「このこのっどうだ!!」
「ほいほいほいのほいっおおおっ!!?待て待て何でそんな挙動になっちゃうの!?」
「死体が踊るな!?回転しながら空に上がっていった!?」
「ちょ何々!?今回神様荒ぶっていらっしゃるのかい!?」
ラビの家にのテレビは大型、何となく大きなテレビが買われておかれているのだが、基本的に有効活用される事は少ない。しいて言うならばニュースとバトルの中継を見る程度なのだが……今日はそんな事もなく、そんなTVで画面分割協力プレイに勤しむラビとお客様の姿があった。
「これで、ラストォォッ!!!」
「終わった、終わったよね!?」
「「ミッション、クリアアアッ!!!」」
と大声を出しながらもハイタッチをしてクリアを喜び合う二人の姿にサザレは童心に帰ってるなぁ……と思いながらも見守っている、本心を言えば微笑ましく見守ってあげたいのは山々なのだが……それをやっている相手が相手なのでそれが出来ないというのが素直な所。だって今来ているのは……
「いやぁしかしこうしてゲームをするのも久しぶりだねぇ、ラビちん随分と上手くなったねぇ」
「そういう師匠こそ、随分とテク上がったんじゃありません?」
「ふっふっふのふ~ポケモンバトルもこれも日々之精進修行あるのみよ」
今回やって来たお客様はマスタード。ガラル地方のヨロイ島にあるマスタード道場の師範でラビも入門経験がある。ガラルのチャンピオンであるダンデやユウリもこの道場の出であり、ポケモンの基礎や育て方や様々な事を学ぶことが出来る。そんな道場のマスタードは元ガラルのリーグのチャンピオン、ダイマックスが導入される以前のという文言こそつくが、18年もの間ポケモンリーグチャンピオンの座を維持し続けたレジェンドで、その記録はレッドにすら破られていない。50年前にはフェアリータイプのジムリーダーのポプラとはライバル関係であり、鎬を削り合っていた事もあった。
「しかし態々師匠が会いに来るなんてどういう風の吹きまわしです?」
「ホッホッホッ……可愛い可愛い弟子が最近漸くPWCSに参加して快進撃してるって言うじゃない、ラビちんの配信はワシも観てるよ。楽しく学ばせて貰ってるよ、勝手で悪いけど弟子達への修行にも使わせて貰ってるよ」
「その位だったら別に幾らでもどうぞ、それだけを言う為に?」
「ノンノン―――力業に早業、如何してワシに教えてくれなかったのかなぁ?」
「あ~……それについてですか」
一瞬鋭くなった瞳にラビは思わず苦笑いを浮かべてしまった。確かにそれはトレーナーとして隠居状態とはいえ滾らない訳が無いし弟子の教育に組み込む事も出来る。こんなものがあるならもっと早く教えて欲しかったなぁ~という小言を言いながらもツンツンとラビの胸襟を突く。
「ワシってば結構ラビちんを可愛がってあげたと思うんだけどな~それなのにこんな凄いのを隠すなんてちょっと酷いってワシ、思っちゃうんだよなぁ~加えて、重撃に瞬撃なんて物まで見せつけられて、ワシが黙ってると思ったのかな~?」
「いやぁ~それは……まだ師匠にお見せするレベルではなかったと申しますか……」
「し・か・も、こんなに可愛い婚約者ちゃんがいるなんて、ワシ一言も聞いてないんだけどなぁ~ワシはラビちんのお爺ちゃん枠で参列するのを秘かに楽しみにしてたんだけどねぇ~?」
「いやそれは普通に知りませんしうちの祖父母健在なんすけど」
「細かい事は置いといて」
「いや置いとくなや、人の家庭事情を置いとくなや」
本当にこの爺フリーダム過ぎる……自分が修行していた時だって突然別の地方の料理食べてみたいんだけど無理かな?とか朝の散歩付き合ってちょ、とか言い出したと思ったらヨロイ島を一周する羽目になったり……サメハダーの群れを捌いて避け続けてねとか……なんか自分を鍛える修行なども盛り沢山で本当に大変だった。
「ワシちゃんさ―――ラビちんとランクバトルがしたいのよ」
「……師匠、参加してるんですか?」
「先日ね、参加したいんだけどって運営に声を掛けたらチャンピオンの経歴からハイパークラスからスタートしていいよ~って言われてね、その初戦をラビちんにお願いしたいのよ」
まあ確かにマスタードほどの人物ならばハイパーボール帯からのスタートはある種当然だ。そして……この物言いは間違いなく本気のバトルをしようという感じがヒシヒシと伝わって来ている……この人とのバトルは免許皆伝を懸けたガチバトル以来か……。
「態々私ですか、ユウリさんかダンデさんに頼めばいいじゃないですか」
「あの子らとはその内戦うよん、ワシちゃんが戦いたいのは―――お主じゃよ、ラビ」
「……分かりました」
これはもう何を言った所で聞き入れてはもらえないな……というか、これは師匠割と本気で怒ってるな、だって業の基本形が完成したのは冗談抜きでマスタード道場を卒業してからなんだから……まあその後言わなかったのがギルティかもしれないが……便りが無いのはいい知らせというじゃないか、という風に一方的な事をまくしたてている間にバトルフィールドに到着した。
「一応言っておきますが、ダイマックスは出来ませんからね」
「十分十分―――昔に戻るのも、悪くはない」
ギラついた瞳をするマスタード、そんな時にやって来たスマホロトム。
「さあ―――世界一楽しい時間の始まりと行こうか!!!我が弟子よ!!!」
帽子を投げ捨てると同時に跳躍し、上着を脱ぎ棄てる。隠れていた肉体が露になる。年老いて尚も健在という言葉が相応しい筋骨隆々の身体。正しく武闘家の姿となったマスタードは構えを取りながらも笑った。ラビもそれに応えるように手を合わせて礼をすると構えを取った。
『スマホロトムより互いの情報を取得。このバトルはPWCSランクバトル、ハイパーボールクラス公式戦として承認されました。対戦ルールは3対3、ポケモンの交代は両者自由となります。ラビ選手 VS マスタード選手。それでは両者、最初のポケモンをフィールドへ』
「では行くぞ、コジョンドォ!!!」「コオオオオジョッ!!!」
「それじゃあ行こうか、オノノクス!!!」「クスァァアアアア!!!」
という訳で今回のお相手はマスタード師匠です。