「私、チャンピオンに戻ります」
ダブルバトル後、再び入った食事。流石は成長期、その気になれば無限に食べられるという事か、と自分にもあんな時があったなぁ……と三十路になった事で胃袋とかが弱くなったり小さくなる事への懸念をラビが抱いている中でユウリは宣言した。
「いいのか、改革自体はされているとはいえまだまだそれは不十分な筈だ。復帰はもう少し様子を見てからでも遅くないと思うが」
「いえ、ダンデさんとキバナさんが此処までやってくれたのは私の為でもありますしそこまでさせたのは私がしっかりと拒絶とか相談をしなかったせいでもあります」
「そうと言えなくもないが……そこまで追い込んだ側の方が余程問題がある、会いに行った時の君の無気力な無思考状態へと追い込んだのはどこの誰だ」
ユウリの復帰宣言それ自体は肯定しつつもタイミングを見るべきだとラビは助言をする。ユウリの言葉にも一理はあるがそれ以上に環境が悪いのがいけない。
「俺もラビさんの意見には賛成だぞ、もう少し休んで時間をおいて復帰してもいいと思う」
ホップもそれには賛成だった。当然だろう、ホップはユウリを追い込んでしまった側の一人である為にユウリへの罪悪感などを強く抱いている。自分が言える言葉ではないかもしれないが、それの解決の為に兄が動いてくれているのだからそれに甘えるべきだと思う。
「ありがとホップ、私もそれは考えたけど……私自身の言葉ではっきりと意思表示をするべきだと思う。その為には一時的にも復帰して自分のしたい事を表明して、足場固めとかもしっかりとするべきだと思うの」
「思った以上に確りとした意見だな……具体的に何かしたい事とかあるのか?」
アイリスには負けるが次点位にはチャンピオンとしては若いユウリ、別に計画性がないと言いたい訳ではない、自分がそうだったように若い時は勢いやその場のテンションで行動を決めてしまいがちな物、しかもユウリは束縛から解放されたばかりだからその傾向が尚の事顕著だと思った。
「ダイマックスアドベンチャーの調査です、今回の事で分かったんですけど……大真面目にあそこの調査ってしないとマズいですよね」
「マズいな、非常にマズい」
「えっ何かあったのかってもしかして異常気象とかのあれってそれなのか原因!?」
一先ずホップにも話をしておく、マッシブーンやジガルデ、レジギガスの事を話しておくと顔を様々な物へと変化させつつも次第に頭を抱えだした。ポケモン研究者として活動しているのだから当然と言えば当然なのかもしれない。実際ラビだって頭を抱えた。
「そんなのが……また来るかもしれないって事か」
「というかもう来てるかもしれない、それを抑えているのがジガルデだったの」
人間が手を出すにはあまりにも大きな事かもしれないが何もしないのも筋違いな感じもする。
「だから調査だけはしておくべきだと思うんです、それを私がやろうかなって」
「……まあ何かあった時に対処できる人間がするのが一番ではあると思う、それに加えて調査すべき事に理解などがある人間、即ち―――」
「ユウリ、って事か」
「YES」
と、悪戯っぽく答えながらもダンデさんっぽいでしょ?と、自虐的に笑うユウリ。
「でもユウリ、良いのか……?」
「正直言うとね、私自身がそれをやりたくてやりたくてしょうがないの」
ホップはその笑顔を見た事があった。郷愁と言っても差し支えない程に久しぶりに見た気がした、それは憧れと尊敬の瞳。
「目の前でのレジギガスとジガルデ、そしてネクロズマの戦い。私たち人間が如何足掻いても到底足を踏み入れることが出来ない世界の領域がそこにあって、もう神々の戦い!!って感じの物が広がっててこんな世界があったんだって思う位に圧倒されたの!!」
頬を紅潮させながら熱弁するユウリ、人間がいかにちっぽけな存在で何もできずに右往左往するしかない程に弱いのかをマジマジと理解させ続けられたような気分だった。それを見て絶望、恐怖、錯乱したとしても決して可笑しくはない、人間の世界から逸脱しすぎたものを見たユウリが抱いたのは―――羨望と尊敬。
「そんな世界に迷い事無く飛び込んで、挙句の果てにその神々に指示を飛ばして操るラビさんの姿……もう瞼に焼き付いて離れない……自分のでもないポケモンにあそこまで信頼を預けられて、ポケモンもこの人なら指示を任せられるって思わせる、私もそんな領域に足を踏み入れたくてしょうがないの!!!」
ラビとしては本当に忘れてくださいと土下座をしたくなるような気分なのだが、あまりにもユウリの目が輝くのでやめておくことにした、だがホップ、お前もそんな目でこっちを見るなと言いたい。
「だから私はチャンピオンに戻る、諦めている私と決別する為に。そしても強くてにっこり笑う私になるの」
「笑う、のか?」
「そっ思いっきり笑い飛ばしてやるの!!もうどんな辛い事があっても大丈夫、そりゃ辛い時は挫けて愚痴を零したり投げだしたくなるだろうけどさ……そういう時はさ」
ホップの身体に身を委ねるように凭れ掛るユウリ、突然すぎるそれに戸惑って慌てるホップ、だが次の言葉を聞いて直ぐにキッチリとした顔へと変わった。
「ホップが支えてくれるんでしょ?」
「お、応!!任せとけ!!」
「三十路のおっさんの前で惚気てくれるねぇ……甘酸っぱいから味変してほしいなぁ」
「それじゃあラビさんにお願いです!!」
「おっなんだい」
「レジアイ?」
「おわぁっなんだこいつ!!?」
「あっレジアイス!!」
「なんだお前如何した……ってなんかぼこぼこに殴られたような跡が……?」
「さあ行きますよラビさん、私のチャンピオン復帰第一戦のエキシビションレジェンドマッチ!!そしてついでに私のリベンジです!!」
「やれやれ、またこんなところでバトルとかオーバとかから色々言われるなぁ……まあいい、久しぶりに昔を思い出すとしようかな……行くぜチャンピオン、負けても恨むなよ!!」
「恨みませんよ、誇ります!!行っきますよぉ!!レジアイス!!」
「ははぁっいきなりそいつか!!なら俺は―――故郷で暴れろ、アーマーガアッ!!!」