「ああはい、いえ私はそういう事には興味御座いませんので。ええ、いえ何度お話を持ってこられたとしても興味はありません。趣味を仕事にする気はないですのでそれでは」
今回の絵はミナモシティの大海原と街並み、そして夕焼け、その下を跳ねるホエルコとホエルオーという題材。陸の終わりとも言われるミナモシティにピッタリ、そんな仕事をしている最中に電話は来る。と言っても筆を止める事はなく、Bluetoothイヤホンで応対をする。
「はいもしもし、はいラビは確かに私ですが……はぁっあの正直に言いますけど私そっちを専業にする気は皆無ですし普通に今本業をしている最中なので」
最近妙に多いこういう電話、シンプルに言えば企業案件ではあるのだが……本業であるイラストレーターではなく配信者としての企業案件ばかり。これも人気が出てしまったが故の弊害だろうと受け止めながらもラビは基本的に全てを断っている。幾らいい条件を出されようと首を縦に振る事は一切ない。
「いえ、どれだけの報酬を提示されようともお断りします。そもそも私などではなくナンジャモさんにご依頼されればいいでしょう。それとも何ですか、彼女に断られたから次点で私を選んでいるとでもいうのですか?だとすれば心外ですね、あっ今ギクって言いましたね?はい分かりました受けませんので回れ右してくださいそれでは失礼します―――……しっつけぇ」
「ブル」
「ああごめんメープル、ったく……」
仕事の相棒であるドーブルのメープルからも心配そうな声を掛けられる。最近こういった電話ばかりが来るのでいい加減に嫌になってくる。趣味が仕事になる事はあるだろうが、それは好きすぎて仕事にしても差し支えない人が出来る事なのだ。生憎自分はそんな事は出来ないので無理。
「まあ配信をやめる気は全くないけど……いざとなったらナンジャモさんにお願いして後ろ盾とかになって貰うか。あの人の影響エグいし」
「ブル、ブ~……?」
「んっホエルオーは楕円形のでっかいクジラだぞ、ハルクジラとは違うからな。あっちが似てるのはホエルコだな」
「ブル⁉ルルルルル!!!」
ホエルオーのスタイルや跳ね方に悩んでいるドーブル、間違ってホエルオーをホエルコみたいに書いてしまったのを修正して進化途中のホエルコに変えていく。これはこれで味がある描写になっているから面白い。矢張り絵を描くのは面白くて楽しい。
「う~ん……旅であった伝説とか幻も書いてみたいけど……下手に描いたら博士連中が煩いんだよなぁ……一回大変な事になったもんなメープル」
「ブルゥ~」
「ね、もう勘弁だよね」
一度、アララギ博士のもとを訪れていた時の事だった。その時にうっかり自分のスケッチブックが博士に見つかってしまった。そこには自分が前世でプレイヤーであった時に使っていたポケモンなどが書いてあったのだが……地方別に区分していた物のイッシュ編を見られ、ボルトロス、トルネロス、ランドロスと言ったポケモンの絵をガッツリとみられてしまったのである。
『―――貴方、これ、如何して……』
『いや、そのいやぁ……』
コバルオンやテラキオン、ビリジオンと言った聖剣の三剣士まで描いていたのでも大騒ぎである。何処で出会ったのかどんな印象を受けたのかを迫るように尋ねられ、言い淀んでいるときっと話さない約束があったのだと解釈され、是非絵のコピーをさせて欲しいと頭まで下げられてしまった。幸いだったのがレシラムやゼクロムのページに行く前にスケッチブックを奪還出来た事だろう。
「家の中なら大丈夫かな……いや油断はしちゃいけないか、まあその内なんとか誤魔化しを考えとくよ。お前だって描きたいもんなってまた来た……」
「皆さんこんにちは、今日もポケモン育ててますか?まだまだな貴方もこれからの貴方も、此処をきっかけに一歩踏み出して行きましょう。本日ご紹介するポケモンさんは此方」
「チィ~ル」
「チルタリスさんです」
| ・おおっ可愛い!! ・正統派な可愛さ!! ・モフモフやぁ~!! ・や~ん可愛いい~!! |
|---|
「はい、チルタリスさんは此処までモフモフな見た目をしてますがタイプは飛行とドラゴンの複合タイプです。最大の特徴と言えばこのモッフモフ羽毛です、実際に凄いモフモフで凄い気持ちいいです。この羽毛は身体の前面を完全に覆い隠してしまう程で下から見た時は雲と見紛ってしまう程のものでこれは擬態にもなっています―――あらチルタリスさん実際有難う御座います」
「チッル♪」
| ・う~んこういうのがいるから雲に乗れるって思う子供多いんだろうな。 ・そりゃ思うわな。 ・俺、雲だと思ったら空からチルタリスふってきたことあるわ ・何それ羨ましい。 ・いや、潰されて死に掛けた。 |
|---|
「この羽毛で上昇気流を上手く捕まえてより高く空へと舞い上がる為にも使われます。因みに大量に空気を含んでいますので濡れてしまうと一気に潰れてしまいます。お風呂に入る時はすっごいスリムになりますよ。そんなチルタリスさんはハミングポケモンとも呼ばれており美しい歌声も魅力的。実際にメロディを聴くとハミングをしてしまう音楽好きさんで、その歌声は夢心地にもなる程です」
| ・何それ気になる。 ・モフモフ系の宿命だな ・良くある話ではあるもんな。 ・モフモフの歌姫…… ・アイドルで連れてる人もいるもんな ・というか実際にアイドルで居らんかったっけ? |
|---|
「こんなチルタリスさんですが、野生の個体は白い霧で相手の視界を奪って逃走するなど警戒心が強いです、加えて怒らせると鋭い声で威嚇したり苛烈な攻撃をしてくるなどドラゴンらしい一面もあるのですが基本的な性格は心優しく人懐っこいですし、心が通い合った相手を翼で包み込もうとする習性が―――って言うまでもありませんでしたね、私の現状ですはい」
「チ~ル~♪チルル♪」
| ・すげえ笑ってるwww ・どいつもこいつも懐いてるな ・どういう接し方したら此処まで懐くんだ? ・分からん……。 |
|---|
「チルタリスさんの特性は自然回復、夢特性がノー天気です。自然回復は手持ちに戻ると状態異常を回復し、ノー天気は天候による影響を受けずに済むという物です」
| ・自然回復は分かるが、ノー天気がいまいち。 ・つうか自然回復も強いとは言えないのでは…… ・活かしどころが難しいかも……。 |
|---|
「チルタリスさんを活かすならば使う技はコットンガード、この技は鉄壁を超える勢いで防御力を高める事が出来る技でこの技をするだけで相手の物理ポケモンは有効打を失ってしまいます。そこで相手が狙うのは毒や火傷と言った状態異常での突破でしょう。ですが自然回復ならばそれを回復できます。更に防御を上げつつも龍の舞で攻撃とスピードを確保しながら圧を掛けて行くという事も可能なのです」
| ・思った以上に堅実、だが決定打もあるポケモンだった。 ・可愛い見た目とは裏腹だ……。 ・物理系が一瞬で壊滅するぞ……。 ・それを尻目に龍舞攻撃準備も可能。 ・ドラゴンらしい苛烈さだ。 |
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「チルタリスさんは炎の渦や鬼火といった耐久ポケモンさんが覚える技を逆に習得できます。相手の交代を封じた上で滅びの歌で更に畳み掛ける事も出来ますし羽休めという回復技を使えば体力が回復できるうえに一時的に飛行タイプが機能しなくなるので飛行の弱点を消すという立ち回りも可能です、更にドラゴンタイプと言えばの技には流星群がありますがチルタリスさんも使えます。更に流星群は使った後のパワーダウンが懸念されますがパワースワップという技で攻撃と特攻の能力変化を相手に押し付ける事も出来るという独特な立ち回りも可能です」
| ・いや面白こわ!? ・マジで面白いな!! ・やれることいっぱいあるなぁ ・ドラゴンらしいパワフルさと細やかな動きが出来るとか楽しそうだな |
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「そんな優しさと強さのチルタリスさん、ドラゴンタイプの中でも屈指の育成のし易さです。進化前のチルットさんもとてもフレンドリーで人間を怖がらないのでゲットするのも容易く、最初は飛行タイプとして、進化したらドラゴンタイプとして運用する事も出来ます。言う事もよく聞いてくれますし優しいチルタリスさん、どうぞ皆さんも育ててあげてください」
配信を切ってチルタリスの紹介を終えるとまた電話が来た、出てみるとまた配信の案件だ……先程の配信を見て是非との事だが……自分を包んで来るチルタリスは心配そうに顔を覗き込んで来るので頭を撫でていると―――ある事を思いついた。
「あっそうだ……チルタリスさん、久しぶりにバトルしたくないですか?」
「チル?チルル~!!」
「それは良かった。ならこうしましょう、私にバトルで勝ったらその案件を受けましょう、但し私が勝ったら二度とそのお話を持ってこないでください」
と言った交渉をしてバトルにまで持って行ったのだが……相手は何処までガチなのかフェアリータイプのプクリンを繰り出してきた。どれだけガチなのか……加えてプクリンを出しただけで勝った気でいたので少しイラっと来たので……ちょっとだけ本気を出した。
「タイプ相性だけで勝てると思ったら大間違いなんですよ、そもそも何ですかその技構成は。私をバカにするのもいい加減にしなさい、それなのによくもまあ技マシンコラボの案件なんて持って来れましたね。少しはプクリンが何が出来て得意なのかぐらい把握したらどうですか、一番マシな技がじゃれつくってやっぱり私をバカにしてますよね?」
そして、相手のトレーナーには完勝して軽く説教をかました。その間、チルタリスはずっとラビを抱きしめていた。