ジガルデは小型のジガルデ・コアに、よく似たジガルデ・セルが融合して誕生するポケモン。細胞の集合率によってその姿は変化し、10%だとドーベルマンのような姿になり、集合率が50%だと監視者としての活動を行いつつも余力を残した姿という蛇のような龍の姿となる。それが100%へと到達するとどうなるか―――
「おお、おおっ……これこそがジガルデの最終形態にして最強の姿であるか……!!!」
感動のあまり拝み始めるバドレックス、だがその気持ちはよく分かる。ダイマックスも相まってそこにいるのは神話に登場するような巨人だ。背中から伸びている蛇のようにも見える二本ずつの翼には右と左に分かれて紅と蒼のパターンが刻まれている。長い尾が地面を打ち鳴らす度に重々しい重低音が周囲に響き渡る。ポケモンというよりもロボットアニメの主人公機?という印象をユウリは抱いてしまった。それほどまでに機械的な印象を与える―――が、それ以上に頼もしくて大きくて安心感を抱かせる不思議な力がそこにあった。
「ゼェェェエッ―――ドァァァァァァ!!!!!」
大地、いや空間そのものを震わせるほどの巨大な咆哮が放たれた。岩盤をも揺るがして落石が降り注いでくるのだが……
「なんつぅぅ声だ……!!」
「ああああっ耳がぁぁぁぁ!!?」
ラビとユウリは余りの声に耳を塞ぐ事に必死だった。頭上から岩盤が落ちてくる事を察することが出来たのは寸前でラビは咄嗟にユウリを庇うが、その上からエースバーンが覆い被さり、さらにその上からゴリランダーがハードプラントを盾のようにして防ごうとする。しかしそれには及ばないと言いたげに庇ったのがレジギガスの身体だった。
「ジ、ギ、ガ」
「ジゼァ」
短いやり取り、人間同士の言葉にすれば一言いや単語程度のやり取り。守るに対して任せる、その程度のそれだが互いの信頼関係を感じさせるには十分すぎた。ゆっくり、ゆっくりと一歩一歩踏みしめるようにしながら進んでいくジガルデ。
「リ、リ、ノッ!!!」
ダイマックスしているネクロズマは全身からサイコパワーを生み出し、それをリング状にして照射するダイサイコを発射。それはジガルデに直撃し、後退させるが前進をやめる気配は全くない。それどころか翼を前方へと向けるとネクロズマの足元からエネルギーが噴火のように噴出した。
「ダ、ダイアース!!いや何この衝撃波……!!?」
ユウリは全身で感じるダイマックスエネルギーの奔流に驚きではなく感動と感激を感じずにはいられなかった。ガラルのチャンピオンとして幾度もバトルでダイマックスやキョダイマックスを行ってきた身だが、それでも感じた事がない程のそれに全身の血流が加速してゾクゾクとした感覚が突き抜けていくのが分かった。そしてネクロズマはダイアースを受けて膝をつくように、地響きを起こす。それを見てジガルデは翼を其方へと向けた。
「ッ!?やばいラビさん、皆レジギガスの後ろに!!」
チャンピオンの直感が警鐘を鳴らした、あれはやばいと。だが自分の思考を読んだように自分たちの前にレジシリーズ達が並び立って我が身を盾にし始めた、レジアイスだけは此方を向いて手を振っていたが、両隣のレジロックとレジスチルからパンチを受けて涙声のようなものを出しているのが印象的だった。
「ゼェェッ……!!」
差し向けられた4つの翼、その先端は生き物のように口を開けて砲口となった。そこから放たれた攻撃は細いがネクロズマが全力で防御を行う程の威力があった。が、僅かな空白を挟んで突然極太の竜巻のようなエネルギーが溢れ出してネクロズマを襲いだした。ダイドラグーン、その筈だが……余りに規模と破壊力が段違いのそれはダイウォールを貫通しそうになる程の破壊力を見せつけて、ネクロズマを跪かせてみせた。
「ゼァ!!」
その叫びと共にダイマックスしたジガルデから何かが飛び出した。そこには通常状態となったパーフェクトフォルムジガルデの姿があった、そこにあるのは残像なのか、分からないがジガルデは全身のエネルギーをかき集めて胸部へと収束させていく。それが臨界に達した瞬間、胸が大きな口のように開かれ、そこから莫大なエネルギーの光線が発射された。それに対してネクロズマもダイサイコで応戦しようとするのだが、ジガルデのそれはダイサイコを真っ向から撃ち貫いた。
「リ、ノォォォ……!!!!!!」
大地へと刻まれたZの刻印。自らを表す文字を描き、それによって敵を討つジガルデ究極の技……コアパニッシャー。その一撃はダイマックス状態の相手の全力ですら一方的に破って葬る程の破壊力を秘めていた。ダイマックスが解除されながらも宙に打ち上げられたネクロズマはジガルデが頭部を鷲掴みにした。もう既に反抗する力も残っていない。それを確認するとジガルデはラビとユウリへと視線をやった。静かに頷くと胸から光線を放ってみせた、すると空間が罅割れると渦が出現した。ネクロズマに一時的に奪われた細胞に残っていた残滓を利用してウルトラホールを生み出してみせた、そして翼と尾の先端からエネルギーを放出すると一瞬で音速を突破してネクロズマごとウルトラホールへと飛び込んでいった。
「……もう此処までくると何でもありだな、あの監視者」
自ら空間を突き破ってネクロズマを送還しに行った姿にそんな言葉が漏れてしまったが自分はきっと悪くないと思うラビであった。そして全てが終わったと思うと急に体から力が抜けてしまった、それはユウリも同じなのか腰を下ろしてしまった。
「あ、あれ何で……?」
「伝説が入り乱れる場所にいたんだからな、知らない間に疲労してたんだろうな……俺もなんか疲れた……ゴリランダー、色々お疲れさん」
「あ、っ、えっとエースバーンもお疲れ様」
そんな言葉を掛けると互いのポケモンもつかれたぁ……と言わんばかりにぐったりし始めた。こんな場所であれだけ技を使わせたり無茶をさせれば当然か……それはバドレックスも同じなのかレイスポスも腰を落ち着けた。
「久方ぶりの全力を此処までやる事になるとは……」
「バ、バクロォォス……」
「そんな事を言うでないぞ……泣くぞ」
レイスポスから、こんな事なら乗せるんじゃなかったとでも言われたのか、マジで泣きそうなバドレックスに呆れつつも宥めるレイスポス。そんな姿に思わず笑いそうになった、なんというか威厳はないのに親しみがあって何処か信奉したくなる不思議な魅力がある。
「ああもう駄目だ、俺もう寝るぞ……良いかなレジギガス……?」
「ギガ、ス」
「かまわない、だそうであるぞ……余も駄目である……」
「ああじゃもう、寝ちゃおうかな……?」
思わず全員が瞼を閉じると眠気が爆発してしまったのかあっという間に夢の世界へと入っていった。そんな時にジガルデが戻ってくるとパーフェクトフォルムから50%の姿へと戻った。ジガルデはラビたちに感謝するように頭を下げると、レジギガスと共に彼らを慎重に運び始めた。こうして知らず知らずのうちに起きたガラル崩壊の危機は回避されたのであった……が、彼らが起きた時、全く別の危機が起きるのであった。
『チャンピオンダンデ、ガラルポケモンリーグ大改革を発令。四天王制度導入』
『ジムリーダーキバナからの現在のリーグへの意見具申が原因か』
『ガラルが纏うチャンピオン神話への待ったの声』
『チャンピオンユウリ、引退!!?』
という記事を二人が見つけた時、大声を上げたという。