「あっそうだラビ、お前はブルーベリー学園の卒業生だよな?」
「だったらなんだよ、あそこにリコ達を入れたいとかほざくなよ。オレンジアカデミーっていうもっといい所に通ってんだそれで我慢しろ」
「おいおいおい随分恨み骨髄な意見だな」
皆でおやつタイムをしている時にフリードがラビへと問いかけた。何やらブルーベリー学園に関するものらしいが……母校ではあるがそれ以上の関心はない、弟たちがそこに所属しているから最低限の関心と興味があるだけだ。
「いやさ、テラパゴスの研究をしているブライア先生っていう人に会いたいんだが……学園に問い合わせたら今不在らしくてな、ンで俺たちはこれからキタカミの里に行こうと思ってるんだが……どういう人なのか位は知っておきたくてな」
「……」
「ど、どうしたんですがすっごい嫌な顔してますよ……?」
ブライアという名前が出た瞬間に顔を歪めるラビ、近くでミルクレープを食べているダイケンキは無理もない……と言いたげな顔をしている。
「……テラパゴスの事を研究している事は事実だし、今は俺がデータを送ってるから関わり合いがない訳でもない」
「なんだラビのテラパゴスからデータ取って研究してるのか、共同研究者って事か」
「冗談じゃない、出来る事ならばもう顔は合わせたくないな無限に愚痴が出ちまう」
「何があったのよ……ラビがそこまで他人の悪口いうなんて珍しいじゃない」
モリーが呆れたような顔をしつつも事情を聴いてみる、そこから溢れ出したのはラビが飛び級の為にブライアの助手として各地の伝説、幻のポケモンに関するフィールドワークで起きた事。触ってはいけないと言われた社の一部を誤って破損させ、入ってはいけない所に入って、土地神として崇められるポケモンを怒らせたり……そんな事を吐露する。
「お、応……」
「うわぁ……」
「フリードは人の事絶対言えないでしょ」
「だな」
「は、反省してるって……」
「一応言っておくとあの人は普通に優秀だ、優秀であるが故の研究や成果ばかりを優先してその場を疎かにする癖がある。何度も注意しても治らなかったがな……自分の研究云々が絡まなければ、割といい人なのは否定しない、絡んだ場合が余りに酷過ぎて俺は取り返しがつかないレベルで失望しているだけだから」
リコ達も何とかフォローして上げたいがまだあった事もない人の事なので難しい上に、事実としてシンボラーやランドロスを怒らせているという事実の前には難しいと言わざるを得ない。
「会いに行くなら俺から軽く連絡をしてもいいけど……あんまりお勧めはしないぞ」
「どんだけ嫌ってんだよ」
「自分で怒らせたランドロスの相手をする羽目になった挙句、終わったら謝るでも感謝でもなくバトルの感想を述べられたらこうもなるわ」
「確かに、それはいやかも……」
「だろ、まあいいじゃ……んじゃメールを打つか」
早速メールを打ち始めるラビ、すると速攻で返事が返ってくる。研究に関する事だと相変わらず素早い……いや助かる事ではあるのだが……と開いて読んでみる。
「如何やら……キタカミの里にいるらしいな、あっちのてらす池を改めて研究する為らしい」
「キタカミの里って確か、前にラビさんが配信で出してた所ですよね」
「ああ、リンゴの美味しい所!!」
「実際あそこのリンゴを取り寄せてアップルパイ作ったら過去最高の出来だったんだよなぁ」
「行くのか?」
「んじゃ次の目的地はキタカミの里、だな!!」
と話が盛り上がっている中でラビはそっとフリードに問いかけた。すると少し考えてからラビは立ち上がっていった。
「んじゃ俺も同行させて貰えるか?」
「えっラビさんも行くの?」
「ああ、実はサザレから可能なら来れないかって言われててな」
「そういえばサザレさん少し前の撮影の仕事が入ったって出掛けて行きましたけど……キタカミの里だったんだ」
「最近里には結構人が出入りするようになって観光案内の為の写真撮影を依頼されてるんだ」
リコはこっそりとドットに明らかにラビさんの影響だよね、と尋ねると十中八九そうだねと返答が返された。実際ラビが配信をした影響で観光客が増加しているとの事、その為の依頼がサザレにも舞い込んできたのである。
「そこで面白い話が舞い込んできててな」
「面白い話?」
「珍しいポケモンの写真が撮れたってな、それで俺の力を貸してほしいって事で近々向かうつもりだったんだ」
「珍しいポケモンって何なんだろう!?」
「ポケモン博士としても興味深いな、ラビ俺達もそれ手伝っていいよな!?」
「連れて行ってくれるならお好きにどうぞ」
そういう事ならば早急にメンバーを選出―――その時だった、ダイケンキが自分の膝に手を置いてきた。
「ダイケンキ……お前まさか、いやダメだろ。誰が纏めるんだよ」
「(スゥゥゥゥゥッ……)ケエエエエエエエエエエエエエエンッ!!!!!」
勢い良く息を吸い込んでから張り上げられた咆哮は天を貫くような鋭さを秘めていた、突然の叫びにフリード達も驚いてしまったが、その咆哮を受けて水辺から一匹のポケモンが飛び出して猛スピードで駆けつけて来ると跳躍しラビとダイケンキの前に着地した。
「クウオンッ!!」
「ケンッ」
「こいつに、任せるって言うのか?」
頷くダイケンキの視線の先にいたのは自称ダイケンキの舎弟のウネルミナモだった。叩き潰されてから一方的に憧れて真似事をしてやり過ぎて怒られたり、見回りに同行して怒られたり、無意味に周囲を威嚇して怒られたりを繰り返してきた問題児である筈だが……
「お前がそこまで言うなら分かった、ミナモ」
「クォン」
名前を呼ばれて顔を上げて真っ直ぐにラビの目を見つめてくる、確かに野性味溢れる古来種にしては理性が大きく出ている。これはテストしてもいいかもしれない。
「ダイケンキの推薦に応えてみろ、少しの間ダイケンキの代役を認める」
「クルォォォンッ……!!!」
嬉しさを滲ませるウネルミナモは今すぐにも駆け出したいそれをぐっと我慢して頷いた、如何やらしこたまダイケンキにどやされたり指導されたらしい。だがこれは同時に……また、ダイケンキと短期間ではあるが旅が出来る事にも繋がる事実。
「久しぶりに、行くか相棒」
「ケェン……!!」
「この写真、見たらラビビックリするだろうなぁ……たぶん、これなんだよね目指してるの……」
そう呟くサザレの手には一枚の写真があった。そこには巨大な斧と激突する一閃があり、それを放っているポケモンの影が映っている。それはダイケンキのようにも見える。