「……」
「おい、いつまで凹んでる気だ」
「俺は、俺は……チャンピオン以前に、失格だ……」
キバナはとある場所に出向いていた。それはガラルのバトルタワー、そこはとある男の仕事場になっている。前ガラル地方チャンピオン、現ポケモンリーグ委員長にしてバトルタワーオーナー、ダンデである。キバナがここを訪れる事はそこまで珍しくはないのだが、今回は至極真面目な顔をしていたのでダンデも応接室に通したのだが……そこで語られた内容に頭を抱えていた。
「ンな事言われたらオレ様なんて如何すんだ、ちょくちょくユウリの顔見に行ってたのに全然気づけなかったんだ。オレ様の方が余程あれだ」
「……俺はユウリとは仲が良い、弟の友人としてではなく、俺の友人として接しているつもりだったんだ。それなのに俺は……友のそんな状態を見抜く事も出来ずに……」
同期と言える存在が今、このガラルではユウリと距離を取ってしまっている。マサルはカントー地方へ、ホップは研究者の道へ、そしてもう一人のライバルとも言うべきマリィは正式に兄からジムリーダーを引き継ぎ、自らマイナーリーグからのやり直しを希望し、見事にメジャー昇格を果たした事でガラルにマリィフィーバーを起こす程の逸材となり、スパイクタウンは今その対応やらで大忙しになっている。
「……以前からずっと思ってたんだ。この地方には四天王制度がない、故にチャンピオンはより大きな隔たりを超えた先の存在だと、だから改定を目指していたんだ……それも遅すぎた……」
「立場的な意味でもオレ様達ジムリーダーとチャンピオンは距離がある、傍にいる四天王は採用すべきかもな……」
一先ず、それらも踏まえて―――キバナはダンデに話を持ってきた。
「ンで、如何する?」
「乗った。俺の責任だ、俺が全て責任を取る」
「何言ってんだ、オレ様も、だ。近くで見てて見抜けてなかった節穴だぞ、このままジムリーダー引退してもしょうがねぇとすら思ってる」
「いや、それは凄い荒れるぞ」
「この話そのものが荒れるんだ今更だ……ンじゃ手始めに会見頼むぜ委員長」
「分かったぜ―――久しぶりのチャンピオンタイムだ」
「んんっ~……」
トンネルを駆け抜ける列車内で身体を伸ばすユウリ、窓の外には生憎暗闇しか映らないそんな光景すら輝いて見えるのだから不思議な気分だった。
「起きたみたいだな、どうだよく眠れた?」
「いやぁ……もう最高に眠れましたね、こんなにスッキリした目覚め何時以来だろ」
快眠出来ましたと言わんばかりにいい顔をするユウリに車内販売で買ってきて弁当を差し出す。景色は良くないが、昼食にするのだ。ユウリは凄い勢いで食べ始めていく。
「そんなにお腹減ってたのか」
「んっ~ワイルドエリアでもご飯は食べてたんですけど、でもなんか食欲が湧かなくて普段の半分ぐらいだったからかな……なんか今は凄いお腹減っちゃってます!!」
「俺と一緒に食べたカレーは?」
「ああっ言われてみたらあの時も久しぶりに8分目まで食べたかもしれませんね」
改めてユウリがかなりの所まで来ていたのがよく分かった、これはキバナが行動を起こしたのは本当に大正解だったのだろう。今回の調査が気分転換になればいいのだが……。
「さてと、改めて今回の目的はカンムリ雪原の調査。理由としてはガラルファイヤー及びガラル三鳥を脅かす存在がいるかの調査だ」
「はい、でも具体的にどんな所を調査するんですか?ガラル全体に比べたら狭いですけど、それでも調査区域は広いですよね?」
「一応目星はつけてあるんだ」
そう言いながら懐から地図を広げる、紙の地図に何処か宝探しのような雰囲気を感じたのかユウリはワクワクしたような表情でそれを見る。ポイントをペンで指しながら説明する。
「主に調査するのはダイマックスアドベンチャーが行われている大規模な巣穴、通称マックスダイ巣穴、黒鉄と岩山の遺跡、ボールレイクの湖畔にあるダイ木の丘、最後にカンムリ神殿だ」
「巣穴に遺跡に木のある丘に神殿ですか……」
「ああ、今乗ってる列車が駅に着いた時に一番近いのが巣穴のダイマックスアドベンチャーだな」
まずはそこから調べるのが手堅いだろう。なにせあそこは伝説のポケモンすら出没する魔境、今思うと本当に何故出現するのだろうか……実はウルトラホールが繋がっていたりするのだろうか……そう仮定すると納得がいく、ウルトラビーストも出現するし……。
「まずはそこから始めるって事ですね、マックスレイドバトルなら得意ですから任せてください!!ワイルドエリアでは毎回やってましたから!!」
「それは心強いな」
自慢気に胸を張るユウリ、だがあそこはある種バトルファクトリーのシステムも混ぜ込まれたような所だから調子が崩れなければいいのだが……そんな時にスマホに緊急ネットニュースが流れた。そこには―――
『チャンピオンユウリ、一時チャンピオン休止!?ダンデ、チャンピオン代理に電撃復帰!?』
というのがあった。どうやら動いたらしいが……だとしても余りにも早過ぎないだろうか……と思うのは自分だけだろうか、まだキバナと別れてから数時間しか経っていない筈だが……まあ其方は完全にあの二人に任せるのが一番だろう、今はユウリに色々と楽しんで貰うのが一番だろう。
「おおっここがカンムリ雪原!!うぅぅぅワクワクして身体が震え―――いやさっむぅっ!!?」
「当たり前でしょうが雪原って言ったでしょうが雪原って!!?」
駅に到着した早々に余りの寒さにユウリが震えだしたので、予備の防寒着を引っ張り出してユウリに着せる。自分のサイズなので少し大きいのでベルトを少しきつめに締めて調節していると―――
「んもう親父しつこ過ぎるし!!いい加減にしてよ!!!アタシは、マックスダイ巣穴でダイマックスアドベンチャーするの!!珍しいダイマックスポケモンといっぱい戦うんだから!!」
「ダ~ッハッハッハッハッ!!!心配しなくていいぞ、ダイマックス巣穴もいいが、もぉ~っと楽しい場所があるんだ!!イケてるパパとい~っぱい楽しもうな!!なっなっ!!!」
「チョ~有難迷惑なんですけど⁉つうか暑苦しい上に圧が強い!!雪原なのになんか暑いし!!?」
駅から出ると何やら言い合っている二人がいた、どうやら親子であるらしいが……娘の方が父と思われる男性を遠ざけている。まああの勢いで近づかれるのは確かに困るだろうが……そんな時に思わずラビは
「なんか、ボタンに似てるなぁ……」
とボソッと呟いた。それは単純に二人が何処か似ていたから、特に何も考えずに出た発言だったのだが―――
「ぬぅぅぅうううんっ!!?今、ボタちゃんの名前が聞こえたぞぉっ!?」
「えっ何突然、何邪険にされてるからって遂に幻聴で娘の声聞き始めた?キモ、こわ……」
「マジかぁ……」
「ラビさん?」
それは確定している情報でもなかった。だがボタン曰く自分の父親は声がでかくてスキンシップ過剰で自分をボタちゃんと呼んでダッハッハと笑うドが付くほどにウザい親父だと言っていた。なので少し思っていたのだが……そこにいる二人の名前はピオニーとシャクヤ、ボタンの家族である。