週刊エンジョイポケモン放送局   作:魔女っ子アルト姫

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エンジョイ:ラーンオブブレイド

荒々しくも穏やか、穏やかでありながらも苛烈。一撃が無数の一撃になる、重ねられた一撃がダイケンキへと襲い掛かる。それを回避せずにすべてをその身で受ける、その余波がラビにも飛沫となり降りかかる。頬を切り、腕に傷を与え、髪の一部が宙を舞う。

 

「ケェェェッ……」

 

秘剣・千重波。ヒスイダイケンキのみが使う事が出来る正しく秘剣、それを身体で受けた。刃で防ぐことは容易ではあったが……それでは意味がないとトレーナーと共に感じたダイケンキは静かにアシガタナを抜刀した。

 

「ダイケンキ、分かったな」

「ケンッ」

「踏み込み、重心、速度を今までより早く、深く……そしてウーラオスのあれよりも鋭く素早く」

「ケンッ……!!」

 

その時、ヒスイダイケンキは思わず目を疑った。ダイケンキの鎧は輝く金色にも見える程に鮮やかな黄色の筈、その一部に夜が訪れたかのように黒い線が走っていく。あれは紛れもなく、同族の証―――その一瞬、ダイケンキの姿が掻き消えた。

 

「ッ!?」

「ケエエエエンッダアァァァァッキ!!!」

 

音を置き去りにして、残光が千重波の如く、ヒスイダイケンキへと刻まれていく。たった、たった一度見ただけで自分の秘剣の上を行かれたのか⁉という驚愕の色がそこにあった。このダイケンキは自分の遥か高みにいるのか……と目を丸くしていると今度はアシガタナを二刀流で構える。

 

「行けるんだな、相棒」

「ケッ」

「ああ分かった、んじゃ――――秘剣・千重波……二連!!」

 

その言葉を理解した時、ヒスイダイケンキも同じくアシガタナを二刀で構えるがそれは防御の為の構え。その時に見たのは……瞬時に距離を詰めながらも嬉々とした表情でアシガタナを振り被ろうとするダイケンキの姿だった。追い求めたヒスイの剣が己の物となった、その事がどうしようもなく嬉しくて堪らなかった……これで漸く、俺は、あいつの隣に立っても不足はない!!

 

「ケェェェェッ……!!!」

 

二重に重ねられた秘剣、幾重にも積み重なった波を千重波という。それが何度も重ねられたらそれは何と呼ぶのが相応しいのだろうか、吹き飛ばされたヒスイダイケンキはギリギリで受け身を取るが、それが過ちだった事に気づく。身体に走る鋭くも抉るような痛みは全身に突き刺さっていた破片と周囲にばらまかれていた鋭利なまきびし、秘剣・千重波は斬撃と共に相手に無数の破片を食い込ませる、それをフィールドにも施しながらも自分にもそれを差し向けた。

 

「ダイケンキ、それまでだ。それ以上それを使うな」

「ケ、ケンッ!?」

 

突然の言葉にダイケンキはラビに何でだ⁉と言いたげな瞳を作り抗議した、折角の機会に何を……と続けようとしたがラビはそっと腕を撫でてみせた。ラビの腕を見ていたが、不意に自分の腕を見てみると酷く震えていた。

 

「使えるようになっただけだな、まだまだ練習は必要で実践投入はまだ先だ」

「ケ、ケンッ……ッッ!!!?」

「おい大丈夫か!?」

 

ダイケンキの身体に抗えない程の脱力感と疲労感が一気に圧し掛かって来た、同時に黒い線が消えて、元の鎧の姿がそこにあった。ヒスイダイケンキが感じていた同族の感覚が消えていた、ヒスイダイケンキだけがそれを認識し理解していた。あの時、ラビのダイケンキはヒスイの姿になっていたのだ。

 

「ダ、ダイケンキは大丈夫なの!?」

「……単純な疲労だな、触診した限りじゃ骨にも異常はない。だがこれ以上バトルは無理だな」

「そ、それじゃあ……」

 

そっちを見つめてくるサザレにヒスイダイケンキは肩を竦めるように息を吐いてその場に座った。これ以上の戦闘の意思はないと伝えるかのようなそれに先程までの戦闘の覇気が全くない。ラビはそれを受け入れつつもその場で正座をして頭を下げた。

 

「此度は勝負を受けて下さり感謝申し上げます。私の相棒、ダイケンキは新たな一歩を踏み出す事が出来ました。心より、感謝と尊敬、そして敬意を……」

 

突然の事にヒスイダイケンキは目を丸くし大口を開けてしまった、人間がポケモンである自分に向けて頭を下げる、況してや感謝の言葉を述べるなんてありえない……人間は我々を恐れ、遠ざけ、時には使役するがそれでも警戒を解かない、それなのに……この男は……

 

「……やっぱり、お前さんシンオウ地方、いやヒスイの地から来たんだな」

「―――ケンキ」

「少し前からな、シンオウ様って言葉にも反応してたし……ってなると……なぁセキとカイって人、知ってる?」

「ッ!?ケ、ケンダイァァ!?」

「あ~……」

 

何故その名を知っている!?と急に取り乱す姿にラビは色んな意味で理解が追い付いてしまった、一方でサザレは平然とヒスイダイケンキと会話をしているラビを呆然と見ていた。ダイケンキはダイケンキで俺以外にもわかるのか……と思いつつも少しだけ拗ねていた。

 

「サザレ、こいつマジでヒスイの時代からこっち来てんぞ」

「えっマジ?」

「マジ。今、セキとカイって言ったろ?聞き覚え、あるだろ」

「―――ああっ!?ヒスイの時代に生きたコンゴウ団のご先祖様!?」

 

何の偶然かは知らないが、過去の存在が現代に来ている。一体何が起きてこんな事が起きてしまっているのか……ヒスイダイケンキはヒスイの時代の調査団たるギンガ団のメンバーのポケモン……というか多分主人公の相棒ポジなのではと思っている。仮にそうだとすれば大急ぎでなんとか戻してやらなければならない、彼方では文字通りの生死に関わる。

 

「お前が帰れるように俺達も協力する、取り敢えずこの土地に来た時の場所へ案内してくれないか?」

「―――……ケン」

 

少しだけ考えるような仕草をした後、ゆっくりと歩き出した。首でついてこいと示しながら。

 

「なんか凄い事になっちゃったね……ご先祖様と知り合いのポケモンに会うなんて……」

「人生何が起きるか分からねぇもんだな……神にはもう会っちまってるし、余程の事じゃ驚けなくなったなぁ……」

「改めてラビって割とトラブル引くよね」

「やめろ、割と自覚してるからやめろ、後ダイケンキ角でつつくのやめて」

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