PWCSガラルトーナメント。随分と大々的に宣伝しているが、その参加者に全く連絡が来ない所か最初から出る事を表明していたような態度が極めて不信感を抱かせる。到着早々はユウリとキバナだったが、先日はダンデがポケモンリーグ委員長として頭を下げに来た、当人としてはPWCS中も中々に忙しく動き回っており、それでも可能な限り目を配り続けていたらしいが……複数人が結託した上で秘密裏に動かれた上に自分の決裁も待たずに動かれたら流石に対応が出来ない。今回の事でチャンピオン時代のローズ委員長の辣腕ぶりが心の底から理解出来た……と眉間を揉みながら漏らしていた。
「いやぁそれにしてもダンデさんって思った以上にいい人だったね」
「ホップの兄貴っていうのも理解出来る人格者だったな」
「でもなんかホテル代とかその他費用もガラルリーグで持つから遠慮なく請求してくれっていうのはちょっと悪い気がするよね」
「それは思う」
まだダンデは今回の原因達には処分を下していない、それはラビからの話を聞いた故でもあるが……ラビとサザレが被った被害に対してはリーグとして詫びるつもりがあると明言した上で外部組織を作ってリーグの監視を行わせるかな……とも呟いていたので結構来ているのが分かった。
「だが問題は……ホテルから出る事が出来なくなったことが一番きついな」
「だね~……ワイルドエリアとか凄い楽しみにしてたのに」
自分が来ているという事は既に流布してしまっており、ホテルの外は大騒ぎになっている。何も知らない観客たちは気が楽な物で凄いバトルが見れると勝手な期待を膨らませているのだから参った物だ、これが今のガラル地方がポケモンバトルへと向ける実情だと言ったら誰にでも通じそうだ。
「これからナックルスタジアムでトーナメント表発表と開会式、第一試合のバトルだっけ?」
「そゆこと」
「あれでもガラルってなんかコスチュームじゃなくて何だっけ、あれいるんじゃなかったっけ?」
「ユニフォームか?」
「そうユニフォーム!!」
ガラル地方でのバトルは興行、故にトレーナーも盛り上げる為にと運営側が管理をしやすくする為にユニフォームの着用が求められている。ラビもこの地方を旅をしていた頃は着用していたが……今回は着るつもりはない。だって前回のエキシビションだって着てないから。
「後ラビのユニフォームの背番号は何だったの?」
「503だな」
「因みに理由は?」
「ダイケンキの全国図鑑番号」
「成程」
そんなわけで時間になったので出発をする、だが外に出たら大丈夫なのかと思ったらホテルの裏にタクシーを呼んでくれたらしく、そこで乗り込んで態々直ぐ近くのスタジアムまで運んでくれた。この為だけに幾ら掛かるんだろうか……と考えるのは自分が貧乏性だからだろうか。サザレはVIP席に案内され、自分は控室へと向かう。そこでは
「あっラビさんおはよう御座いま~す!!」
今日も元気なユウリが大きく手を振って来ていた、のだがその背後に何やら隠れている人が……首を傾げているとユウリがワザとらしく身体を捩って後ろにいた少女を引きずり出した。
「おはよ、ンで其方はどったのよ」
「こっちは私の大親友のマリィちゃんです!!何を隠そう、今までラビさんの配信を全然見た事なかったのに私が上げてた切り抜き動画を見てからドはまりしちゃった系女子です!!」
「ちょっバッユウリ何ば言うて……!?」
顔を真っ赤にしつつも気を取り直すように咳払いをしてからマリィはラビと向かい合った。
「お、お久しぶりですラビさん、ま、まさかこういう形でまた会うとは思いませんでした……」
「以前スパイクタウンでお会いしましたね、あの時はもっと元気でしたのに御淑やかになられましたね」
「なっとらんよ、ただ恥ずかしゅうて大人しかだけ……ユウリ、あんたのしぇいばい!!」
「てへっ♪」
「許さん!!」
「ギャアアッちょっマリィストップ!!待て!!死んだふりぃ!?」
「誰がワンパチか!!!」
控室内を走り回ってじゃれ合う二人、本当に仲が良い事が分かる。そう思っていると今度は別の人物から話しかけられる、それは剣盾の主人公のもう一方、と言っていいのだろうか、男主人公の―――
「初めまして、僕マサルです!!ラビさんの事は良くユウリとマリィから聞いてます!!」
「此方こそ宜しくお願いします。ガラル初のフロンティアブレーンに声を掛けられるとは、私も捨てたもんじゃないですな」
エニシダに確認を取ったが、キバナが苦戦していたと言っていたが内容としては決して悪い物ではなかった。バトルピラミッドの初戦ではレジロック相手にゴリランダーで善戦したが、紙一重の所で敗北、リベンジマッチとなる第二戦はレジアイスにアーマーガアで対抗したが冷凍ビームで動きを封じられたところに電磁砲を連続で浴びせ掛けられ敗北、そして第三戦はレジスチルに再び相棒のゴリランダーでバトルし、真っ向から打ち破ってみせたとの事。
バトルパレスでは計二度のバトル、大自然での中を自由に動き回ってバトルをするというガラルのスタイルとは全く違う環境の為に苦戦を強いられてしまったが、第二戦では3週間ほど森と山に籠って環境に自分を含めて慣らした末に勝ったとの事。
「兄からお話を聞いてましたけど、やっぱり配信でのデータは凄いですね!!僕も見習わないと!!」
「それほどでも……ってお兄さん?」
「ええ、リスナーで良くコメントしてるって言ってました」
じゃあいつもコメントをしてくれたりしているのか、それなら有難いなぁ……と思っていると自然にマサルの兄の話題になった。そこへマリィとユウリも参加する。
「そういえばマサルのお兄さん、最近は大丈夫?この前まで凄い落ち込んどったけど」
「最近は一応……でもなんかまた蒸し返されちゃってまたブルー状態」
「あっちゃぁ~……酷いあれだったもんね」
「何かあったので?」
「兄には付き合ってた人がいたんですよ、兄としては将来結婚を視野に入れる程に好きだった人で、僕から見てもお似合いだったんですけど……その人、浮気してたみたいで……」
「それは、また……」
よく話と言えばよくある話だがそれはまたエグいなぁ……と思っているとこれだけではなかった。
「しかも、実は結婚詐欺で他地方で有名な人だって事が判明しまして……兄が完全に騙される前に逮捕されたんです……」
「予想以上に酷かった……!!」
「ホント酷いよね、ライナンさんは本当に実直でいい人なのに騙すなんて」
「ブリーダーとしての腕前は超一流なんですよ、ボクも兄から色々教わってますし……だけどそんな訳でダメージが酷過ぎてポケモンとしか向き合えなくなってて……最近はマシにはなってきたと思うんですけど……」
色んな意味で濃い。確かにこれは同情の余地しか……と思った所でラビはある事に気づいた。自分の配信でよく見ていてポケモンとしか向き合えない、そして結婚云々……あれ、最近コメント見ないけど吃驚する位一致するのがいるぞと思考する。
「今度ライナンさんに差し入れ持っていくよ、元気になってほしいし」
「私も行く」
「有難うユウリにマリィ、きっと兄さんも喜ぶよ」
「もしかして……Mr.Mなのか……?」
「素晴らしい……お前は俺にとって最高の相棒だよブリムオン、もうお前と結婚したい……」
「リィム」
「どうして、どうしてなんだ……俺は本気で……ああっ……ダメだ、今日はマサルの応援に来てるんだからしっかりしないと……」
という訳で、マサルの兄はライナンことMr.Mです。