「ならば、貴様らで時を抉じ開け、あの時に戻るだけの事!!そうすれば、ワタクシは、ワタクシは……あの時へ、あの時に、戻れる!!!」
ポケモン使いのウォロが勝負を仕掛けてきた!!
乳白色に染まった世界が一気に広まっていく、白い壁のように聳える濃霧は存在こそするが明らかにバトルフィールドには十分な範囲が確保されている。これもウォロの力なのか分からないが……それほどまでにバトルを望むのであれば受けてやる。
「魂を引き込め……ミカルゲェッ!!!」
「おんみょぉぉおおおおんっ……!!!」
「ならばっ……震撼させよ、ガチグマ!!」
「ワギィィィィッ!!!!」
ミカルゲに対してラビはガチグマを投入、それに際してオーガポンとダイケンキをボールへと戻しておく。それに対してウォロは不愉快そうにしながらも面白いと言いたげに笑い始めた。
「なんだ如何した、この状況に至ってもまだ、ワタクシをポケモンバトルで倒すというのか!!しかも、あいつと共に沼地を駆けたガチグマで!!」
「生憎不器用なもんでね、俺は俺のやり方をするまでだ」
「ああそうか……悪の波動!!」
「げげげっげげっげっげっげみゅぉぉおおおおん!!!」
何処か色褪せた要石から飛び出しているミカルゲ、大きく空気を吸い込むと極太の悪の波動が発射される。それに対してガチグマは頭部の満月に光を蓄積させる。
「ムーンフォース!!」
「ギィィィッ……!!!」
満月の形へと変貌したエネルギーを放射、それは真っ向から悪の波動を押しとどめて拮抗してみせる。相性自体は良い筈だが……レベルが相当高いと見える、ならば。
「月を赤く染め上げろ、ブラッドムーン!!」
「ワァァァァァ……ギィィィィッ!!!」
ありったけの気迫が発射されるとそれはムーンフォースへと到達、先程まで夜空の宝石と言わんばかりの満月の輝きを一瞬で鮮血で染まったように変貌させると悪の波動を穿ってミカルゲへと炸裂する。
「ガガガガガガッ!!!?」
「続けて大地の力!!」
「ミカルゲバークアウト!!」
反撃を試みるミカルゲだが、怒涛の畳み掛けはミカルゲの足元から膨大な光が溢れて飲み込んでいく。その中からは苦痛に藻掻く声が聞こえてくるのだが、ガチグマはラビを見た、そしてラビは頷いた。
「確実に、落とせ!!ブラッドムーン!!!」
第二撃のブラッドムーンが発射されてミカルゲを飲み込むが、不意にウォロは笑う。鮮血の満月が要石に縛られる魂たちを飲み込んだ時、ガチグマの足元から黒い影が大きく伸び始めた。
「ラ、ラビあれって!!」
「構うな仕留めろ!!」
ガチグマはラビの指示に忠実に、そのままブラッドムーンを最大火力で放ってミカルゲを確実に狩ってみせた。そして同時に腰を落ち着けるように座り込むと同時に……静かに瞳を閉じた。その光景にウォロは忌々しげに舌を鳴らした。
「分かっていたのか……ワタクシが道連れを狙っていたのが」
「ゴーストタイプを使う上で覚えるのならば常套手段だ、それにミカルゲ程厄介なポケモンもいない。だから確実に落とす、それが俺の目的。ガチグマもそれを納得した上で戦ってくれた」
「じゃ、じゃあさっきのって……」
「あいつも、俺のゴーストポケモンとは戦いまくってるからな……理解してくれてる」
ヒスイダイケンキはガチグマをボールに戻しながらも労いの言葉を掛けるラビの姿に言葉を失った。此処までポケモンに対して全幅の信頼を寄せつつ、逆にポケモンからもここまで信頼を寄せられている人間など、自分の主以外で見た事が無い。
「お前……ならば、煉獄を作り出せ……ウインディ!!!」
「ウオオオオオンッ……!!!」
ミカルゲの次に繰り出されたのはウインディ、声も低く立派な鬣を持っているウインディだが……それを見たサザレが眉を顰めた。何故ならばあのウインディに今はラビのポケモンとして元気にやっている自分の元ガーディで現ウインディを重ねてしまったからだ。それはラビも思った、まるで……ヒスイウインディの黒い部分が白くなってしまったかのような……。
「激震せよ、ハガネール!!!」
「ガアアアネエエエエエエエエエッ!!!!!」
繰り出されたハガネールの姿に思わずウォロはヒスイの時代に戻ったのかと錯覚してしまった、何故ならば瞳に赤い光を灯す巨大なハガネールがそこにいるのだから。間違いなく親分個体だ。
「まさか親分個体とは、矢張り、可能性はまだあったか!!」
「こいつはテンガン山の地下で見つけた奴だ、お前の事情なんか関係なしだ」
「ああそうか、ならば勝手に見出すだけの事!!フレアドライブ!!!」
爆熱を纏って凄まじい勢いで突撃してくるウインディ、その速度は自分のウインディの神速にも匹敵しそうな爆速。それにしてハガネールは一切動じる事もない。
「影分身」
「ガンネェェル!!!」
「ウ、ウォオオンッ!?」
あと数歩で直撃するというタイミングでハガネールは無数に分裂するように影分身を繰り出した。このハガネールの面白い所は親分個体だからではない、影分身を覚えている所。ウインディはあの巨体が無数に増えた事に驚愕して技の集中力を保てなかったのか、足を止めて困惑し始めてしまった。
「何と猪口才な……!!」
「猪口才結構、細工は流々仕上げを御覧じろってな、龍の舞!!」
『ガンネエエエエエル!!!』
無数の巨大な鉄蛇が身体を唸らせながらも高速で動き始めてウインディの周囲を取り囲んでいく光景は最早ホラーのそれと同じ、そしてそれによって途端に濃霧が濃くなり始めた。地面にもなっている濃霧、それがハガネールのパワーとスピードで削れている。
「此方も高速移動で加速、煙から抜けろ!!そして火炎放射で煙を焼け!!」
咄嗟に加速の指示を出して脱出させ、遠距離で火炎放射を発射させて空気の流れを生み出して煙を消し飛ばすのだが……そこには無数の穴が開いたフィールドが広がっていた。
「一体何処に……な、何だこの揺れは!?」
突然揺れ始める地面、ウインディも困惑するが直ぐにウォロは気付いた。このフィールドの下でハガネールが高速で移動し続けている。そして攻撃の機会を狙い続けているのだと。
「神速!!狙いを絞らせるな!!」
「ウォオンッ!!」
先程よりもずっと速く駆け抜けていくウインディ、この速度なら間違いなく捉えられない。出て来た所を焼き尽くしてやると思っていたが―――
「龍の息吹!!」
「なっ……はぁっ!?」
直後、無数に開けられた穴から龍の息吹が飛び出した。全ての穴は繋がっており、そこから技が間欠泉のように噴き出し始めた。神速で移動していたウインディだが、逆にブレーキを掛ける事や方向転換が難しくなりそのまま龍の息吹に突っ込んでしまって、一気にスピードが落ちた。そこをハガネールは見逃さない。
「10万馬力!!!」
穴から飛び出したハガネールが大口を上げながらも突撃する、身体は麻痺して動きは鈍っている。行けると思ったその時だった、ウインディは炎を纏ってハガネールへと突撃した。フレアドライブというには弱いが、それでもその一撃は確実にハガネールへと直撃した。
「ガアアアッ……ネエエエエエエエエエエエエエエエルウウウウウウ!!!!」
それを無理矢理抑え込むようにしながらウインディを地面へと叩きつけたハガネール、その身体は熱で赤くなりながらもウインディを倒して高らかに咆哮を上げた。
「まだ、まだまだまだまだぁ!!この程度で、俺は、私は、ワタクシが……ああああっ……フシギ、バナァ!!!!」
「バナァッ!!!」
「ハガネール、まだいけるな!!」
「ガアアネエエエエルッ!!!」