週刊エンジョイポケモン放送局   作:魔女っ子アルト姫

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エンジョイ?:ラクアinキュレム

「寒いっ……何これ、急に寒くなってる……!?」

「へ、へぇぇぇ、へっくしゅん!!!急に真冬みたいになったよなんなのこれ!?」

「あ、あのポケモンの影響!?え、ええと……」

 

デオキシス・シャドーに運ばれていた筈のリコ達だが、途中でレッドとシロナと合流、二人はラビからの応援要請で来た事を聞くと直ぐ共に向かう事にした。そしてその先で見たのは―――全体的に歪に凍り付いたドラゴン、その氷は青みが強く瞳と角が赤く明滅し、翼の一部は黒く染まっている姿は異形にすら見える。

 

「ありゃ……なんだ、見た事が無いぞ」

「無理もないわ、あれは彼の故郷であるイッシュ地方のポケモン且つ本来の神話には語られていない空白の存在なのよ」

 

フリードの言葉に答えるようにシロナが言った、その瞳は何処か憐みを込めているように感じられた。どうしてそんな言い方をするのかとリコは疑問に思っていたが、シロナが続けた。

 

「イッシュ地方には英雄の神話があるのよ。真実と理想の英雄、元々一つだったドラゴンは違う物を追い求める双子の兄弟に協力する為にその身を二つに分けたの、それがゼクロムとレシラムと呼ばれるドラゴンポケモン。だけどね、神話には語られないものがあった……あのドラゴンは抜け殻なのよ、ゼクロムとレシラムというポケモンが分離した際に残された、ね」

「抜け、殻……」

 

そう言われてみればキュレムの姿は酷く歪な体形をしているように見える、酷い前傾姿勢に細い首に身体、翼と思われる物もあるがそこには皮膜などはなく触手にも見えるものがあってバランスも悪い。

 

「あれがキュレム……理想と真実を失って虚無の中でそれを満たしてくれる英雄を待つドラゴン」

 

そう静かに呟いたサトシ、イッシュ地方のとある町で聞いた昔話にも登場したキュレム。その昔話では酷く危険な怪物という印象を受けたが……実物を見るとそんな気持ちは微塵も湧かない。

 

「その虚構を埋めたのが、ラビだ」

 

レッドの短くも力強い言葉がその場の全員に木霊した。あのキュレムが一トレーナーの手持ちになっているのが、その証明となっている。

 

 

 

「キュレ、ム……!?まさかあの神話の伝説のポケモンか!?何故、抜け殻のそいつを何故!?」

 

既にいっぱいいっぱいになっている筈のスピネルは言葉を崩しながらも現実を受け入れられないと言わんばかりに狼狽えながら言う、その間もキュレムは冷気を放出しながらも唯々ジガルデを見つめていた。ジガルデはまるでキュレムと話しているかのように視線をそらさない。

 

「俺はイッシュの出身だ、生まれ故郷を旅する事は不思議じゃねぇだろう。その旅の過程で出会ったのさ、俺を求めていたこいつに」

 

その身を撫でる、同時に身体に霜が降りた。それほどまでにキュレムの身体は冷たい、だが自分にとってもこれは心地よい。出会った頃と違ってその身体はすっかり色付いている(・・・・・・)

 

「永遠の孤独、最早取り戻す事が叶わぬ熱と届かぬ光を望み続けていたこいつと俺は出会った。俺も最初は空っぽだった、俺自身に色はない、だが周囲を色付かせることが出来るとこいつが教えてくれた、だからこそこいつは俺の切り札だ」

 

キュレムは少しだけ喉を鳴らした、相変わらず自分の欲しい言葉をくれる奴だと笑っている。

 

「キュレム……ならばお前にも分かる筈だ、私の思いを。ラクリウムは人類とポケモンに新たな地平を齎すそれが私の理想、そしてそれが真実になろうとしている、それらを失ったお前には私の行動が理解出来る―――」

『訳がなかろう』

 

低く重い言葉が響いた。その源は他ならぬキュレム、デオキシスのように取り込んだスマホを使って話している訳ではない、テレパシーを使って周囲に自らの意思を伝達している。そしてその意思はギベオンを否定した。

 

『理想、真実。それを私に向けて問うか、何も理解していないな。私は嘗て一体のドラゴンだった、理想と真実が失われた虚構の龍、それが私だ。私にそれらを問う事自体が間違っている、お前が理解を求めるべきはゼクロムとレシラムであってキュレムではない。そして、お前の理想と真実は既にその手の中にある事を理解するべきだな』

「何……何を言っている」

『この身体にあった熱と光を永久に取り戻す日はない、私はもうそれを望まん』

 

一歩、踏み出すと地面が凍結していく。侵食していく病魔のように地面からラクリウムへと冷気が到達しラクリウムの色を透明な物へと変貌させていく。

 

「こ、これはラクリウムが……!?」

『貴様が持つものは理想にあらず、それは唯の野心に過ぎぬ。貴様がそれを抱くなど―――片腹痛いわ』

「~っ……だ、黙れ!!抜け殻のドラゴン如きが!!」

 

キュレムに何かを否定されたスピネルは既に限界に近かった。ラビを手玉に取ろうとした結果として手酷い竹箆返しを受ける事となり、エクスプローラーズは半壊に近い状態になろうとしている。キュレムの言葉は内面を見通されたかのような気持ちを抱かせ、更にスピネルをイラつかせた。

 

「貴様などに私の抱く理想を理解出来る物か、いやされてたまるか!!」

『私に理想と真実の理解を求める方が間違っていると言った筈だ、私が理解するのは私の理想と真実のみ、それを押し付ける気はない。だがな……私の友、ラビの宝に貴様は傷をつけようとしたな……ならばっ―――!!』

 

瞬間、世界が白黒の灰色の世界へと変貌した。それをその場の全員が認識した、世界が、時が、空間が凍てついたかのような錯覚を感じる。再び世界が動き出すまでの時をラビとキュレムだけが認識し、行動出来ていた。そしてその隣にはテラスタルフォルムとなったテラパゴスが共にいた。その甲羅の上にはパゴゴもいた、彼らも自分らがこれからしようとする事を理解してくれたのだろう、ならば共にそれを成すまで。

 

「世界を蝕む悪意の源を―――永久不滅の氷へ導け、凍える世界」

「ヒュラアアアアアアア!!!!」

「「パアアゴオォォオォッ!!!」」

 

灰色の世界に風が吹く、身を凍てつかせ、全てを砕くような冷たくて無慈悲な吹雪が走り抜けていく。生命の灯を吹き消す風が世界を包んでいく、世界は瞬時に凍結する。大地は氷に置き換えられて空には雪が舞う、死の雪原が生み出される。命の楽園とも言うべきラクアの一角に死の牢獄が築かれた。永久に蘇る事の出来ぬ氷の獄。

 

その世界を輝きが満たす。命の輝きとも言われる太陽のような光が辺りを包み込んでいく。死の世界にあり、封じ込められるそれらから完全に力を抜き取っていく。それらがなされていく中で一際大きな結晶体のみの色が残されていた。

 

「な、何これっさ、寒いっ!!!?」

「あ、アチゲータお願い、近くにお願い……」

「う、ウェルカモお願い抱き着かせて……」

「寒いやマジで寒っ!?リ、リザードン済まないが当たらせてくれ……キャップも俺のジャケットの裏に……!!」

 

再び世界が色を取り始めた時、世界は氷で閉ざされていた。封印されていた場所は元から命の気配などは欠片もなかったが、今は……微塵もない、塵一つさえも見つけ出す事が出来ぬ程に凍てついた死の世界がそこにあった。

 

「あり得ない、こんな事がある訳が、なん、だこれは、何だこれは……!?ラ、ラクリウムが……ラクリウムが全て―――た、ただの、ただの水晶に、なっているなんてぇぇっ……!?」

 

スピネルが正気を取り戻した時、目の前の光景は著しく彼の正気を奪うものだった事だろう。地面から突き出していたラクリウムの結晶は完全に漂白され、絶望が押し寄せてくる。それはギベオンも目の当たりにするが、それよりも驚く事があった。

 

「―――っ……ジ、ジガルデ!?」

「ゼ、ェァ……!!」

 

ギベオンの身体を守る様に蜷局を巻き、その中央部にてギベオンを保護しつつもその身体の半数以上が凍結しているジガルデの姿があった。キュレムはそれを見て当てるつもりはなかったが、自分から当たりに行くとは……と溜息を吐くが同時にあの二匹もああしただろうな、という不思議な実感があった。

 

「お前も不器用だなジガルデ、アンタもそう思うだろ―――ルシアス」

「―――……乱暴な君が言えたことではないね、ラビ」

「その声、はっ……!?」

 

たった一つ、それだけ残された無事なラクリウムから声がする。ラクリウムは徐々に崩壊し始めて塵へとなっていくがその中から一人の男が姿を見せた、その人物こそが……古の冒険者、ルシアスであった。ルシアスはラビをまるで旧友のように親しげに呼び、キュレムにも笑いかけた。

 

「遂に見つけたんだな、お前の虚無を埋めてくれる英雄に」

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