「ふぅむ……成程成程、いや済まなかったね」
「バグゥ~ン……」
バクフーンは少しだけ緊張した面持ちでその場を離れていく、体調チェックはいつもの事だが今回はラビではない。故に緊張していたのだろう、それを行っていた人物は得られたデータを片っ端から入力し、過去の文献と照らし合わせて整合性やらを確かめていく。
「いやはや素晴らしい時間だった、彼女には申し訳なかったが私にとっては素晴らしいというしか表現の方法を見つけられない程に」
「しかしよく来られましたね、パルデア行きのチケットは競争倍率が著しく高いと聞きましたが……」
「私も最初は研究者特権を使おうと思ったのだがね、ダメもとで普通に申し込んだら席が取れたのでね。しかしいつ来てもこの庭は素晴らしい」
「お褒めに預かり恐悦至極……ナナカマド博士」
そう、やって来た人物というのはシンオウ地方のポケモン博士であるナナカマドであった。何度か遊びに来てくれている人だが、ヒスイバクフーンの配信からまだ二日しか経っていないのに来るとは……シロナの事を考えるとその内来ると思うと怖い。
「ハリーマンやガチグマについても改めてデータを取りたいのだがいいかね?」
「そりゃいいですよ、すいませんね今サザレは撮影の依頼が来てカイリューと一緒にハッコウシティに出向いてるもんでお茶に時間かかりました」
「いやいやいや、仲睦まじい様子で何よりだよ。ん~矢張りこのメブキジカのお茶の香りは良い……最近は私も取り寄せてみているのだがね、此処まで香り高い物ではなかったよ」
バクフーンはチェックが終わると直ぐにダイケンキの隣に座った、別にナナカマドのチェックに不備があった訳ではない。ただ初めてみる人間にチェックされる事に緊張していただけだが……それを口実に甘えに行くのは強かだと言わざるを得ない。
「バゥッ」
「ウインディどしたの、なんだ置き配の奴か。あんがと、ほれっ」
「ガゥッ(ガチガチガチ……)」
「ふぅむ……ヒスイウインディも矢張り素晴らしい……」
「ああそう言えば博士、ゾロアークもヒスイの奴って俺言いましたっけ?」
「―――全く聞いていないぞ、どれだけヒスイのポケモンを君は持っているのかね」
いけね口が滑った……藪蛇だった……と完全に油断していた。ナナカマドは威圧感を出しながらも迫って来る。これは確かに技が失敗するのも頷ける……プレッシャーもこういう特性にしてくれよと思いながらもナナカマドを必死に宥める。
「あの時はまだ発表には早いと思ったんですよ俺は!!ある程度時間が経ってからでないと色々と危ないとも思いましたし!!」
「ムゥッ……良いだろう納得はしよう、だがシロナ君は恐らく納得せぬぞ?」
「やっぱりかぁ……はぁどうしよう」
「如何しような、あっオレ様お茶お代わり」
「ああはいはいどうぞ」
矢張り怖いのはシロナという事か……あのコメントの長文を考えると確実に怒っている、いや怒っているというかなんというべきか……確実に迫って来るのは目に見えている。どうやって鎮めるか……パルデア名物のアイスを並べて機嫌を取るか……それとも……
「にしてもヒスイのポケモンは現代でもいい感じに暮らせてんのか?」
「それについては私も思っていた、明らかにヒスイとは環境が違い過ぎる筈だが……」
「ああ、案外普通に過ごしてますよ。ヒスイといっても生まれは今の時代ですから、過去から現在にタイプスリップした訳じゃ―――ってっキバナさん何時の間にぃ!!?」
「よっうめぇお茶だな」
「私は気付いていたが、君がいつ気付くかと思ってね」
本当に何時来た!?と言いたくなる程に自然な流れでやって来たキバナ、思わず自分がお茶を自然と渡していた程には違和感が仕事をしていなかった。
「ア、アンタ何時の間に……」
「オレ様の場合はプラベがあるからな、事前連絡とかしとけば普通に来れるからな」
「ンで何しに来たんですか?」
「いや暇だから来た」
「カエレ!!!」
「冗談だよ本気にすんな」
宥めるように笑うキバナ、極めて忌々しい表情だが絵になっていて非常にむかつく……本気で殴りたくなってきたこの笑顔だが……なんとかそれを飲み込む。
「ンで何しに来たんですかアンタは」
「ハイパークラスの一人として、お前と戦いに来た―――なんて事は無いから安心しろ。単純にPWCS本選会場の進捗状況をガラルのトップジムリーダーとして見に来ただけだぜ」
「ジムリーダーってそんな事もするんですか」
「まあな。後ついでにお前の顔を見に来たんだけど、もしかしたらオレ様向けのヒスイポケモン持ってないかなぁって思って」
「はははっそれは良いね、だが幾らラビ君とは言えそんなに都合よくいる訳が―――」
「あ~……いますね、都合いい奴」
「「なんでいるんだ!?」」
その都合がいいヒスイポケモンというのは……以前ヒスイダイケンキの姿が確認された時にキタカミの里に行った際に確認されたヒスイのヌメイル。その数匹を捕獲していたのである。その内の一匹は見事にヒスイヌメルゴンへと進化して庭の湿地エリアで元気に暮らしている。
「なんならキバナさん育ててみます?」
「マジでか!?」
「どうせなら配信で紹介しますよ、色々と。ナナカマド博士も出ますよね」
「無論だ。というか君の隠している事を全て教えて欲しいのだがね」
「それはまた気が向いたらという事で」
「皆さんこんにちは、今日もポケモン育ててますか?まだまだな貴方もこれからの貴方も、此処をきっかけに一歩踏み出して行きましょう。そして本日のゲストは此方」
「よおっ元気か皆、ガラルからオレ様キバナが登場だぜ!!」
「うむ。配信をご覧の皆さん、どうもこんにちわ。私はナナカマド、シンオウ地方でポケモンの進化をテーマに研究をしている者だ。今回は宜しく頼むぞ」
「今回はこのメンバーでお送りします、そして今回紹介するのは此方」
「メ~ンゴ~……?」
「此方のヌメルゴンです」