週刊エンジョイポケモン放送局   作:魔女っ子アルト姫

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エンジョイカンムリ:キング、ホース、ボンド

レイスポスが望む人参を育てる為の環境である死者を弔いし墓標の傍らにあるという畑。そこに種を植えて、今バドレックスが人参を成長させ、実を実らせた時だった。数多くの種を蒔いたのにも拘らずたった一つしかまともに成長しなかったそれを見て、バドレックスが己の力の不甲斐なさを悔いようとしていたその時―――

 

「バクロォオス!!!」

「おおっこの嘶きはっ……!!」

 

バドレックスが振り向いた時、その視線の先にあったのは―――……山の急斜面を爆走する漆黒の駿馬、よく見ると四肢の球節に当たる部分が無く脚と蹄が分離している、正しく幽霊馬とも言うべき不気味な出で立ちの持ち主をしているポケモンこそバドレックスのもう一匹の愛馬たるレイスポスだった。

 

「おおっ我が友よ!!」

「ロォォス……」

 

喜び勇むバドレックスに比べてレイスポスは低い唸り声を上げながら前掻きをした。ラビは直ぐにユウリを庇うように前に出た、足元の影からはずっと控えているダークライが指示を待っている。普段はボールが7個以上持っていたら絶対に出てこない奴が、指示を求めてきている。それ程までにこのレイスポスのポテンシャルの高さに気づき、自分ならば優位に立てる事を主張している。

 

「お、王様……」

「ユウリ、心配要らぬであるぞ。紹介が遅れた、我が友にして愛馬のレイスポスである」

「……王様、気遣いは感謝するけど如何やらレイスポスはそれを望んでいるようには見えねぇぜ」

「分かっているのである……友よ」

 

レイスポスの態度にバドレックスは改めて向き直った、歩み寄ろうとした瞬間にその頬を漆黒の弾が掠めた。レイスポスのシャドーボールだ、山肌に直撃したそれは容易に山肌を抉ってみせた。

 

「な、何あの威力……!?」

「当然だ、レイスポスの能力は簡潔に言えば高速特殊アタッカーでその特攻は言うなればシャンデラクラスに高いんだ」

「えっ……」

 

レイスポスを端的に表現するならば特攻がシャンデラ(C145)なゲンガーの上位互換というべき高速特殊アタッカー。だがこの世界ではそんなものは当てにならない、単純な一撃の重さなら自分のシャンデラを超えるものだとラビは直感した。つくづく種族値なんて目安にしかならない、そんなレイスポスに歩みを止めないバドレックス。

 

「友よ、余を許せぬか」

「……」

「当然だろうな……余はお主とブリザポスに誓いを立てた筈であった。其方らに相応しき存在であり続ける、その為に余は豊穣の王として皆を導くと……それがこの様である、侮蔑も軽蔑も受けるべき立場である事を理解しているつもりである。お主としても今の余を見るのは極めて腹立たしい事だろう」

 

当然だと言わんばかりに鼻を鳴らすレイスポス、だがバドレックスは言葉を続ける。

 

「余は、余はな……確かに力がない、お主に会いたくて好物の人参を沢山拵えるつもりでおったのだが……この程度が関の山である。お主にとってこの程度の事しか出来ぬモノを背に乗せるなど業腹だと思う……だが余はまたお主と駆けたいのだ、また、語り合いたいのだ……」

 

バドレックスは胸の内を語り出した、レイスポスはそれを黙って聞く。力を取り戻したいのは事実かもしれないが、それは友であり愛馬たるレイスポス達に会いたかったのが大きかった。それらの想いを語り終わるのを聞くと、レイスポスはゆっくりとバドレックスの隣を通り抜けて黒い人参を見つめた。バドレックスは矢張りダメか……と震えているとレイスポスが嘶いた。

 

「ロォォォッス」

「な、なぬ?そ、そうであるぞ。お主の為に……」

「バクロォォォス」

「わ、分かったであるぞ!!」

 

何を言ってるのかわからないが、バドレックスは急いで黒い人参の元に行って人参を力いっぱいに引っ張り始めた。だがバドレックスの力では難しいのか、中々に苦戦している。

 

「ぬおおおおっ!!!こ、この人参中々に強情であるぞ!!流石は余が実らせた人参であるな!!」

「バクロォォォス」

「お主そんなに性格悪かったであるか!?昔はそんな事―――アダダダダダダダッ!!!?噛むでないいででででっ!!?」

 

必死にバドレックスが頑張っているのは分かるのだが、妙に茶番のように見える。じゃれ合っているように見える為だろうか……ユウリは思わず笑いそうになるのを必死に抑えている、ラビは微笑ましく見ている、レイスポスのような面倒臭いポケモンの心情はよく分かっているつもりだからである。

 

「ぬおおおおおおっっ!!!」

 

そして遂に人参は引き抜かれた、バドレックスは思わず後ろ向きに倒れ込んで土に塗れるがレイスポスは宙に舞った人参を空中で見事にキャッチ、そのまま頬張り始めた。それを引っ繰り返りながら見届けたバドレックスにレイスポスは尊大且つ粗暴な態度でもっと寄越せと言わんばかりに畑を叩いた。

 

「ま、待て余にはもう……」

「バクロォォス……」

「王様、分かんねぇのかよ……って言われてんぞ」

「なぬっ!?ラビお主何故レイスポスの言葉が分かるのだ⁉もしや一時的に余がお主に同調してしまった故の結果か!?」

「いや誰でもわかるわ……レイスポスはこれからもこの人参を食わせろって言ってんの」

「私もそう思うよ」

「な、なぬ……?」

 

バドレックスは信じられないような顔でレイスポスを見た、そしてレイスポスは何かを取り出してそれを地面に放った。それを見てバドレックスは驚きを隠せなかった。

 

「こ、これはっ……絆の手綱ではないか!?しかもこれは……当時の、其方に着けていた物ではないか!?」

「バクロォォォス……ロスバ」

「ずっと、ずっと取っておいてくれたのであるか……?」

 

絆の手綱、その言葉の通りそれはバドレックスとレイスポスの絆の象徴。彼の鬣とバドレックスの力で咲かせる花の花びらから作られるそれをレイスポスは大切に持っていた。またこれを使う日を夢見ていたのかもしれない。

 

「レイスポス……ああっ分かった、また……宜しく頼むであるぞ友よ」

「バクロォォォォスッ」

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