「うん……まあおまけをして健康状態に支障はないみたいね今の所。え~っと次は……ああこれね、よし機材の準備もよしっと……フリードがこの辺りに確りお金掛けてくれてホント良かったよ、と言っても私は専門はポケモン医学だからね、時間はかかるのは覚悟しといてよ」
「それは良いけど、俺はそんなに信用無いか」
ラビはブレイブアサギ号の医務室に縛り付けられるように集中検査を行っている所であった。無事に戻ってきたうえにラクアへの道は開けたと皆が喜ぶ中でフリードが言いにくそうにモリーにラビの診察をお願いした。何処か怪我でもしたのかと聞いたら酷く言いにくそうだったのだが……
『お願いラビさんを見てあげて!!』
『ボク達の為に凄い無茶をしたんだ!!』
『少しの間だけど心停止までしてたんだよ!?』
『『『『はぁっ!!!?』』』』
とリコ達が懇願するようにモリーへと願い出た結果、ブレイブアサギ号はとんでもない大騒ぎになってラビはマードックによって担ぎ上げられた上にオリオによって逃げられないように手錠まで掛けたうえでの診察がなされた。流石にこの扱いにはラビも抗議をしたかった。
「俺は別に診察から逃げる気もないぞ、仮にも心停止した身だし寧ろ当たり前だろ」
「いや、アンタさなんでそんなに冷静に言える訳?自分の事で自分の心臓が5秒位止まったって言われてるんだよ、普通取り乱すでしょ」
「ンなもん、神の前の圧力に比べればなんでもないわ」
あっけらかんと答えるラビにモリーは溜息を吐く、今回の心停止に当たってリコ達にラビの行動などを聞いてみたうえで診察をしてみたが……身体にはかなりの疲労が蓄積されていて、特に体重なんてキタカミに向かう際の健康診断時に比べて7キロも落ちていた。エリアゼロの護衛は極めて危険だとは聞いていたが此処まで身体を酷使していたのは言葉が出ない。
「どんだけ身を削ってたのよ、エリアゼロに居たのって数日以下でしょう?それなのにこんな疲労の蓄積は滅多に見ないわよ。リーグ挑戦前に鍛えまくったってのなら幾らか類似例があるけど」
「そうでもしなきゃあの子達を守れなかった」
「……それに関しては本当に感謝してる、だけどラビ貴方が居なくなったら元も子もない」
医務室の外側で必死に耳を立てていたリコ達、何とか話の内容を聞きとれないかと努力しているが難しい。
「ラ、ラビさん大丈夫かな……」
「いやある意味元気なのは分かるよ、復活早々フリードにあんなキレのあるパンチやったし」
「不安だよ……あっそうだ、リコかロイ、ちょっとスマホロトム出してくれない?」
「ど、どうするのドット?」
「こうする」
ドットはスマホロトムを通話状態にし、繋がった相手側のをバレないようにこっそりと開けた医務室の扉の隙間から送り込んだ。それはモリーからはばっちり見えていたのだが見えないふりをしながら話をつづけた。ロトムはバレないようにラビのベッドの下に陣取った。
「成程、ドット頭良い!!」
「有難うでも静かに!!こっちからも聞こえちゃうって……!!」
「い、いけないいけない……!!」
口を塞いでからこっそりとその場を移動してそこでこっそりと話を聞く、後でモリーにお礼を言わないと……という所でラビの体重が激減している所に入る。
「7キロって……一日に凄い運動しても減って2キロぐらいって聞いた事あるんだけど……」
「エリアゼロに居たのは二日だから……倍は減ってる!?」
「ロイ、シッー!!!」
『今なんか声したか?』
『アサギ号には色んなポケモンが居るしねぇ、また新しい子でも入ったかな』
『賑やかな船だ』
「あ、危なかったぁ……」
「冷や冷やした……」
脱力する二人にリコはあの時見た夢を思い出した、エリアゼロで空から自分達がいた洞窟を見下ろすような夢を……自分達を守る為に身を削ってくれていた人の事を……
『後さ、なんか栄養状態も悪いね……極端に悪いって訳じゃないし軽度で済んでるんだけど……カレー食べたって言ってなかった?』
『他の面子が馬鹿食いしてくれてな、フリードなんて夜と朝でカレー二桁は食ってたぞ。お陰様で米が大盛況で空っぽだよ持参分』
『そりゃ災難だったね……というかフリード何やってんのよ……護衛してる人に食べさせなさいよ……!!』
そんな状態で自分達を守ってくれていた……感謝どころか申し訳なさ過ぎてしょうがない……自責の念で涙が出そうになる。
『誰かが引き受けなきゃならなかったんだ、だったら俺がやるべきだと思っただけだよ。冒険は楽しくて達成感や高揚感、開放感に満ち溢れている物だけどそれと同じだけ危険で苦しい物があるってのを理解してくれただろ』
それは身に染みて理解出来た事だった、これまでの冒険は本当に楽しかった、だからこれからの冒険も……そんな風に思っていたのが覆された気分だった。ラビは続けて、俺もそうだった、と言って三人をスピーカーに釘付けにした。
「ブルーベリー学園で学んで、力も付けて、ミジュマルもダイケンキになって何とかなるって思ってたけど旅はそんな甘いなんて事はなかった。苦難の連続で次の街に辿り着く前に何回このまま死ぬのかなって思ったか……だけどそんな経験も自分の中で力になってくれた、相棒に大怪我させた事もあった、目の前でハンターにポケモンを傷つけられたのに怖かった事もあった。だけど、それを乗り越えられた時は力に変えられて本当に辛い時を、過去に出来た。あいつらもそういう経験をしたんだよ」
「だとしても、随分とキツい体験だったと思うけどねぇ……大人でも早々しない体験だよ」
「だな、後でちゃんと謝らないとな……」
自分の言葉も自分の一方的なエゴかもしれない……自分のように頑張れなんて言葉も酷いかもしれない。もっと経験を積んでから壁として出した方が良かったかもしれないが……エクスプローラーズという明確な敵対者がいるのだからあった方が良いのかも……という考えもなくはない。
「取り敢えずラビ、動いてもいいけどさちゃんと安静にする事と無茶はしない事、後バトルによる興奮も抑えてね。後刺激の強い物も駄目!!」
「メブキジカのお茶は……!?」
「う~ん……春なら許可する」
「……持ってきてるの夏の奴だ……」
これが一番キツいかもしれない、メブキジカのお茶は本当に美味しいのに……そんな風に思いながらも医務室のベッドからようやく立ち上がる。身体を伸ばすが異常は感じられない、と言っても何といっても心停止、油断は禁物なので医療関係者の言葉は確り聞かなくては……
「ちゃぁんと休んでないと、サザレに言っちゃうぞ」
「勘弁してくれ……というか文句ならデオキシスかテラパゴスに言ってくれ」
モリーの小言を背に受けながらもラビは医務室を後にする。足取りは軽い方なのだが……まあ大人しくするに限る、何せあのゴーゴートが潤んだ目で自分を見て顔を擦り付けたのだから……
「あっウガツホムラにどうしてテラパゴスがデオキシスを封印したのか聞かないと……いやボールから出てくれるのか?というか今からリコ達に会うのも気まずい―――あっ」
「「「あっ」」」
廊下を曲がろうとしたところで、曲がり角でしゃがんでいたリコ達と遭遇してしまった。リコ達的にもあっやっべ、みたいな顔をしているがラビの方がもっと気まずいのである。だが敢てアクセルを踏む。三人に視線を合わせるように座って口を開く。
「なぁ、俺が倒れた事自分のせいとか思ってないか?」
そう問えば身体を震わせた、怒られるとでも思ったのだろうか……そんな三人の頭を撫でてやる。
「勘違いしなさんな、あれは俺の行動の結果だしお前らが悪い事なんて一つもないぞ。そもそもあの場でデオキシスがバトルに乱入してたらもっとやばい事になってて、お前達が俺の立場になるかもしれなかった。そうならなくてよかった」
「だからってっ!!!ラビさんがそうなっていい訳じゃありませんよ!!!」
涙を流しながらも必死に訴えて来るリコ、そうかもしれないと言い含めながら続ける。
「だからってお前らがそうなってもよくはなかった、あの場ではデオキシスを引き離すのが最善の策だったのは間違いない。その後は全部俺の責任で起きた事さ、それでもお前たちが責任を感じるなら―――今度は俺を守ってくれ、俺やダイケンキが手を貸さなくても、レックウザすら自分達で倒せる位に強くなれ。それでチャラにしてやるよ」
なんでこの人はそんな事を言えるのだろうか……自分の命が危なかったのに、こんな事を……此処まで言われてしまったらもうそれ以上の言葉を口にする事は出来なかった。三人は涙と鼻水を仕舞い込んで可能な限り力強く、はいっ!!と返してくれた。
「よしっそれならお前らバトルフィールドでダイケンキに稽古でもつけて貰ってこい、後から行くように言うから。リコ、悪いけど後でウガツホムラのボールを貸してもらっていいかな、聞きたい事があるんだ」
「えっでも出て来てくれるか分かりませんけど……」
「多分大丈夫さ、勘だけどな」
そう言うとリコは漸く安心したような笑みを作ってバトルフィールドへと向かっていく、その様子を見送るといつの間にか傍に来ていたダイケンキがジト目で見て来た。
「悪かったって相棒……だけどお前だって分かってるだろ、そう簡単に死ねたら苦労しない程頑丈だって事は。取り敢えずリコ達を鍛えてやってくれ、それが俺を助ける事にもなる」
「……ケン」
渋々分かったと言いたげな仕草をしながらもリコ達の後を追うダイケンキ、ラビはデオキシスが入ったボールを見つつ、スマホロトムで自分の家のパソコンにアクセスしそこに常駐しているポリゴン2とロトムにメッセージを送る、直ぐに了解の返事が返ってくるのを見てラビは不敵に笑う。
「ラクアにはエクスプローラーズが来るだろうな……来るなら来てみろ、全力で相手してやるよ……あいつらの絶望で最高の絵を仕上げてやる……」
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