この世界において、伝説のポケモンというのは自然災害の具現化なのだ。世界の神話には自然現象を神にする事が、伝説のポケモンとはそれを操るか、それと同一、もしくは事象そのものという存在。それが一か所に集うと何が起こる?
「お、おいなんだこれ?」
「移動の時期とは余りにかけ離れているぞ」
まず、ポケモンとは生き物である。彼らにとって最も優先するのは自らか自分が属するコミュニティの存続である為の避難。その気がなければ伝説のポケモンであろうと近寄っていくポケモンもいるが態々戦闘態勢にある災害に近づこうとする愚か者はいない。野生のポケモン達は一斉にそこから離れていく。
「あ、あれって……」
「この辺りのヌシじゃねぇか……なんでそれがこんなところに」
群れのボスは二つに分かれる、一つは群れを守る為に安全な場所まで皆を連れていくか、群れを次代のボスに任せて自分はその地をジッと見つめる。自然の摂理なのか、それとも自然の中にある一つの命としての行動なのか……この世界が滅亡するのか、それに準ずる危機なのか、それを見届ける為に……この現象はパルデア地方全体で見られた、移動まではしなくても、ラビの家がある東エリア方向へと視線を向けていた。これをオーキド博士が見たらこういうだろう。
「こんな事が以前もあったのぅ……あの時は世界の滅亡の一歩手前まで行った、だが今回はどうなる事やら……」
「レシラム、火炎放射!!!」
「冷凍ビーム」
レシラムの尾が心臓のような音を立てた直後、ジェットエンジンのような轟音を立て始める。そこで生まれた膨大の熱を一気に放出するように発射される火炎をキュレムは自らの冷気を放射した。それによって火炎放射は一瞬にしてかき消されてしまった。
「僕の想定していた以上に、キュレムの力は強いようだね。龍の波動!!」
「やり返せ」
ドラゴンタイプの技を放つレシラム、放つ度にバリアフィールドが酷く揺れる。それが再度起きる、キュレムの龍の波動も両者にとって苦手とする所、空中で相殺される。だが唯の相殺ではない……両者がお互いを消し合ったような……。
「レシラムとゼクロムは言うなればプラスだが、キュレムはマイナスだ。それがぶつかりあれば対消滅のようなことが起きる、冷凍ビーム!!!」
「ヒュラララララ!!!!」
「避けるんだ!!」
放たれた一撃、それは世界の気温をまた一つ下げた。レシラムはそれを回避するが、冷凍ビームが地面に直撃した時に現れたのは……バトルフィールドを一瞬で凍結させた上に現出させた巨大な氷の結晶。まるで自分の勢力圏を広げる為に他の環境を作り変えるかのような……所業。
「クロスフレイム!!!」
「ルウウウウウワァァァ!!!!」
上げられた咆哮と共に頭上へと形成されていく太陽と見粉う程の火球、地獄の炎と形容するには余りに輝きが暖かすぎる。命を育んだ炎だと言われても違和感がない程の美しさがそこにあった―――同時にこれは世界を焼き尽くす事を可能としている炎だ。
「キュレム、俺が許す―――真実という虚実を、上回れ、凍える世界だ」
「ヒュラララララ!!!!」
天上の炎が遂に落とされる、その時に世界は凍てついた。時も空間も呼吸する事を忘れて色が抜け落ちていく光景にNは目を見開いた、普段自分が何気なく享受していたそれらが鼓動を止めたと錯覚してしまった。ただ、一つ、真実の炎とそれを宿す龍は色付いたままだった。
「これがキュレムの力、なんだね」
「少し違うな」
Nの視線の先にはキュレムを撫でるラビがいた、そして気付いた。彼にも色がある事に。
「俺と、キュレムの力だ」
「ヒュララララララララ!!!!」
「ルウワッァッ!?」
刹那、空中に居た筈のレシラムの脚が氷漬けになった。それだけではない、翼にも霜が降り始めているという異常事態にレシラムは炎を纏ってそれを溶かすが……それでも再び霜が降りてきた事に困惑の表情を浮かべていた。
「空間が、凍っている!?」
「キュレムの本質は虚無、そこには真実も理想もない。凍える世界はそれを広げる技だ、例え炎で一時的に真実を上書きしようと再度虚無にするまで」
「蒼い炎!!」
その言葉を聞いたレシラムの尾が青く染まっていく、炎の温度が更に高まっていく。その影響なのかレシラムを中心にして世界が再び色を取り戻し始めていく、それらが収束されて放たれたのは伝説の一撃とは思えぬほどに細やかな炎、が、それが世界と触れた途端に世界が爆発的に膨張して、再び世界が色を取り戻した。
「……まさかこの技を使わないといけないなんて……思わなかったよ」
「というかやっぱりレシラムもレシラムで可笑しいな、何だ世界を真実で塗り潰すって」
「キュレムも大概、だと僕は思うよ」
いやキュレムの方がまだマシだろ、と思うとキュレムもそう思うのか頷いた。1や2を0にする、のではなくて1や2を望んだ数字に変えるような物じゃないか……これはある種の世界改変なのでは?改めて伝説勢の出鱈目加減に辟易してきたラビであった。
「さて、続けますか」
「そうだね……僕はもう満足なんだけど、レシラムが如何やら炎の竜として身体の一部を凍らせた事がどうも許せないみたいで……」
「だろうなぁ……」
炎は氷を溶かす、それが世の理なのにそれを無視して身体を一時的に凍らされたというのはレシラムの尊厳にも関わって来るだろうからまだまだ続けたいというのは分かる理由だ。キュレムは面倒だなぁ……と言いたげな顔をしている、お前らの能力からしたら俺なんてまだ優しい方だろ、という顔をしている。レシラムはこのままでは私の誇りが許さない!!続けますよ!!という顔をしている。まあバトルを続けるなら……と思った時にスマホロトムから警報が流れた。
「警報!?バリアフィールドに多大な負荷が掛かってる……おい嘘だろ!?このフィールドはラティオスやダークライでも苦労する位には強度がある筈なんだぞ!?」
「敵かい!?」
「クッソこのままだとジェネレーターが持たない、というか爆発する!!外から何か来る、解除して引き込みますからNさん手伝ってくれ!!」
「勿論!!レシラム!!」
「ルウウウウッ!!!」
私の戦いを邪魔するとはいい度胸ですね!!と言わんばかりに声を上げるレシラム、キュレムも当然戦闘態勢を取る。各自の準備が出来ている事を確認してからフィールドを解除すると外部から破壊しようとしていたモノが一気に内部へと侵入してきた。黒い巨大な影が迫って来るかと思ったらそこから何かが飛び出してNへと飛び付いた。Nも回避しようとしたのだが出来ずにいた、飛び付かれて引き剝がそうとするのだが―――それを見て出来なかった。
「やっと、やっと見つけた……もう絶対離さないからねN!!!」
「散々探させやがって……何処ほっつき歩いてたんだN!!」
「トウコ、それにトウヤ!?」
「……成程、こいつじゃあフィールドが持つわけないわな……はぁ~……ジェネレーターに過度の負担……修理費幾ら掛かんだこれ……」
呆れたように持ち上げた視線の先に居たのは黒い影、ではなく漆黒の身体を持った巨大な龍。レシラムとは対照的で此方は男性的な力強さを兼ね備えている、尻尾が円錐形に大きく膨らみタービン状になっているのも特徴的。レシラムがどこまでも生物的な美しくを突き詰めたとすれば、此方は無機質な機械的な竜人と言った印象を受ける。これがイッシュの伝説のドラゴンポケモンにして英雄の双璧、理想を追い求め、希望の世界を造る者に力を貸し、持たぬものは一切の容赦なく牙と雷を向けるというポケモン……黒陰ゼクロム。
「バアアアリバアアアム!!!!」
「レムウウウワ!!!ムウウワァアアアッ!!!」
「ゼェラァ?ゼエム!?ゼエエエムラアアア!!!?」
「……ヒュレエエエム」
イッシュ建国神話に伝わる伝説のドラゴンが一堂に会した……
「いやなんでパルデア地方の俺の家の庭で集まんだよ」
ラビの口から出た言葉に答えてくれる者はその場にはいなかった。
ラビの過去編に需要はありますか?
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さっさと次書け