「……ダイケンキは外せないとなると……いやアシレーヌは別、でもこれを外すのは惜しいよな……だからそこを……補強、いや尖らせるべき……」
現在考えているのはこれからの第一線パーティ、言うなればガチメンバーから選抜するガチ戦闘のパーティである。ハイパーボール帯でバトルをした感想は矢張り油断ならないというものだった。コウヘイのそれは練りこそ甘いが戦術のテーマ自体は結構なガチテーマ、カバルドンでステロを撒かなかったのが残念だったという点もあったがそのぐらいだった。テツヤはテラスタル、メガシンカ、Zワザを総動員して来たしそれで実際アーマーガアを持っていかれてしまった。正直あれは、自分の慢心が招いた最悪の結果だった、あそこでアーマーガアを落とされるのは……。
「あ~……ダメだな、皮算用なのは分かるけど考えちまうなぁ……」
「はい、お茶入ったよ。そんなに苦心することなんだね」
「だけどやっぱり今考えるのは早過ぎた、マスター帯に上がってない段階で考えるのは要素が多すぎるし余計な事考えちまう……」
サザレが淹れてくれたお茶を飲みながらラビは一息を吐いた。コウヘイ戦で強く感じた戦術の差の近さ。ある意味自分はズルをしている、ゲーム時代の貯金があってそれを使っている。だが、今回で危うさも感じた。近々自分は負けるしこのままマスター帯に入ったとしたら確実に初戦で落ちるという予感がある。
「そういえばマスター帯が人数増員するって話本当なのかな」
「人数自体が増えてるから、マスター帯を増やしても別に可笑しくはないだろうな……どっちかと言ったら運営がこれだけ潤沢なハイパー帯から選ばれるのがたった8人だけとか無理!!ってのが本音だ、タマランゼ会長がそう言ってた」
「うっわぁ~あの会長さんなら確かに言いそう~……」
今大会は全大会の3~4倍の参加者がいて、ハイパー帯の人数も徐々に増え始めている。ピラミッドの土台の部分が厚くなれば上の部分も厚くなるのは必然なのでこうなるのは目に見えていたので、つまるところマスター帯に上がる人数を増やすという事になるのである。マスターズエイトもサーティンツーとかになるのだろうか……エイトの部分を変えただけなのに妙に印象が変わるのはなぜだろうか……。
「それでもいいと思うけど、その場合……サトシさんまで辿り着くのがすっげぇ大変になるなぁ……最大で5勝、最低でそのまま対決か……やれやれ……」
「ラビと戦いたがってる人滅茶苦茶多いから……当たったら凄い目でバトルするんだろうね」
「やめて、今考えると鬱になる」
軽く列挙するだけでとんでもない人たちが一気に湧き上がって来るんだからマジで勘弁してほしい……これも旅をし続けた弊害か……と思うと本気で頭痛くなってきた……ホント最悪だ。
「いい加減に負けてみて大したことないアピールでもするか……?」
「八百長嫌いなラビの事だから多分全力で戦って負ける可能性がある相手にする事前提で言ってるだろうけどさ、それはそれで自分にもチャンスあると思う子が挑んでくるんじゃない?」
「……どっちみちか……マジで式やれるの何時だ」
「私は何時でもいいよ、今からしちゃう?」
「応、ベッド連行して明日の昼まで起きれなくしてやろうか」
「あ、あの……出来れば手加減はして、ね……?」
攻撃してくる癖に反撃されたらしおらしくなるのは何故なんだろう……そしてアブソルが今女子会中でよかった、いたら確実にまた噛まれる所だった……兎も角好い加減に纏まった時間が欲しい……シロナからも早く予定をくれないかと言われる始末だ、人の式を心配する位なら……やめておこう、これ以上は裁判抜きで極刑だからマジでやめておこう。
「バトル受付停止の看板でも作るかな……まだまだ時間はあるんだし」
「う、うんそれでもいい、と思うよ……?」
「あのさ、自分から誘ってといてその紙装甲何なの?紙耐久なのに反動技使っちゃったポケモンなの?ワイルドボルト使ったタイカイデンなの?」
いやタイカイデンは攻撃はそこまで高くなかったからいまいち例えとしては成立しないか……?と思っているとインターホンが鳴った、本当にこれを使ったら挑戦者じゃなくて、使わなかったら挑戦者という認識を好い加減に正したい。玄関に出ると……矢張りその認識が間違っているという事がよく分かった。
「やぁっラビ君、久しぶりだね」
「今度は誰かと思ったらあなたですか、何ですかこっちでコンテストでも開くんですか?」
「ああ、それもあるね。此方ではコーディネイターの知名度が低いから、知って貰う為に企画中でね。今もオモダカさんにその話を通した帰りなんだ」
そこにいたのは、優雅で華麗なバトルスタイルから水のアーティストと異名を取るトレーナーにしてトップコーディネイター。元ルネジムのジムリーダーで、ホウエン地方のポケモンリーグチャンピオンでもあった超実力派にしてポケモンコンテストの重鎮であるミクリだった。
「えっ参加してるんですか?」
「ああ、実は新しくバトルの技術をコンテストに応用するミクリカップを企画中でね」
ミクリは元チャンピオンという経歴があるのだが、PWCSには未参加だった。現在はルネジムのジムリーダーに復帰しているらしいのだが……それでもコンテストの重鎮としての役割もあるので、PWCSには参加せずにいたのだが、今回それを曲げての参加を表明しており、ハイパー帯にいるとの事。調べたら本当にいた。
「以前、サトシ君がシンオウでのミクリカップに参加していたという話はしたことはあったかな?」
「本人から聞いた事がありましたね、ブイゼルで参加して力強さと逞しさが高く評価されたって。後氷のアクアジェットを完成させたとか」
「そう、そこなんだ!!ポケモンコンテストとは基本的に美しさや可憐さ、カッコ良さなどを競う場であるんだ、そこに賢さや逞しさと言ったものが加わって来るのだが……サトシ君はそこに真っ向からバトルで磨かれた力強さと技のキレ、そしてポケモンが見せる自信を見せつけて予選を突破した。それを今回主眼に置いたミクリカップを計画中なんだ、その為にも僕も現在のバトル事情に精通していなければいけないと思って今回のPWCSに参加させて貰ったんだよ。そして先日の配信で君のアシレーヌがバトルする所を見たんだ」
そこにはミクリが理想とするものがあった。アシレーヌという大海原のシンガーと呼ばれる歌姫が、力でメガラグラージを圧倒する姿を。それは唯力強いだけではなく、極めて洗練され、緻密な計算が織りなした宝石のカットのような美しさを醸し出していた。積み重ねられた揺るがない自信が見せつける表情は何処までも美しく、気高い物だった。そうこれを求めていたんだと直ぐに理解したのだと叫んで来る。
「ああっ……洗練された強さと裏付けされた揺るがぬ自信が織りなす優美さと気高さに、僕は感動したよ!!だからこそ君とバトルをしに来たんだよ」
「と言ってもアシレーヌは出しませんよ?まだ戦闘準備期間中ですので」
「無論、あれ程のバトルだからね。だがアシレーヌのトレーナーという君ならば、素晴らしいバトルが出来ると確信しているさ―――さあ、イッシュ地方カノコタウンのラビ……僕の挑戦、受けるかい?」
「……上等だ水のアーティスト。こちとら芸術家の弟子だ、アーティストと名乗られたらイラストレーターとして黙ってられないな」
「その意気だ!!さあさあバトルをしようさあしよう今しよう!!」
「貴方そんなにバトル大好きでしたっけ?」
「時と場合によりけりだね!!あっ配信OKだから」
「軽いなぁ……」
『スマホロトムより互いの情報を取得。このバトルはPWCSランクバトル、ハイパーボールクラス公式戦として承認されました。対戦ルールは3対3、ポケモンの交代は両者自由となります。ラビ選手 VS ミクリ選手。それでは両者、最初のポケモンをフィールドへ』
「さあ行くぞ、天を雨雲で塗り潰せペリッパー!!」「ペリパッパ~」
「天を晴天で染め上げろ、コータス!!」「コオオオオオオオオオッ!!!!」
その時、空には二つの変化が起きた。大雨を降らせるほどに黒い雨雲が空を塗り潰すが、それを上から染め上げるかのようにカンカン照りの青空が広がっていく。それによって何が生まれるか……ラビとミクリのフィールドが、日照りと雨に分けられた。さながら、ホウエン神話にある伝説の戦い、陸と海、グラードンとカイオーガの戦いが如く。
という訳で登場、ホウエン地方の元チャンピオンのジムリーダーでトップコーディネイターのミクリさん。ポケスペの
「このマントを見て悟る者なら…、…名乗る必要はない。このマントを見て悟らぬ者には…、…名乗るに値しない!!」
大好きです。