「しかし、本当にここの庭は不思議なバランスで構成されているね……」
定番のメブキジカティーでのティータイム中に視線を逸らせばその先にあるのはラビ自慢の庭。そこには多種多様なポケモン達が生活しており、時折バトルの激しい音が聞こえて来たり、戦闘の悦楽に浸る声に交じって悲鳴染みた声が聞こえて来る。
「多種多様なポケモン達が生活を営んでいる中で一見すれば無秩序と思えるような粗暴さを持っているのに、その実は自然界のそれにも似た秩序があってそれに全員が従っている」
「そもそもその無秩序ってのが人間の尺度の言葉ですからね、実際は確りとしたルールがあるんですよ。この庭、というかあのバ鴉を管理してみせるなんて意気込みを見せる子もいましたけど……私から言わせれば甘く見積もり過ぎている」
「何と言うかラビってなんか上から見る人に対して攻撃的になるよね。なんか上から見下してるんじゃないって言い返すような感じって言うか」
「っというよりも一方的な決めつけとかが嫌いなだけだ、というかミクリさん、何でサラッとうちに泊まってるんですかね」
「まあ細かい事はいいじゃないか」
10年という長い時間の旅をしてきた中で厄介事に巻き込まれたのは一度や二度ではない、酷い時にはポケモントレーナーだからと言って石どころかトラクターで追いかけられて追い出される事もあった。その経験があるからこそかもしれない。
「なんだよアブソルが災いを招くポケモンって……ふざけた事抜かしやがって……」
「あ~あったあった……」
「それを信じている人も多いからね……大変だったんじゃないかい?」
「ええ、ポケモンセンターに泊まったんですけど、俺の部屋に忍び込んでまでアブソルを町から追い出そうとするって事があったんですよ。その時は偶然タツベイとサザレのガーディがボールから出て寝てたから気付いてくれて、そいつに頭突きかましてくれたんですよ。それで俺はそいつをロープで縛って、ジョーイさんにお願いしてジュンサーさんに連絡です」
あの時程最悪な寝起きはなかったかもしれない、しかもそいつは町長の息子とかで余計に話が大きくなってしまった。結局、その町からポケモンセンターとフレンドリィショップが撤退するという一大問題へと発展した。今あの町はどうなっているんだろうか、噂では人が寄り付かない廃村に近い状態だと聞いた事があるが……
「そういうのを無くしたいから配信をしてるのかい?」
「それも理由の一つと言えば一つですけど……碌に調べもせずに決めつけるのが一番腹立つんですよ、学園でもそうでしたけど理解もせずにポケモンに責任を押し付けて、苦手な事をやれば出来るの根性論だけで押し付けて来るのが嫌いなだけです」
「そうか、君は本当にポケモンが好きなんだね」
「好き?違いますよ、愛してるんですよ」
ミクリは真っ直ぐに言ってのけるラビのポケモンへと向ける愛情の深さに言葉を失った。自分とてジムリーダー、いやトレーナーとしてポケモンの事を好きと自称しているが、此処までではないと断言出来る。しかも隣には婚約者がいるのに此処までハッキリ言ってのける……仮に自分の隣にも愛する人が……ナギが居たとしたら自分は言えないだろう。恐らく彼女を優先する。
「フフフッラビはそうでなくっちゃね、あっでも私の事を忘れて貰っちゃ困るんだよ」
「誰が忘れるか、というか俺はそういう人間だと思われてんの?」
「思ってない思ってないwww」
「声、声が笑ってる」
本当に仲が良いなぁこの二人は……本当に好き合っているんだろう、それに比べて……自分とナギは時折喧嘩はするし一度破局寸前まで行ったし……恋人同士ではあるのだが結婚までの道のりは長い……。
「二人は仲が良いが、秘訣などはあるのか?」
「う~ん……基本隠し事はしないよね、まあそれこそ大切な事とかは隠すけど基本的にお互いオープンで思った事直ぐ言うもんね」
「言うな、俺のスキンオイル勝手に使うなとかな」
「だ、だって私の方が使う所多いからすぐに無くなっちゃうんだもん!!それにそれについては毎回ちゃんと謝ってるじゃん~!!」
「だから気にしてねぇけど、毎度毎度手に取る度に軽くなりゃあまたか、とは思うぞ。チラチーノに毎朝頼む訳にはいかないんだから、少しは減らせないのか。一応オイルは週一で補充はしてんだぞ、何全身にでも塗りたくってんの」
う~ん成程、隠し事をせずに言いたい事を……さり気無くメモを取っているミクリにラビは実践する相手はいるのか……少しだけ驚くのであった。勝手なイメージだが、ミクリは女性人気も凄まじいのでその辺りも気にして相手が居なかったイメージだったのだが……これはいるなと直感するのであった。
「それにしても、此処は本当にリラックス出来る所だね……僕のポケモン達ものんびりと羽を伸ばせている。偶にここでリフレッシュさせてほしい位だね」
「シンプルに迷惑なんでやめてください、なんなら今すぐ帰ってくれても私は喜びますよ」
「冗談だよ、流石に。というか喜ばれるとトップコーディネイターとしても傷つくんだけど」
「うるさいよイケメン客寄せパンダ」
「本当に遠慮ないな君は!!?」
だって本当にそうなんだもん、仮に此処に居座ろうとするなら全力で排除する。別にミクリに世話になった事は特にないので気兼ねなく実行出来るのもいい所だ。
「さてと……んじゃ週刊詐欺でもするかな」
「ちょっと待て、君は何をする気だ!?」
「配信の事ですよ、ほら週刊エンジョイポケモン放送局なのに全然週刊じゃないでしょ?」
「あ、ああそういう事か……ラビ君、何故私をそんなに見るんだい」
「いや、コメディアンでも食っていけるなぁと思って」
「いや絶対にやらないからな!!」
「ああそれもフリ―――「じゃないっ!!!」いやぁツッコミがいるとボケが出来ていいな~ああそれと此処に居るんだからゲストお願いしますね~」
「……サザレ君、彼ってあんな性格だったか?」
「割とあんなんですよ?」
「皆さんこんにちは、今日もポケモン育ててますか?まだまだな貴方もこれからの貴方も、此処をきっかけに一歩踏み出して行きましょう。そして本日のゲストは此方」
「やぁっ皆さん水のアーティストのミクリとは僕の事、あははっ今回は宜しく頼むよ」
「本日はこのメンバーでいきます、そして本日ご紹介するポケモンさんは此方」
「ブッサシィッ!!!」
「ハリーマンさんです」