週刊エンジョイポケモン放送局   作:魔女っ子アルト姫

271 / 691
エンジョイカンムリ:エンカウントフレンド

「うっわ、思いの外はっきり言いやがりましたよこのジムリーダー。隣の委員長見習えよ」

「ひええええっ……」

 

記者会見の映像を見ながら思わずラビはそんな言葉を言い放った、隣のダンデが極力オブラートに、丁寧に包装した言葉を送り出しているのにキバナは抜き身のまま、比喩表現もせずに真っ直ぐ行ってぶっ飛ばすを行っている。打合せとかはしたのかと疑問に思うレベルには酷い、記者団にもカメラが向くことがあるのだがものの見事に引き攣った顔になっている。

 

「いや、よく聞くとダンデとやらの方もかなり酷いであるぞ?丁寧且つ穏便、品のある言葉づかいではあるがその実、この者の怒りと自らへの不甲斐無さ、気付かなかったことへの懺悔……様々な物が込められておる。これらを感じ取れぬ者らは論外且つもう取材には応じないと言っているようなものであるぞ……相当に来ておるな」

「えっ王様分かるの?」

「これでも余は治世を行っていた王であるぞ」

 

やや心外そうに、だが何処か自慢げに語るバドレックス。実際ダンデの方も表向きは極めて丁寧ではあるが一枚皮を剝いてみれば感情が入り乱れているような内容。キバナが内角を抉るような剛速球を投げているとすれば、ダンデのそれはど真ん中に投げていると思わせての変化球、しかも、外角と内角へ抉るような角度で曲がる変化球。これを言われるのは想像以上に辛い。

 

「キバナさんの方が聞いてる分には凄い、こうグサッと来る気がするけど」

「それは分かるのであるが、こやつの言い分は言うなれば見えている棘。ダンデのそれは見え難く抜けにくい棘。その差は大きなものであるぞ」

「え~っと……あのラビさん、私どうなるんですか?」

 

会見を要約すると……ガラルポケモンリーグに四天王制度の設立、四天王にはダンデが直々に候補者をリストアップして後日発表。ガラル地方に蔓延している風潮の批判とチャンピオンの業務改善などが行われる事になった。キバナの発言の殆どがお前らがユウリにダンデの代わりを押し付けたせいだぞ、しかもお前らダンデがチャンピオン代理になったら大喜びだったじゃねぇか、つまりお前らチャンピオンユウリ望んでないんだろふざけんな、という感じである。

 

「あれ、キバナさん文句しか言ってない?」

「多くの民に向けて此処まで文句を言う奴は滅多におらぬぞ?良い友を持ったであるなユウリ」

「キバナさんは友達、あれ友達でいいのかな……あれ、私にとってのキバナさん……あれ、どういう関係性だろ……」

「まあそこは置いとけ、大して重要な事でもないから……ンで最重要の部分が―――」

 

「ユウリッ!!!!」

 

突然の大声に思わず全員が驚き、レイスポスは即座に戦闘態勢を取ったのだがバドレックスはそれを宥めた。神殿の入口辺りで此方を見て叫んだのは少年だった、ダンデに似ている少年だった。彼を見て真っ先に驚いたのはユウリだった。

 

「ホ、ホップっ!!?」

 

そう、その人物はユウリの幼馴染で共にジムチャレンジの道を踏み出した友人のホップだった。その表情には一片の余裕もなく、荒い吐息からも彼の疲労が窺えた。だがそれ以上に目を引くのが……彼は全く防寒着の類を身に着けていないという点である。カンムリ雪原は防寒着がないと本当に辛い、しかもその状態でこの神殿がある山を登ってきたというのか……バドレックスが最悪死ぬであるぞ……と小声且つマジトーンで言う辺り本気で心配している。

 

「ユウリ、ユウリユウリィィィッ……!!」

 

やっと見つけたと言わんばかりに駆け出すが途中で足が縺れて転んでしまうがそれでも此方に走るのやめないホップにユウリは思わずホップの元へ駆け寄ってしまった。

 

「ホ、ホップ何やってるの!!?こんな寒い所で防寒着もなしで!!?ああっこんなに冷えちゃってるじゃん!!?ま、待って今―――」

「ごめん俺、お前の事、何一つわかってなかったんだ……!!」

 

唇は青ざめ、手はまるで氷のように冷たい、吐息は真っ白、低体温症一歩手前の状態、直ぐに温めないと……そんなユウリの手をホップが力強く掴んだ。信じられない程に力強いものだった。

 

「俺、俺……お前が兄貴に勝ってチャンピオンになって、本当に凄くて、尊敬してたんだ……だけどそれだけで何も、何も……」

「やめてホップ、私は別に……」

「俺、感動してたんだ……苦しんでる間、兄貴みたいなユウリの姿に……」

 

まるで神への懺悔のようだと、バドレックスは呟いた。それほどまでに悲痛な叫びだった、兄に憧れ続けた弟は兄を超えた友の姿に一方的な感動と尊敬を一方的に向け続けていた。友がどんな思いを抱き続けているのも知らずに、自分の事にしか真剣な目を向けていなかった。

 

「そんなの、ホップが悪い訳じゃ……私が、誰にも相談せずにいただけの事で……」

「出来る訳ないだろ!?兄貴みたいだって言って、ユウリはユウリは……」

 

ホップの言葉が忘れられなかったのは否定出来なかった、会ったばかりの大人が言うよりもホップの兄みたいでカッコいいという言葉の方がずっと大切だった。それを支えにして、というのは自分勝手だ。それに相応しくなりたいと思った。

 

「ユウリ、勝手かもしれないけどこれからは俺が、俺がお前を守る……だから―――もう一人で抱え込まないでくれ……だから……」

「バカ、バカバカバカ……そんな事の為だけに、こんな冷たくなったの……ホップの馬鹿、そんな事言われたら私、もうどうしたらいいのかわからないよぉぉぉ……」

 

そんな言葉とは裏腹にユウリはホップを強く強く抱きしめていた、彼の身体を温めるというよりも……もう彼を放したくないと言いたげなそれだった。ホップも静かに彼女の背に腕を回して、抱きしめていた。

 

「良いものであるな、友情とは」

「全くだ……まあそれ以上の何か、かもしれないけどな」

「それならばよいではないか、それが人というものよ」

「ポケモンが言うか、まあ同感だけどさ」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。