『それでペンドラーの容態は?』
「一応ジョーイさんに来て貰いましたが、疲労が溜まっている程度で肉体的なダメージは皆無です。何方かと言えば精神的な衰弱が見られるとの事で、暫くは休ませる事だと言われましたよ」
『う~ん……まさか暴走メガシンカで得られたメガストーンにそんな事が……』
ペンドラーを休ませている間にプラターヌ博士へと連絡を取って状況の報告から入る。暴走メガシンカの例はまだまだ少ない上に、メガシンカをさせられるトレーナーも少数な上に、暴走メガシンカを起こしたポケモンを丁度持っているトレーナーを探すのは極めて困難。故にラビが戦利品として得られたメガストーンの検証役も兼ねていたのだが……これは思った以上の厄ネタである可能性が出てきている。
「これがメガシンカによる性質によるものなのか、それとも暴走メガシンカのメガストーンなのかはもう一種類を手に入れて比較しないと何ともなりませんね。此方で出来る事はやっておきます」
『それは助かるが……本当に良いのかい?』
「そのつもりで寄越したんでしょう?やるだけです」
『済まない、感謝するよ』
そう言って通話を切るが、ペンドラーへと目を向ける。あくまで精神的な衰弱が見えるだけで健康面は問題はない。事実としてメガシンカ直後に比べたら回復しているのが分かる。
「ねぇラビ、そのメガストーン……やめておいた方が良いんじゃ……私もなんか嫌な感じがする」
「それは俺も。だけど俺がやらないと他の誰かがやる事になる、さっきのは俺のペンドラーだから耐える事が出来た事も考えられる」
単純にメガシンカが不慣れだったためか、それともメガシンカした事で変化した身体の性質が齎した精神的な問題か、それともこのメガストーンが原因の物なのかを検証しないと前には進めない。そうなるとメンバーは誰にすべきか……そんな中二つのメガストーンを手に取る。
「よし、お前達だ……エアームド!!」
「エ"ア"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ッ!!!!」
呼ばれてすぐに飛んで来たエアームド、今日も今日とて威圧感を出そうとして低めのダミ声全開である、少し咳き込んでいるので喉スプレーのケアも忘れずに。エアームドのケアをそこそこにもう一匹……
「スターミー!!スターミーはいるk「ヘヤッ!!!」―――毎度毎度の事だが、一々俺の背後も回るなって言ってんだろ!!」
「ヘヤッ!!」
「反省してんのかお前……」
もう一匹はカントー時代に捕まえたスターミー、極めて神出鬼没で此方から探しても絶対に発見する事が出来ず、名前を呼ぶと毎回背後から出現するという謎のポケモン。だが実力は折り紙付きでミクリからは一緒に来ない?とスカウトを受ける程だが、当人はヘヤッ!!!と拒否していた、いや多分拒否であっていると思う……自分の背後に隠れながらだったので恐らくではあるが……。
「という訳で、お前達にもメガシンカの実験に付き合って欲しいんだ」
「エアアッ」「ヘヤッ!!!ダアッ!!!」
「うん、エアームドはともかくお前のは全く理解不能だ」
水タイプのポケモンの言葉はある程度分かるつもりでいるのだが……スターミーは例外中の例外で全く理解出来ない。こいつは最早光の国から来た存在ではなかろうか、もう掛け声がそれにしか聞こえない。もう三つ目のあの声を出されたら……。
「と、取り敢えずメガシンカの実験開始だ。まずは―――エアームド!!」
「エアアアッ!!!」
スターミーには下がって貰いつつ、エアームドにもバンダナで簡易的にメガストーンを結って着けてやる。よし、どうなるのか……近場にはダイケンキに控えて貰い、いざという時に備える。
「超克せよ、メガシンカ、エアームド!!!」
「エアアアアアアアアッ―――エ"ア"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ッ!!!!ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"エ"ア"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ッ!!!!」
光の繭を突き破った時、思わずラビは驚いた。そこにあったのは黄金のエアームド。エアームドの色違いよりも更に派手な文字通りの黄金となった身体と翼は美しい翠色に変化し、足の爪もジェットスキーのように大きくなっている。此処まで変化するとは……流石メガシンカというべきか。
「どうだエアームド、体の具合は」
「エ"ア"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ッ……"ァ"ァ"ァ"……エ"ア"!?"エ"ァ"ァ"ァ""ァ"ァ"ァ"!!!」
ペンドラーの時よりもかなり確りとした意識があるエアームドは身体の調子を尋ねられると、自分でもそれを確認するように身体を動かすのだが、直ぐに変化に気づいたのか酷く嬉しそうな声を上げながら周囲を飛び回り始めた―――のだが、そのスピードが明らかにとんでもない。いきなり目の前で消えたかと思ったらダークライが出現して自分をガードする程の衝撃波を放って大空へと舞い上がっていった。
「ァァァァ……」
「サ、サンキュダークライ……今のって紛れもなく、ソニックブーム*1だよな……エアームドの最高速度は300キロだった筈……4倍以上に加速してるって事なのか……?お~いエアームド!!身体は大丈夫なのか~!!!?」
大声を張り上げて名を呼ぶと今度はゆっくりと帰って来たエアームド、その顔は今まで堪能することが出来なかったスピードを味わう事が出来て満足です、と言いたげなのが分かる程度には恵比寿顔だった。随分と楽しんで来たらしいが……
「エ、エアアアア……エアアアッ」
「ケン、ケン……キ、ダァイキ、ケンキ」
「身体に無視出来ない程度の痛みと気分が常に上がってる感じがするか……身体への負担と高揚感か……それだけか?」
「エァ」
「ってなると……メガペンドラーにはメガシンカした事で狂暴性やらが増す特性があると考えた方が良いかもしれないな……そして身体への負荷か……分かった、取り敢えずもういいぞ」
「エアアアッ」
途端にメガシンカは解除されてメガストーンを回収する。エアームドはメガシンカする事で凄まじいスピードを手に入れる、それに極めて運動性が上がっている事から身体も軽くなっており、防御も多少落ちている事も考えた方が良いな、とメモに書きこむと俺の番だな!!と言わんばかりに立っているスターミーへとメガストーンを装着する。
「よし、準備は良いか」
「ヘヤッ!!!」
「よし、それじゃ―――超克せよ、スターミー、メガシンカ!!!」
「ヘヤアアアアアア―――ヘアアアッ!!!!」
「―――えっ?」
光の繭を突き破って姿を現したメガスターミー、それを見た瞬間にラビの思考が死んだ。何故ならばそこにいたのは―――
「ヘアッ!!」
「……ええええええええええええええええっっ!!!!?」
思わず驚きで噴出さずにはいられなかった。メガシンカには大きく変化したり、思った以上に変化しないものがあったりする。例えばメガアブソルはそこまで劇的で大きな変化はしていない、まだ大本のアブソルが更に進化したというメガシンカを理解出来る姿。メガガルーラはガルーラ本体はそこまで変化せず、子供が成長するという意味合いでのメガシンカだ。だから様々なメガシンカがある事は承知している、しているが―――これに驚かずにいられるか。
メガスターミー、一先ず大きくなった。うんまずはそこだ、そこなのだが……身体の大部分は変化していない。メガガルーラのような感じかな?という一瞬の思考を文字通りに粉砕する程の破壊力がそこにあったのだ。なんとボディの下部にある腕というよりも脚だろうか……そこが、伸びている。伸びている、こう、ニュっと……その身体もメガシンカの影響なのか凄く輝いているというかテカっている……そして人間でいう所の両腕も伸びており、それを腰に当てた仁王立ちのようなポーズでコアを主張している……もう色んな意味で破壊力があり過ぎる姿となっている。
「なんでだああああああああ!!!!??お前どうしてそうなったぁ!!?」
「ヘァッ!!!シュワッ!!!」
「やかましいわ!!前かがみになってこっちに腕を構えんな!!色んな意味で危ない姿になりやがってテメェ!!!」
「シュワッチ!!!」
「あっこら逃げるなって走ってる!!ス、スターミーが物凄い勢いで走ってる!!?すっげぇドタドタ走ってる!?何これちょっとキモイ!!?ちょっ何これ、俺どういう顔したらいいの!?うわああああっこっち来るなぁぁぁぁ!!!?」
「ヘアアアッ!!!」
より人間に近づいた、と言えばいいのだろうか……メガスターミーはそのまま走り出すが、それが思いの外面白いのかドタドタと走っていたのが徐々にフォームが修正され、ラビを追いかける頃にはアスリート顔負けの美しいフォームで駆け出していた。
「きゅ、きゅっ―――キュハハハハハハハッキュキュウウヌ、キュキュキュハハハハハハハハ!!!」
これには流石のアシレーヌも大爆笑。ラグラージに凭れ掛って必死に見ないようにして笑いを殺している、ラグラージは必死に笑いを堪えているのだが、アシレーヌが再び其方をチラリと見ると、ワザとらしくその場で足踏みを始めてラグラージ共々腹筋が崩壊して笑い転げてしまった。
「ヘァッ!!!」
「分かった分かったからこっち来るなぁぁぁ!!!!」
「ダァァッ!!!」
「ダイケンキ助けてくれぇ!!!」
「ケ、ケェンキ……」
ダイケンキとしても混乱してどうしたらいいのか分からない。何故ならばスターミーは純粋に人間のように走れることの嬉しさと楽しさを堪能しており、悪意などはなくラビを追いかけているのも一緒に走りたいからだから、余計にどうしたいいのか分からなくなっていた。
「マッシブッ!!!」
「ヘァッ……?ヘアッヘヤァ!!!」
「シッバァアルクッ!!!バアアルクウウ!!!」
「ヘヤァッ!!!ダアァッ!!!シュワッ!!!」
その後、スターミーは何故かマッシブーンと意気投合したのか仲良くポージングを続けていたが、身体の負担などは全く感じていないらしく、暴走メガシンカのメガストーンの影響は本当にあるのか無いのかが分からなくなってしまったラビがいた。