「ウゥワッ……ヘアッ!!!」
「渾身の一撃でもこれだけか、面白いっまだまだ上げていくぞタチフサグマぁ!!」
「グァァァマ!!!」
敵討ちを繰り出したタチフサグマのその一撃は紛れもなく一級の物なのに十字受けで防御したスターミーを後退りさせるのが限界だった。直ぐに体勢を立て直し、腰を落とした独特のファイティングポーズになる、だがネズにとってはそれもカンフル剤になる程に今が充実していた。
「メテオビーム!!!」
「ァァァッ……ヘァッ!!!」
「自慢のブロッキングで受け切れ!!」
お前が防御するならば、自分だって見せてやる!!と言わんばかりに胸の前で腕をクロスさせる、しかし一瞬、タチフサグマはネズの指示を疑うというよりも疑問に思ってしまった。メテオビームは溜めが必要なはず、と思ったのも吹き飛んだ。文字通り、宇宙の光線が襲い掛かって来たからだ。気合を入れて足を踏ん張り、腰を入れてメテオビームを受け止める。
「フサァァァッ……!!!」
全力で耐える、だが徐々に体が押されていくのを実感する。とんでもないパワー、しかも溜めが殆ど必要ないなんて―――流石は自分のトレーナーだ、自分は発射されるまで理解出来なかったのだから、信じていればいい、余計な事を思考するな!!自分に言い聞かせながらブロッキングを続ける、続けるのだが……
「更に強くっ!!メテオビーム!!!!」
「ダァァァァァッ!!!!」
なんとメガスターミーはメテオビームを撃っている状態から更にエネルギーを取り込んでいるのかメテオビームの照射範囲が更に広くなった。胸の前で受け止められていた筈のそれが、更に太く、大幅に拡大されてタチフサグマを飲み込まんばかりの極太の閃光となってタチフサグマへと襲い掛かった。
「フサァァァァ……!!!」
「―――ハハハハハッ!!タチフサグマ、全力だ、まだ成功したぁ事ないが―――お前の最高のナンバー、ブロッキング!!!」
「フサア、グマアアアアアアアアアッ!!!!」
ネズの言葉に応えたタチフサグマ、なんと攻撃を受けている状態から力業を発動させた。それによって増強されたブロッキングはメテオビームに抑えられていた身体を立て直し、完全に拮抗している状態を生み出してみせた。一歩、一歩、踏みしめながらも前へと進んでいくタチフサグマ。そして最初よりも深く、前に踏み込んだところで力強く、腕を開きながらメテオビームを四散させた。
「グウウウマアアアアアアアア!!!!」
『な、なんという事でしょうか!!タチフサグマが、あの状態からメテオビームを完全防御に成功!!信じられません!!二重三重の驚きです、元ジムリーダーのネズ、その実力は衰えていない所か、洗練されてすらいるように感じられます!!』
拳が打ち鳴らされた、それを打ち鳴らしたのはネズだった。よくぞ持ち直した、持ち直してくれた!!熱い思いが込められた音だった。それを見てラビは笑うとスターミーは自然と腰を落としつつも、左脚を引いた。
「接近戦だ、アクアブレイク!!」
「ダァァァッ!!!」
「来るぞ、タチフサグマっ辻斬り!!!」
「グゥマァッ……ッマァアアアアッ!!!」
一瞬で距離を詰めて来る圧倒的な瞬発力、懐に入り込まれたが逆に迎撃出来ると思えばいい、辻斬りで迎撃を試みるが―――タチフサグマの動きが明らかに鈍い、力業のデメリットが露になってしまっている。本来であれば狙った相手の急所を捉える鋭利な一撃は見る影もなく、スターミーの飛び蹴り染みたアクアブレイクが炸裂した。
「グゥゥッ……マァァッ……!!!」
「瞳は生きてる、続けろ!!」
「ヘアアアアッ!!!!」
『再度のアクアブレイクゥゥゥッ!!!無情の連打ぁぁ!!!タチフサグマの顎が跳ね上がったぁぁ!!!そしてすかさずの一撃が、襲うううう!!!!』
見事な連撃が襲う、それでもタチフサグマは立ち続けていた。悟った、反撃の余力はない。これ以上は攻撃できないだろう、ならば自分はどうするんだ?決まっている、立ち続けるだけ……膝は、絶対に突かない……!!それが、自分の誇りでネズのポケモンとしての―――!!!
「フサアアアグアアアアアアア!!!!!」
甲高いタチフサグマの声がスタジアムを貫いた、誰もが耳を塞いでしまう程の絶叫が天を衝いた。そして……タチフサグマはブロッキングの体勢を取って……動かなかった。決して膝を突く事はなかった。
『タチフサグマ、戦闘不能!!スターミーの勝ち!!BATTLE OVER!!ラビ選手の勝利となります!!』
『け、決着ぅぅぅぅ!!!!哀愁のネズを打ち破り、第二回戦に駒を進めるのはラビ選手です!!!』
静寂の後にスタジアム中から湧き上がる歓声、それらの中でネズは静かにタチフサグマの肩に触れながら優しく言うのであった。
「良いバトルだった、最高のナンバーを有難う」
ボールに戻すとネズはラビの元にまで歩み寄った。
「負けてしまいましたが、悔いはありません。おれもポケモンも全てを出し切り、特にタチフサグマは頑張ってくれました。今度一日掛けて彼の毛並みを手入れしてやる事にします」
「そうしてあげてください、まさかスターミーのメテオビームをあそこまで止められるとは思いませんでしたよ。ブロッキングの力業、お見事でした」
「貴方にそう言って頂けると光栄ですね、次も頑張ってください」
握手を交わすとあちこちからフラッシュが焚かれる、運営のスマホロトムが写真を撮りまくっている。眩しいが必死に顔を持たせる、ネズは遠慮なく歪めているが……スターミー、お前は胸を張ってポーズを取るな。ネズが去っていくのを見送っているとインタビュアーが駆け寄って来た、ああそうか此処だと勝利インタビューとかあったか、とラビは思い出した。
「ラビ選手、快勝でしたがご感想を!!」
「あれの何処が快勝なんですか?」
インタビュアーの質問に対して思わず質問で返してしまった。そんな事をされるとは思っていなかったのかキョトンとした顔をされるがラビはそのまま続けてコメントする。
「ガブリアスを起点とした仕込みは成功しましたが、ペンドラーでの策は大失敗。流石ネズさん、全部見抜かれていたとはね」
「あ、あのそれはどういう……」
「私が狙っていたのはペンドラーの加速と剣舞で上げた能力をバトンタッチでガブリアスに引き継ぐ事でのエース化、そこでドラゴンテールを主軸にして相手の手持ちを強制交代させる事で設置技で相手全体にダメージを与えていく戦略ですよ。それをあの人はたった一手、スカタンクの大爆発で潰してみせた。見事としか言いようがない。スターミー自体が予備の戦力で出すつもりはなかったのに引きずり出されてしまった」
今回のバトルはラビにとっては反省点が大量に出て来たもので快勝とは言えない、苦戦の辛勝というのが彼にとっての受け取り方だった。結果として2対0で勝っているが、それは額面通りの受け取り方しか出来ない人間がするものだ。
「後、大爆発を批判してた人いましたね。何言ってんですか、大爆発などの自爆系の技はポケモンとの信頼関係が大前提の技ですよ。しかもあの局面でいきなり出された指示にスカタンクは迷う事なく従って実行した。普段からネズさんがポケモンを信じている証拠ですよ」
既にそこには、最後のスターミーとタチフサグマのバトルの興奮などなかった。そこにあるのは―――静寂と冷たい空気だけ。
「そんなに私が気に入らないなら、何時でも相手になってあげますよ―――……その気が、あればの話ですけどね」
「ええ~っと、自信とリスペクト!!そして自らの実力に誇りを持っているコメントでした!!!」
必死に何とか場を盛り上げようとしているインタビュアーが可哀そうだな、と犯人は思いながらも退場する。そして通路ではキバナとユウリが笑っていた。
「よく言ってくれたぜラビ、オレ様もあれぐらい言おうかな」
「アンタが言うとアンチが黙ってませんけどいいんですか?」
「良いんだよ、その位しないとガラルは変わらねぇ……ユウリ、あいつとだろ」
「うん、ダンデさんと」
「じゃあ、そこで思いっきりやったれ」
「そうする!!」
絶妙に嫌な予感がしたラビであった。