棄する覚悟で当たらなければならない。だが……

 

「ユウリさん、貴方は迷っているのですね。皆が望むチャンピオンユウリであるべきか、自由なポケモントレーナーユウリであるべきか」

「……はい」

 

チャンピオンに就任したユウリ。様々な人が自分をチャンピオンとして迎え入れてくれた、自分を目標にして腕を磨いたり、自分のようになりたいと言ってくれた子供の視線も嬉しかったし、楽しかったことも多かった……だがそれ以上に自分へと突き付けられる重責が多かった。

 

「ダンデさんが素晴らしいチャンピオンだったとは私だって思いますよ、だからその後任を務めろって意見は正しいとは思いますよ、思いますけど……」

 

言葉に詰まってしまう、これ以上、言っていいのか分からない。言ってしまったらもう戻れない気がしてしまった……。

 

「なら一歩踏み出してみるのもいいのでは?」

「踏み、出す……ですか?」

「貴方は子供だ、自由に一歩を踏み出した所で誰も怒りません」

 

ラビは隣に座ったままスマホを取り出して誰かに電話をかけ始めた。それは直ぐに繋がった。

 

『よぉっラビ、なんだ何か……ってユウリも一緒か、なんだオレ様の力が必要か?』

 

相手はキバナだった、見慣れた頼りになる不敵な笑みが相変わらず絵になる人だなぁ……と何処かボンヤリとした思考でそれを見つめているユウリがいた。

 

「キバナさん、ダンデさんの連絡先分かります?」

『アン?あいつのか、そりゃ知ってるけどよ……如何した?』

「ちょっとね、それとキバナさんハッキリ言っておきますけど彼女、かなり危険ですよ」

『何?説明しろよ』

 

ラビはそのまま今のユウリの状況を分かる限り話した、その際もユウリはボンヤリとしたままだった。その様子も見せつつ話を進めていくとキバナの表情は徐々に曇っていき、遂には声を上げながらもつけているバンダナを叩きつけた。

 

『……すまねぇラビ、オレ様、ユウリがそんな状態なんて分かりもしなかった……ああくそ、オレ様達が追い詰めちまったのか……』

「正確に言えばガラルの風潮と言うべき物が、ですね。レッドさんと違ってダンデさんは積極的にイベントやらにも出てましたし」

 

同じく不動且つ無敵のチャンピオンとして君臨していたレッド。彼の場合は無口且つバトル以外の事には基本的に興味を示さない上にイベントなどにも全くでないので何者も寄せ付けない孤高且つ無敵のチャンピオンという像しか生まれない。故に彼の後任というよりも勝利したサトシに向けられるのはレッドに勝利した強さのみだった。

 

だがダンデの場合は違う。彼はガラルのチャンピオンとしてはこれ以上ない程に完璧だったからこそ来る弊害が生まれてしまっている。比較されるのは当然にしてもそれを要求するのは可笑しい点もある、ダンデよりもずっと幼い少女にだ。ガラルのチャンピオン、いつの間にかそれはダンデという一人のトレーナーになっていた。後任者にも当然のように強要される概念になっていた。

 

「今、彼女がワイルドエリアにいるのも人と接するのが嫌だからですよ。最早世捨て人だ、今こうしている時もボンヤリとしている、私と一緒の時はこうじゃありませんでしたよ」

『……ああくそ、ユウリのお袋さんになんて謝ればいいんだよ……』

 

乱暴に髪を掻くキバナ。どうやらユウリの母も娘の異変には気づいていたとの事、それでキバナが相談を受けた事があったのだが……。

 

『なぁラビぃ……オレ様どうすりゃいいんだ……?子供は子供らしく元気であってほしいぜ……』

 

その言葉には素直に賛成だ。今のユウリは明らかにキャパオーバーで負荷が掛かり過ぎている、そのせいで様々な事への反応が鈍くなっている、受け流して自分を守ろうとしている。自分が来て反応したのも好きな配信者が来たしバトルでいい感じに息抜きが出来たからだろう。

 

「ダンデさんと協力して今のガラルを変えてください」

『……出来ると思うかオレ様に、つい最近まで会ってたのに気付けないようなオレ様に』

「貴方とダンデさんのタッグに出来なければ私がやりますよ、まあその場合はガラル地方のポケモンリーグが崩壊しても知りませんけど」

『ちょっと待てお前何やる気だ!!?』

「私の配信で言うだけですよ?ガラル地方の闇!?チャンピオンユウリを前チャンピオンの替え玉!?って面白おかしく騒ぎ立てます」

『鬼かてめぇ!!?下手したら世界中からガラルが叩かれるじゃねえか!!?ガチでガラルリーグが解体されるかもしれねぇじゃねえか!!?』

 

実際やる気はサラサラ無い、ンな事しても自分に全くメリットはないしそれどころかサザレにも迷惑が掛かるので絶対にやらない。が、これぐらい言えば兄貴気質なキバナの事だ、確実に動く。

 

「まあ冗談は置いといて、トップジムリーダーとチャンピオンのタッグで解決出来ない事なんてある訳ないじゃないですかやだな~本気にして~」

『テメェ今数秒前に言ったセリフ思い出しやがれ!!ガチの真顔でそれ言っても冗談とかの説得力皆無だ阿保!!!』

「大丈夫ですよアンタはガチ恋勢の誰かに拾われるから」

『そういう問題じゃねぇ!!?』

 

ゼエゼエと息を荒くしながらも近くにあった美味しい水の1リットルペットボトルを掴むと、そのまま一気飲みをした。そしてバンダナを付け直すと―――見慣れた不敵な笑みを浮かべた。

 

『うぉし分かった!!そもそもオレ様が感じ取ってやるべき事だったからな、この際だから徹底的にやってやらぁ。この前のネットニュースの訴えも含めて同時進行でやったらぁ』

「あっあれどうなるの?」

『名誉棄損で訴える事になってるぜ、まあそっちは置いといて……ダンデの野郎もあしらい方とか教えとけってんだ弟のダチだろうに……ってあいつは全部対応出来ちまうからあしらい方なんざ分かんねぇのか……ああくそ考える事多いな……あっそうだ、いっその事、一時的にあいつ復帰させちまうか』

「えっ?」

『そうかそうか、こりゃいいアイデアだな流石オレ様』

 

笑い始めるキバナに何やらサムい物を感じるラビ。ある意味自分の考えていたことよりもずっとあれな事なのではないだろうか……?

 

「何する気なんですか」

『何お前の考えより余程効果的且つガラルとしてもいい方向なもんだ、オレ様としてはお前のあくどさに引いてる所だ』

「誉め言葉として受け取っておきます」

『そういう所だっつの……まあんじゃ頼み事だ、ユウリにはチャンピオン云々は気にするなって言ってくれ。ついでだ、カンムリ雪原の調査は休暇だと思って気楽にやってくれって伝えてくれ』

「いや、伝えられますよ今」

 

隣にはボゥ……としているユウリがいる、というか聞こえていると思うのだが……聞いているとしても認識して受け入れているかはともかく……。

 

『いいや、お前から頼むわ。んじゃ頼んだぜ』

 

その言葉を最後に通話を終了するキバナ、全く一方的なんだから……と言いたくなるが、まあこれはこれでいいのかもしれない。

 

「ユウリさん、ユウリさん」

「……えっあっはい!!起きてましたよ寝てません!!」

「寝てはないけど起きてただけですね分かります」

 

これは本当に聞いていなかったという事のいい証明だ、自分が思っていた以上にユウリの精神状態は芳しくない。下手をしたら集団幻覚のムゲン団の数歩手前辺りにいるのではなかろうか……。

 

「キバナさんから伝言を預かってますのでお聞きください」

「あっはい!!(お聞きくださいって録音かな……?)」

「オレ様が上手い事手回ししてやるから一旦チャンピオン云々は忘れて唯のユウリに戻れ。休暇代わりにカンムリ雪原の調査に行ってこい、との事です」

「えっ声真似うま……えっなんで声真似……?」

 

そこは追及しないでくれると助かる、唯の三十路の茶目っ気である……そう、三十路の茶目っ気なのだ……少しでもはっちゃけて忘れたいのだ。

 

「少しの間宜しくお願いしますね、君の名前は?」

「私は―――ユウリ、唯のユウリです!!好きな事はポケモンバトルな女の子です!!」

「成程、私は―――おっと、俺はラビ。イラストレーターのラビだ」

 

こうしてユウリとのカンムリ雪原の調査が始まろうとしていた。

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