週刊エンジョイポケモン放送局   作:魔女っ子アルト姫

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エンジョイ:PWCSガラルトーナメント VS マサル 後編

「ヴォヴォヴォヴォッ……ヴォオオオオオッルデェエエ!!!!!」

 

ボールから飛び出したそれは出現と同時に天へと向けて火炎放射を吐いた。その熱量は圧倒的で一瞬で雨雲を消し飛ばしてしまう程、元々雨乞いの終了が近づいていたのもあるだろうが……だからと言ってスタジアムのバトルはフィールドを覆いつくす程の雨雲をたった一撃の火炎放射で消し飛ばすなんて事は簡単ではない。出力と熱量、この二つが無ければ成立しない。

 

『ラ、ラビ選手の最後の一体はマルヤクデだ!!皆様ご存じ、このガラル地方のジムリーダーの一人、燃え続ける炎のチャレンジャーことカブさんの相棒でも知られております!!しかし、これは……大きい……!!』

『ああ、デカい……通常のマルヤクデは約3m程だが、あのマルヤクデは7mはある……一瞬、赤いレックウザが出現したのかと錯覚した』

 

唸り声を上げながらも身体をゆっくりと動かして獲物を品定めするかのようにゴリランダーを見つめる、思わずゴリランダーはまだバトル開始の合図さえも出ていないのに完全な戦闘態勢へと入ってしまう程の迫力があった。それはマサルも同様で思わず、指示を飛ばしてしまいそうになった。

 

「ヴォオオオオオオッ……」

 

首を擡げた大蛇のようにゆっくりとラビの方へと向き直ると超至近距離でその顔を凝視する、それを見ていたカブは思わず飛び出しそうになった。

 

「ど、どうしたのカブさん!?」

「マズいぞ……あれはマルヤクデがペンドラーにする威嚇行動と同じだ、まさかあのマルヤクデはラビ君の指示すらも無視する程の荒くれなのでは……!!」

 

マルヤクデとペンドラーは極めて仲が悪い、これはラビのマルヤクデとペンドラーに限った話ではなく種族そのものがそうなのである。もしも互いが出会うと激しい縄張り争いを行い始めてしまい最終的に敗北した側は勝利した側の餌になるという程に不仲。ラビのマルヤクデとペンドラーも極めて仲が悪く、それこそ出会ったら殺し合いのようなバトルを始めてしまう程……その際にはダイケンキが責任をもって止めているが……それでも年に数回は起きている。

 

そんな相手にするような威嚇をラビにしている、マルヤクデがその気にさえなれば体内で作り出す摂氏800度を超える炎を吐き出して焼かれてしまう……のだがラビは全く瞳を反らさずマルヤクデの瞳を見続ける。

 

「そうだ、あいつがお前の相手だ。なんだ自信がねぇのか」

「ヴォォォォッ……?」

 

馬鹿にしているのかと唸りを上げるマルヤクデ、だがラビはそれを見続ける。気位が高く自己中心的、自分が気に入らなければバトルすら拒絶する、しかし―――こいつの観察眼は相手の実力全てを見通す程に優れている。そんなマルヤクデにとってあのゴリランダーは不服だというのか、そう問いかけてみれば……顔を背けながらも炎を吐き捨て、改めてラビと共に相手を見つめる。

 

「ヴォオオオッ」

「わぁってるよ、ちゃんと指示は出せだろ」

 

低い唸り声はまるでドラゴンタイプのようだ、マサルはジンダイから聞いた話を思い出した。大昔、ムカデポケモンはドラゴンタイプのポケモンを喰らっていたという伝説があると。まるでそれではないか……だが、それならばそれを退治したという勇者のように、ゴリランダーと共に立ち向かってみせようじゃないか!!と気合を入れ直す。

 

『あ、改めまして―――NEXT BATTLE マルヤクデ VS ゴリランダー!!3、2、1……BATTLE START!!』

「まずは、ゴリランダー、ドラムアタック!!!」

「ゴラゴラゴラゴラララララァァァァ!!!」

「蜷局を巻く」

 

自慢のドラムをかき鳴らして巨大な樹木の根を出現させて攻撃する、だが当然のことながら草タイプのそれは炎虫タイプのマルヤクデにはまるで効果がない、なので目的は追加効果の素早さの低下が主目的。それに対するは蜷局を巻く、攻撃と防御、そして命中率の上昇を行える。だが、マルヤクデがやると違って来る。迫った樹木の根があと少しでマルヤクデの身体を打ち据えようとした所でなんと空中で発火して燃え尽きて行った。

 

『ドラムアタックが燃えたぁ!?これは、マルヤクデの体温によるものでしょうか!?』

『……恐らく、マルヤクデの体温はバトルになると急上昇する。それが蜷局を巻くで身体が活性化してさらに過熱した、と考えるのが自然か』

「なら地均し!!」

「もう一度蜷局を巻く」

 

思った以上に冷静な上に頭も回っている事に感心するラビ、何故ならば主目的は素早さを下げる事でダメージは与えられなくても別にいい。だが当てなければいけない、だったらどうする?遠くからでも素早さを下げられる技で攻めればいいと地面タイプの地均しに切り替えて来た。蜷局を巻いているのでダメージは少ない、だが素早さは明確に下がるのだが……生憎、このマルヤクデは積極的に動かすタイプではないので幾ら下がったところで気にしない。それに―――素早さを無視する技もある。

 

「マッドショット!!」

「熱湯だ」

「ヴォオオオオオオオッ!!!」

 

根を操って泥の塊を飛ばすのだが、マルヤクデは口からとんでもない量の熱湯を発射して泥を溶かすように流してしまう。そしてその熱湯はゴリランダーにも飛散してその身体を熱で焼く、熱がり転げまわって何とかそれを消そうとしている姿にマルヤクデは嗤った。

 

「ビルドアップだ!!」

「リィィンッダアアゴオオオッ!!!」

 

ポーズを取りながらも能力を向上させていくゴリランダーを冷静に見ながらもマルヤクデは再び蜷局を巻いた―――と思ったら尻尾に噛みつくようにして身体を輪のように繋げた。そして低い唸り声はまるでエンジンが唸るような駆動音に錯覚した。

 

「火炎車」

「ヴォゥヴォゥヴォゥヴォゥヴォオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」

 

そのまま回転を始めると一気に火が付いて超高温の火炎車となってゴリランダーへと迫っていく。素早さが落ちているから回避できると思ったが、マサルの直観が大音量で危険を知らせて来た、この寒気は一体と思った直後に理解した、身体が大きい事の意味を。

 

「ダメだゴリランダー、守る!!」

「リィンッ!!ラダァ!?」

 

守るを展開した直後、ゴリランダーの視界は炎に包まれていた。そして守るの障壁越しに見た物は……辺り一面、バトルフィールド全てが火の海となっているという光景。ファイアフィールドという技があったとしたらこんな事になるのだろう、というのが容易に連想出来る程だった。

 

『ワタルさん、マルヤクデは確かに素早さが下がっている筈では……』

『……いや、あのマルヤクデの特性が白い煙ならば納得は行きます。白い煙は相手の技によって発生する能力変化を無効化するという特性。それならば地均しでもドラムアタックでも素早さは落ちない……更にあの巨躯、あれが動き回れば通常以上の移動範囲になる』

「そうか、白い煙……如何して気付かなかったんだ……!!」

 

それはマルヤクデが余りに巨大だったから、その巨体故にマルヤクデの動きはスローな物で地均しによって素早さが落ちていると錯覚をしてしまった。

 

「さあ得意技と行こう、炎の鞭!!!」

「ヴォオオオッ……!!ヴォルラァ!!!」

 

刹那、マルヤクデは尾から伸ばした炎の鞭を振るうと―――スタジアムに爆音が響いた。空気を砕くような、まるでそんな耳を劈く酷く激しい音が、そしてその音が鳴るとゴリランダーはその身体に深い火傷の跡を受けて痛みで声を上げぬように必死に耐えていた。

 

「ゴ、ゴリランダー!!?爆音波だ!!」

「リ、リンッ……ダァアアアアアアアッ!!!!」

 

全身を駆け巡る痛みに耐えながらも必死にドラムを叩いて強烈な音を発生させて攻撃する、だが再びあの音がした。それはゴリランダーの爆音をかき消す程に巨大且つゴリランダーを吹き飛ばす程の破壊力を秘めていた。そしてマサルはそれを理解した。

 

「まさか今のって……炎の鞭が音速を超えてたって事……!?」

「その通り」

 

炎を吐き出しながらも漸く気付いたか、と言いたげなマルヤクデの奥でラビは静かに佇んでいた。

 

「俺のマルヤクデの炎の鞭は音速を超えて相手を捉える、そしてその高温故に相手は火傷を負い防御は下がる、既にゴリランダーの防御はボロボロだ」

「ヴォオオオオオオオオオオッ!!!!」

 

さあどうする、貴様はどうする!!と言わんばかりに炎の鞭の連打が乱れ飛ぶ。ゴリランダーは音速を超える鞭を捉える事も出来ずに唯々打たれ続けていく、全身に火傷と痛々しい打撃痕が増えて続けていく。マサルはどうすれば……と必死に頭を巡らせる、如何したらいい、如何したら打開出来る!?この状況を―――……?と一瞬過った不安が瞬時に心を支配する。身体を揺らし、倒れそうになる身体が逆方向からの鞭で無理矢理に立たされ続けていくゴリランダーの姿に徐々に声が震え始める。

 

「ぁ、ぁぁっ……!!」

「ゴオオ、ラアアア……ダァァ……リランダァアアアッ!!!!」

「……ヴォゥ」

 

その時、炎の鞭の連打が止まった。何故か、ゴリランダーがその鞭を止めていた。

 

『止めた!!止めました!!!音速を超える炎の鞭を、全身を打ち据える痛みの元凶を、確かに掴んだぞゴリランダー!!!これがフロンティアブレーンの相棒の意地か、その瞳に滾る炎はマルヤクデにも、決して負けておりません!!!』

 

「ゴ、ゴリランダー……!!?」

「リイイインッ……!!!!」

 

そこにはどんな相手であろうとも恐れずに立ち向かう偉大な勇者である相棒の姿があった、どんな時でも自分と一緒に居て、楽しい時も苦しい時も全てを共有した相手が自分に語り掛けている。前を向け、俺を一人にするのか、と。

 

「ごめん、そうだった……僕たちはずっと一緒だったもんね!!次の一撃に全てを賭けよう、ジンダイさんに勝った時みたいに!!!」

「リイイイイイインダアアアアアア!!!」

 

炎の鞭を放り投げつつも気合を入れるゴリランダーにマルヤクデは漸く戦う価値のある顔になったな、と笑った。ラビの奴、これの為に俺を……と思いつつも構える。

 

「行くぞ相棒、全てを此処に!!!僕たちが一番好きな技だ!!!力強く―――メガトンパンチ!!!

ゴオオオオオッ……リイイインダアアアアアアア!!!!

 

「迎え撃て!! 力強く―――フレアドライブ!!!

ヴォウヴォウヴォヴヴォヴヴォヴヴォヴヴォヴ……ヴォウクデェエエ!!!

 

 

力業同士の真っ向からの勝負、同時に炸裂した時―――勝者は決まった。

 

 

 

 

「どうだったマサル、ラビさんは」

「ホントに強い、ユウリに勝ったのも頷けるよ」

 

廊下を歩くマサルへと声を掛けるユウリ、敗北したマサルの顔に後悔や悔しさはなく、清々しい顔がそこにあった。結局、ゴリランダーのメガトンパンチは通じず跳ね返されてしまった。だけど、あのマルヤクデに戦う価値があると判断させる事は出来た……だから次は勝つ、そう決めた。

 

「ねぇユウリ、このトーナメントが終わったら特訓したいんだ。フロンティア施設の建設もあるからまだまだ施設の稼働までは時間がある、それまでに身に着けた知識とか戦術を身体に刻みこむのに良い特訓場所はないかな」

「じゃあカンムリ雪原がいいよ、私が今活動拠点にしてる所」

「よし、特訓だ!!」「お~!!!」

 

 

 

「若いっていいねぇ……」

「ヴォウフ……」

「おいマルヤクデ今俺の事馬鹿にしたろ」

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