『はい、此方としても寝耳に水でして……しかも既にガラル地方全域に広告が打たれておりまして……申し訳ありません!!私ども、PWCSとしてチャンピオンユウリとのバトルの為にガラルへと渡航して頂こうと思いましたのは事実でして―――!!』
「いえ、事情は彼女とキバナさんからも伺っています。どうにもダンデ委員長にいい顔をしたい、憧れの元チャンピオンの評価を稼ぎたいという一部が先手を打ったらしいです」
『まだまだガラル地方のリーグ委員会は盤石ではないという事ですか……今回の件に関しては、PWCS運営だけではなく、ポケモンリーグ本部からも直接的な注意と指導を行う事をラビ様にお約束させて頂きます』
ラビ宛の電話がかかって来た、それはPWCSの運営本部から。今回のようにバトルをする選手が社会的な地位にある場合にはその調整などを行う必要があり、それを代行や補佐したりする部署のトップからの謝罪の電話だった。
『それで如何致しますか、このような事態ですしユウリ選手とのバトルだけに限定するという事も何とか可能ではあるかと思いますし、そもそも貴方がこのトーナメントに参加する意味すらありません。拒否する権利は十二分に御座います、どうかご検討を』
「いえ、出ますよ。ですがその代わりに―――お願いを聞いて頂けますか?」
『お願い、ですか?今回の事は我々PWCS運営委員会の不徳でも御座いますので出来る事ならば』
「一つはガラルの滞在が長引くでしょうからそれに関する帰りのチケット云々についてです」
『それについてはご心配なく、既に準備は整えてあります』
「流石ですね、もう一つは―――ガラルポケモンリーグのサポートです」
まさか過ぎる提案にえっ?という間抜けな声を出してしまった、厳重且つ厳酷な処分を望むと言われても当然の事だし寧ろをそれを行うつもりでいた身としてはラビの申し出は意外過ぎる物だ。
「ハッキリ言いまして、ガラルポケモンリーグの連中には私も相当にムカついているんですよね、だからその処分を下す役目を譲って頂きたい」
『それは、被害者でもあられるラビ様にはその権利はあると思いますが……サポートというのは』
「私が行うのはただの文句です、ガラルポケモンリーグの不誠実で筋の通らない行いに対する文句を言うだけです。但し―――その文句は軽く、なんて済ませないというだけです」
『そ、それは……―――えっタマランゼ会長から!?す、少しお待ちいただけますか!?』
少しだけ待つと電話がタマランゼ会長へと繋ぐという言葉があった。
『久しぶりじゃのぉラビ君、こうして話すのは何年振りかの?』
「そうですね、いつ振りになるやら……お久しぶりですタマランゼ会長」
『うむ、それで今回の事じゃが……素直な事を言うとガラルポケモンリーグはローズ委員長の更迭以降質が落ちてきているんじゃ、ダンデ君も頑張っておるが足元がそれに伴っておらん。まだ彼をチャンピオンとして見ておる』
「でしょうね」
それはユウリがチャンピオンとして認められていない現状からも見て取れる、無理もない、なんて甘えを許す訳にはいかない。そのせいで一人の少女が壊れかけていたんだ、それを許せる程に温厚であるつもりはない。
『故に―――君に、頼んでも良いかなガラルリーグへの一撃。ガラルポケモンリーグへのサポートや立て直しなんかはこっちで全部面倒見て上げちゃうから』
「……ぶちまけますよ?全部」
『ええよええよ、偶にはそういうのも、必要じゃから』
「なら、好きなだけ言いますよ」
『根回し下準備後始末、任しときんしゃい、それじゃあたまらんバトルを期待しとるよ』
そう言って電話は途切れた。許可は得たし、これで心配はなくなった……部屋へと戻るとユウリやキバナ達が何やら心配そうな目で此方を見て来た。
「あ、あのラビさん、やっぱり今回の―――」
「俺は出るよ、どうせだ今回で一気にランク上げてマスター帯確定と行こうじゃないか」
不安げなユウリのそれを蹴破るようにラビはアッサリと言ってのけた、ユウリはそれを聞くと花が咲いたような笑顔を浮かべて小躍りするように、だが抑えるように喜び始めた。今回ばかりは自分が声明を出してトーナメントを中止にしようとキバナと相談までしていたらしい。だがやっぱり、ラビとはバトルをしたいのは本音だったらしく、相当に嬉しいらしいが、キバナは怪訝そうな顔を崩さなかった。
「良いのかよ、オレ様だって今回のには頭に来てる。あいつら、配信でのラビを見て甘く見てんだよ。オレ様とダンデがあんだけ釘刺したのに……喉元過ぎれば熱さを忘れるとはこの事だな」
「だったら今度は楔でも撃ち込んでやればいいさ」
「そうしてやるさ、さぁてどんなことをしてやろうかねぇ……ヒッヒッヒッ」
「キバナさん、なんかポプラさんみたいな顔になってるよ」
「ああっ!?ユウリそれはオレ様が老けてるって言いてぇのか⁉そんな事言うのはこの口かぁ!?この口かなぁ!!?」
「いひゃいいひゃいれふ~!!もういいまふぇんっ~!!」
悪い顔をしながらもユウリの柔らかいほっぺを摘まんで引っ張るキバナと痛がるユウリ、キバナも本気で怒っている訳ではなく半分以上が遊びでやっている。ユウリもユウリできっとそれは分かっている、年の離れた兄弟のように戯れる二人を見て思わずサザレは微笑み、ラビは肩を竦める。
「うううっ~……ほっぺが取れるかと思ったぁ……」
「そりゃお前が悪いからな、罰には痛みが必要だ」
「ウ~……やっぱりキバナさん意地悪だ……サザレさ~ん……」
「はいはいいい子いい子」
サザレに甘えに行く姿は親戚に甘えに行く子供だ、思わずキバナとラビが噴き出しそうになる。
「ああそうだ。昨日マサルの奴が漸く帰って来てな、あいつ正式にフロンティアブレーンの資格取れたってよ」
「それ、つまりはバトルフロンティアを制覇したって事になるんじゃ」
「らしいぜ、バトルピラミッドとバトルパレスに苦戦したってぼやいてたぞ」
これでガラルのバトルフロンティア施設建設の現実味が、確実な物へと変貌した事になった。そしてガラル初のフロンティアブレーンのお披露目も含めての今回のトーナメントという訳か……決して今の運営が無能ではない事は事実、事実だがそれだけだ。
「マサル君ってどんな子なんだ?」
「え~っとですね、物静かな感じなんですけどポケモンの事になると凄い考えるっていうか夢中になっちゃう感じの子ですね。ポケモン図鑑のアプリを貰う前から自作のポケモン図鑑を作っちゃう位にはポケモン大好きっ子です」
「へぇ……気が合いそうだな」
「確か兄ちゃんもポケモンが大好きで影響されたってたな、ブリーダーやってる兄ちゃんの傍で色んなポケモンを見て、それについて調べて纏めてたら褒められたのが切っ掛けとか言ってたな」
ユウリとキバナの話からすると相当なポケモン好きらしい。挨拶ぐらいはしておきたいが……まあ会える時を楽しみにしておくとしよう。