週刊エンジョイポケモン放送局   作:魔女っ子アルト姫

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エンジョイカンムリ:キングクエスト

「豊穣の王、バドレックス……実在してたんだ……」

 

突然現れたポケモン、その正体はカンムリ雪原に伝わる豊穣の王たるバドレックスであった。ラビの身体を借りて言葉を発し始めた。人間の言葉を理解して用いること自体は出来るが、当人はその言葉を発音出来ないが為にラビの身体を借りて話しているとの事。

 

「『ウム。余は遥か昔に王として君臨していた、草花を生やし田畑に実りを齎し人間から崇められておった。しかし長い時を経て人間たちは余の事を忘れ去ってしまったようなのだ、余への捧げ物も徐々に減り、今では皆無……余の力とは信仰から生じる物、余にとって信仰とは力の源。その力が衰え、嘗ての愛馬も余の元を去ってしまった……』」

 

寂しげで悲し気な声色にユウリは思わずバドレックスに申し訳なさが募っていった。勿論、ユウリに非がある訳ではない。そもそもユウリはバドレックスの民だった者達の子孫という訳でもないのだから気に病むことも可笑しな話なのだが……

 

「『だがしかし、そなた達が余の像を戻してくれた事で人の身体を介して思いを伝える程度の力が戻ったのだ。改めて感謝を述べさせてほしい』」

「なんか私もあの像が不自然だなぁって思ったからやっただけですし……それとラビさんの事なんですけど、えっと今どういう状況なんです?」

「『余のサイコパワーをこの男の精神へと接触させ、余と同調させて喋っておる。身体が傷つくなどという事はないので安心するがよい』」

 

それは良いのだろうかと……若干不安を覚えるユウリだが、突如としてバドレックスが驚いたように振り向いた。

 

「『な、なんだこれはっ……こやつの精神との同調が、途端に―――崩れ始めた?!これは外部からの干渉か!?ええいこの男を傷つけるつもりなのか、このバドレックス、豊穣の王の名に懸けてそのような事など―――うわぁっ!?』」

 

ユウリは何が起きているのかわからないが、バドレックスはいきなり弾かれたようにユウリの足元に倒れ込んでしまった。慌てて抱き起こすが、地面が雪だったので怪我はない。

 

「お、王様大丈夫⁉」

「ムゥッ……問題はない、余は元気だ、それよりあの者だ、突然追い出されてしまったぞ!!」

「ええっそれじゃあラビさんが……ってあれ、あの王様、なんか普通に喋ってません?」

「な、なぬ?」

 

ユウリが指摘した通り、バドレックスはラビを介して言葉を放つどころか自分の口で言葉を発していた。ユウリも確りと理解出来る言葉を非常に流暢に喋っていた。

 

「な、なんだ如何したというのだ⁉余の身体に力が……おおっ自らの力で話せるほどに力が漲っておるぞ!!これは如何した事だ?!」

「ってそうだラビさん、大丈夫です―――っ……!!」

「んっ如何したユウリ何を固まって―――っ!?」

 

突然硬直したユウリを心配しつつ同じ方向を見るとそこには静かに立っているラビがいた、だが様子が可笑しい。圧迫感と威圧感のあるオーラをその身に纏い、その瞳は金剛石と真珠のような輝きをそれぞれ宿していた。そして、そこから放たれる言葉は異様な重苦しさを帯びていた。

 

『「豊穣の王たるバドレックス、これは警告だ。この者に要らぬ干渉をする事を禁ずる、要らぬ真似をせぬように力の一部を巻き戻し与えた」』

「余の力の一部……そうかだから言葉が……待て其方は何者だ!⁉」

『「―――二度目はない。警告する、我らは……寛大ではない」』

「……承知した、余とてその男に危害を加えるつもりなどはなかったのだ。意思の疎通を行うにはそれしか方法がなかった故、その方法を取った。改めて、その男には謝罪をする」

 

空から降る雪の音すら木霊しそうな静寂が周囲を包み込んだ、ユウリはこの威圧感に覚えがある。ザシアンが放つそれと全く同じ、王者足るものの覇気、伝説に足る者だけが纏う事が出来る独特の空気、それだ。だが―――不思議と口角が持ち上がる自分が居て呆れそうになった。そして……納得したのか覇気は消滅してゆっくりとラビが瞳を閉じると再び目を開けた。

 

「―――……ああっなんか変な夢を見た……ああいやあの感覚は夢じゃないな……」

 

声を出したラビは自分の知っているラビだと分かって思わず胸を撫で下ろしてしまった。もしかしたらもう自分の知っているラビは返ってこないんじゃないかと不安になってしまった。

 

「そ、そなたラビと言ったな……先程はいきなり済まない事をした」

「えっ?あっうん、いや別に身体に異常はないし別にいいよ」

 

ラビは別に驚くこともなく、雪の上に正座して大きな頭を下げるバドレックスの謝罪を受けいれたので思わずバドレックスとユウリはポカンとしてしまった。

 

「えっいやあのラビさん!?ポケモンですよ、ポケモンが喋ってるんですよ⁉普通驚きません!!?」

「喋るポケモンを伴う悪党に襲撃されたことがある上に庭を滅茶苦茶にされた経験がある俺としてはこの身一つで解決したことだし怪我もないし、謝ってくれたから、はいおしまいでいいと思う」

「ほ、本当に良いのか?余としては嬉しくは思うが……サイコパワーで精神干渉、言い換えれば攻撃をしたも同じであるのだぞ!?」

「それで怪我してないんだからいいと思うよ俺は、出会い頭にクロスポイズンやらシザークロスを繰り出してくるドラピオンに比べたら気にもならないって」

 

見る側のユウリとしてはその言葉に対する説得力が異常過ぎてもう何と返したらいいのか分からなくなってしまった。確かに喋るニャースを連れたロケット団に襲撃されていたし、ドラピオンにはクロスポイズンをされてサトシには慌てて助けられていた……確かにそれに比べたらマシ、なのだろうか……?

 

「ンで、まあ朧気ながらに其方の言ってたことは覚えてる。豊穣の王(バドレックス)、何か頼みがあって態々来たんじゃないのか?」

「ウ、ウム。それでは改めて話をさせて頂こう」

 

曰く、バドレックスは力を取り戻したいが、自身の力の源は信仰。現在では信仰はないに等しい、だから村の人達に自分の事を忘れてしまったのかを聞いてきてほしい。そして可能であれば自分の愛馬の事について調べて欲しいとの事だった。

 

「成程……よし、ユウリ協力しよう」

「そう来なくっちゃ!!」

「ほ、本当に良いのか?其方らにとっては何の得もないだろうに……」

 

先程の事もあるからか、バドレックスは何処か腰砕けのような状態になっていて少し弱気。だがラビは笑いながら言う。

 

「気にするなよ、困った時はお互い様だ。その代わりにさ、それが片付いたらちょっと手伝ってほしい事があるんだ、それが交換条件って事でどうかな」

「……よかろう!!余ばかりが頼み事をするのも悪いと思っておった所だ、お主らの手伝いもさせて貰うぞ」

「よし、それじゃあ改めて行動開始ですね!!」

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