週刊エンジョイポケモン放送局   作:魔女っ子アルト姫

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エンジョイ:ヒスイを思う。

「―――……ケェンッ!!!」

 

引き抜かれた剣が一閃すると、眼前にあった巨大な岩は徐々にズレて自重に任せるように崩れ落ちていった。秘剣・千重波は完全に会得されている、その場にまきびしを齎すのではなく切り裂いた相手へと破片を食い込ませてダメージを与える当時そのままの技を文字通りに継承してみせた。

 

「ねぇっラビ君、貴方ヒスイダイケンキについてはどのぐらい知っているの?」

「全てを。その剣技も、精神も、出で立ちも」

 

あの日、ショウの相棒が現れ戦った時の事は心に刻み込んだ。そして過去はそのまま現代へと継承されている。あのダイケンキからしたらこれはどう思うのだろうか……彼からしたら一度見せた自分の技を盗まれたような物だと思うかもしれない。

 

「ヒスイダイケンキを貴方はゲット」

「したいと思った事はありません。何故思う必要があるんです?」

 

シロナは分かり切っている事を聞いた、何方かと言えばヒスイダイケンキへと現代のフタチマルが進化する術を知っているかのという問いかけに近いそれだが……ハッキリした事を言ってしまえば分からない。バクフーンとジュナイパーが外的な要因、土地によってその姿を変えているのだが……ダイケンキに限ってはそれが分からない。

 

「そもそもさせ方が分からないから無理というのもありますけど……俺のダイケンキは最強です。それに……あいつは自分をヒスイ化させる事も出来るようになってる」

「―――どういう事かしら」

「秘剣・千重波を放つときのあいつを見ててください。ダイケンキ、シロナさんがもう一発ご希望だけど行けるか」

「ケン」

 

無論と言いたげなダイケンキは再び剣を振るった。その時の変化、貝殻の鎧は黒く染まって瞳は赤くなる現象……それを見たシロナは言葉を失っていた。後天的な先祖返り、しかも意図的にそれを引き起こすそれはまるで……

 

「ゲンシカイキじゃない」

「俺も思いました」

 

ゲンシカイキ。ホウエン地方に伝わる伝説のポケモン、グラードンとカイオーガ。それぞれ自然エネルギーを吸収する事で失われていた本来の姿と強大な力を取り戻すという文字通りの原始へ回帰した姿とされている。ダイケンキもそれに近い事をしている、だが異質なのはグラードンとカイオーガは自然からエネルギーを得る事でそれを成している言わば一種のメガシンカと言えなくもないものなのだが、ダイケンキはそれを自力でやっているという事。

 

「言うなればヒスイカイキですかね。あいつ、特性まで曲げてますから」

「特性も!?激流じゃないって事!?」

「あの姿になってからシェルブレードを放った時、威力が跳ね上がってたんですよ」

「単純に能力値が違うという事は?」

「無くはないでしょうけど……」

 

ヒスイカイキが一時的なヒスイダイケンキになっていたとしたら能力値の変化はあるだろう。だが大幅に上がるのは素早さであって攻撃ではない。それでは説明しきれない程にシェルブレードの威力は上がっていた。ならばその原因は一つ―――

 

「あの姿のダイケンキの特性は切れ味……それがヒスイダイケンキの夢特性」

「ヒスイカイキ、それによって特性が変化していると?」

「そうとしか言いようがない、ヒスイカイキはイルカマンのマイティチェンジに近しい何かともいえます。あれもメガストーンを用いないメガシンカともいえる」

「分からないことだらけ……って事でいいのかしら」

「何もかも……ショウさんの日誌には何かないんですか?」

「本当に日誌だからね……」

 

何処何処に調査に行きましたとか、キングやクイーンと呼ばれているポケモン達の様子を見たとか、その過程で親分ガブリアスと遭遇してバトルになったとか、今日はウォロさんと一緒だったとか、先輩のテルと一緒だったけどウォロと一緒だったらヤキモチ焼かれたとか、それを使ってウォロがテルを煽っていたとか……そんな事も多い。ヒスイの時代の様子の研究資料にはなるが、ポケモンの事へのそれらは余りならないのが実情だった。

 

「というか数も膨大だから……まだ三分の一にも届いてないのよ」

「えっそんなにあるんですか」

「その日に起きた事とかも細かく書かれてるのよ、これだって何とか抜き出して持ってきたもので私はまだヒスイに起きた事件の半分程度も読めてないのよ。最早調査報告書よこれ」

 

ショウの日誌はコトブキ村に調査団の一員として暮らし始めた日からスタートしているらしく、それ以前の事もかなり細かくまとめられているし、自分の行動を振り返られるようにと全てを記録していたと言われても可笑しくはない物だった。そして途中でシロナは気付いた、これは自分の行動を全て報告する為の物だったと。

 

「ショウは皆に信頼されるための努力として始める、という出だしでこの日誌を始められていたのよ。孤独を紛らわし、自分の潔白を証明する為の行動だったと思うと一つ一つをじっくり読まないとって思ってね……」

「……成程ね」

 

そんな風にヒスイの時代に思いを巡らせている時、サザレが声を掛けて来る。

 

「ラビ、お客さんだよ」

「誰?」

「久しぶり」

「うわ」

「気持ちは解るけどそれはないでしょ、仮にも相手はレジェンドチャンピオンマスターよ」

 

やって来た相手はレッドだった。そんな相手に迷うことなくそんな反応が出来るのも嘗て旅をしたことがあるからこそだろうか……それでもレッドは気にしない、何故ならばグリーンとブルーがやるそれらに比べたら可愛げがありまくるからだ。

 

「それでどうしたんですか」

「見て欲しい奴がいる、勘が正しければヒスイのポケモン」

「ヒスイのポケモン!!?」

「えっ何処で見つけたんですか」

「シロガネ山」

「「「なんで!?」」」

 

思わずサザレも一緒になって驚愕してしまった。ヒスイとジョウトでは違い過ぎる気もしなくもないが……あそこは色んな意味で自然環境が変化していない珍しい土地でもある。そして極めて過酷な土地でもある、あそこより上を探そうとするとエリアゼロしかない位にはやばい土地である。そう思うとヒスイと並ぶような過酷な土地ではある……ような気がする。

 

「ラビなら多分持ってると思って聞きに来た」

「……分かりましたよ、配信で教えればいいんでしょ。ンで何のポケモンなんです?」

「―――、だよ」

「……あ~……まだ納得いくかもしれない」

 

 

 

「皆さんこんにちは、今日もポケモン育ててますか?まだまだな貴方もこれからの貴方も、此処をきっかけに一歩踏み出して行きましょう。そして本日のゲストは此方」

「どうも皆さんこんにちは、シンオウリーグチャンピオンのシロナです、今日は宜しくね」

「レッド」

「本日はこのメンバーでいきます、そして本日ご紹介するポケモンさんは此方」

「にゃりん」

「はい此方のポケモンなんですが……はいレッドさんどうぞ」

「出てこい」

「ニュラ!!!」

「はい、此方はニューラさんなんですけど……ヒスイのニューラですね。そしてその進化形のオオニューラです……ねえホントマジで野生でいたんですか?」

「あそこは俺の庭」

「ああうん、でしょうね」

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