「ふわぁぁぁぁ……」
「んっ……くぁぁぁぁっ……」
欠伸と共に身体を伸ばす二人、寝ぼけ眼で周囲を確認するとそこには同じく眠りについているバドレックスとレイスポスの姿があったのだが……此処はどこなんだろうか。
「ほえぇぇ……ラビしゃんおはようございましゅぅ……」
「ああ、おはよう……あ~なんか久しぶりにすげぇよく寝た感じがする……なんだろうこのいつも早起きしてたのに久しぶりにじっくりとっくり寝た感じ……?」
「あ、それ超分かります……私もチャンピオンタイムはずっと夜遅くまでだった上に朝早かったから寝不足気味だったんですよ……そういえばルリナさんに肌の事言われた気がするなぁ……?」
「寝不足は美容の敵だぞ、あとで俺のチラチーノオイル貸してやるから……おい、王様」
「ぬふふふ~んもう食べられないのであるぞ~……」
「バクロォ~ッス……」
そんな寝言を言い出す騎乗者に呆れたような目を向けるレイスポス、起こしていいからと言われてラビはフライパンとお玉を取り出して思いっきり音を立て始めた。
「なんだなんだなんであるか!!?火事か敵襲か!?110番!!119、いや177番である!!」
「いやなんでお前がそれ知ってんだ」
「な、なんだラビであったか……いや何、お主の精神に干渉した時に現世の常識を見せてもらっただけであるぞ」
「……ンな事したから怒られたんじゃねえのか?」
「……あっ」
軽く呆れていると周囲の壁が音を立てながら動いていた、ゆっくりとだが下へと下がっていくのが分かる。三人で警戒をするのだが、広がる景色はカンムリ神殿であり自分達は神殿の屋根がまだ残っていたレイスポスの寝床にいたらしい。
「なぜ我らは神殿の愛馬の寝床に居るのであるか?確か、我らはあの不届き者を倒した後、疲労故の睡魔に負けて……」
「それで寝ちゃって、それからえっと……?」
「どうやらレジギガスが気を利かせて安心して眠れるようにしてくれたらしいぞ、ほらあそこ」
ラビが指さす先には遠ざかっていく背中があった、それは自分たちが起きた事に気づいたのか振り返ると手を振っていた。あれはレジアイス、そうなると先程のはレジアイスの氷だったのだろう。その途中ですっ転んだのか猛スピードでフェードアウトしていったが、あれは大丈夫なのだろうか……一応あれでも伝説のポケモンなのだが……。
「あ、あれ大丈夫なのかな……?」
「まあ大丈夫じゃないかな、先に他のレジシリーズが居てボウリング形式で薙ぎ倒してなければ」
「倒していたらどうなるであるか?」
「多分、気合パンチでタコ殴りだな」
そんな軽口を叩いているとユウリのお腹が鳴った、どうやら自分たちは相当長い時間眠っていたらしい。一先ず腹拵えをするためにカレーを準備する事にした、勿論王様とレイスポスの許可を取った上である。
「見るであるぞラビにユウリ!!こんなにも人参が大量に出来たであるぞ!!」
「いやいやいや出来すぎだろ!!?」
「凄~い王様、豊穣の神様って本当だったんだね!!あれ、って事は本当に力戻ってるんだね!!」
「ふふん!!余の本当の力を見たであるか!!」
野菜を入れると言ったらバドレックスが自分の戻った力で出してやろう!!と言ったので任せてみると、大量の野菜を持ってきた、特に人参が大量だった。これはカレーを分けて、一方は特盛人参カレーにするしかないな……と思っているとスマホロトムが鳴り響いた。
「あっピオニーさんだ、はいもしもし」
『おおっやっと繋がったか!!?隊長に副隊長、ずっと帰ってこねぇ上に連絡が取れねぇから心配してたんだぞ!!?』
スマホロトムの画面には大いに焦りまくっているピオニーがいた、しかも画面の奥には山盛りになっているバッグが見えている。救助の為に出発準備をしていたのがよく分かった、すると背後から何やら声が聞こえて来た。
『ちょっ親父、ラビさんとユウリに連絡付いたってマジなん⁉』
『応マジだぞ!!』
『ちょ、アタシにも見せてって……あっホントだ!!良かった、ほんとに良かったあぁぁぁ……』
画面の向こうで焦った様子のシャクヤが深い深い安堵の息を吐いているのが見えて酷く申し訳なくなってきてしまった。というか、自分たちはそれほどに長い間眠っていたのだろうか……それとユウリは気になったことがあった。
「ごめんねシャクちゃん、色々あったの。後さ、その金ぴかの探検服如何したの?」
『ゲッソコ指摘するか!!?い、いやその……ダイマックスアドベンチャー堪能して合流しようとしたら親父が二人が帰ってこないって滅茶苦茶に騒いでたからさ、ウチも一緒に探そうと思って防寒着探したら、親父がアタシ用だってこんなの用意してたの、着るの嫌だったけどさ……こんなの目立つしもしかしたらこれで二人がアタシに気づくかと思って……ああもう、見つかったなら着なくていいね!!もう脱ぐわ!!』
『ああ馬鹿なんでここで脱ごうとするんだ部屋に行って―――ふぐぉぉっ!!?』
『してねぇっつの!!?何考えてたんだ馬鹿親父!!ああもうったく、んじゃ元気ならちゃんと戻って来るんだよ!?それと、ユウリネットニュースチェック!!凄い事になってっから!!』
とだけ言い残して通話は切れる。随分と心配させてしまったようでこれは反省しなければと思う一方でそんな寝ていたのかな、と首を傾げているとユウリが日時を確認すると―――
「嘘三日も経ってる!!?」
「そ、そんなに寝ていたであるか!!?」
まさか過ぎる事が分かった。どうやら自分たちは三日間も眠っていたらしいのだ、まあ無理もないとラビは納得していた。神を描こうとした時だって凄まじい疲労感が全身を貫いていた、目の前で複数の伝説が居て、本気の戦いをする伝説のポケモン、ダイマックスのバトルという人間の身としては辛いなんて言葉では言い表せない程の疲労があった。
「にしてもネットニュース……もしかして、キバナが動いたのか?ちょっと確認……ぁあ"っ!!?」
「―――ってマジみたいですなんか、私お母さんとかマリィとかホップとかから凄い人から着信が……ってうわぁぁぁぁっ!!!?」
徐々に濁った声が出たラビ、そこには驚きの内容が連発されていた。大量の着信があった事を報告しようとしたユウリだが、ラビのスマホロトムに表示されたネットニュースに驚愕した。何故ならば……それらは全て自分に関する事だったからである。
『チャンピオンダンデ、ガラルポケモンリーグ大改革を発令。四天王制度導入』
『ジムリーダーキバナからの現在のリーグへの意見具申が原因か』
『ガラルが纏うチャンピオン神話への待ったの声』
『チャンピオンユウリ、引退!!?』
様々なものがあったが、取り敢えず一番大きな記事になっているポケモンリーグ委員長ダンデとトップジムリーダーキバナの合同記者会見の記事を開くことにした。
『私、ポケモンリーグ委員長ダンデはポケモンリーグの制度の改革を宣言すると同時にガラル地方におけるチャンピオンに対する認識などについてもすべて、メスを入れる事を決意しました。今回私のチャンピオン復帰もその一環でした。そしてよく分かりました、どれほど私が求められていたのか、そして―――チャンピオンユウリを求めている者の少なさを』
『オレ様はあれこれ言葉を尽くすのは得意じゃねえから率直に言わせてもらうぜ、テメェらさ……あいつを見ないでいつまでこいつを見てんだよ、それをユウリに求めんじゃねぇよボケがよ』
「えっえっ……えぇぇぇぇっ……ラ、ラビさん私これ、どうなるんです……?」
「さあ……取り敢えず、カレー作ります?」