「荒れ狂えよオレ様のパートナー!!!スタジアムごと、いやガラルの全てごと消し飛ばすつもりで―――ラビを超えてみせなぁ!!!」
「ジュラアアアアアアアアアッ!!!!」
開幕直後からキバナはボールにジュラルドンを戻した、3対3のルールでもう交代ポケモンはいない筈……という訳ではない、これこそガラル地方ポケモンバトルの最大の目玉なのだ。一度ポケモンをボールへと戻し、アームバンド型デバイスであるダイマックスバンドからエネルギーを送り込みダイマックスボールへと変身させ、それを投げて再度ポケモンを場に出す。これによってダイマックスが完了する。この工程にもトレーナーには個性がある、キバナの場合は必ず自撮りを行う、のだが……
「オオオラァッ!!!!」
巨大となったダイマックスボールを投擲するキバナ、だが……その姿に誰もが違和感を感じた。それは……キバナが自撮りをしない事だった。ダイマックスをする最中にする自撮り、それをしなかったのはサトシとの戦い以来の事……それすらしない姿にキバナの覚悟、勝利への執念が感じられた。そして投げられたボールから解放されたのは通常のダイマックスではない。特定の種類のポケモンの中でも特別な個体だけがそれを行えるキョダイマックス。そして今―――ジュラルドンは
「ジュラアアアアアアッ!!!!!」
肩から上、特に首が長く伸び、首の一部と腹部から背中までには窓ガラスの様なクリスタル状に変化、その姿は摩天楼に聳える高層ビルのような見た目となっている。これこそがキョダイマックスを遂げたジュラルドン、キョダイマックスジュラルドンである。
『出たぁぁぁっキバナの相棒であるジュラルドンのキョダイマックスの姿!!天に届く摩天楼、その雄大な姿と力で敵を屠る巨大な鋼鉄の龍!!さあラビ選手はどうする、このまま攻めるのか、それともダイマックスを―――』
『いや、シルヴァディの様子が……』
『こ、これは……シルヴァディの身体が……?』
「やっぱり思うよな、感じるよな、この異様、この波動、お前と出会った時を思い出す」
「ヴァアアアアッ……!!」
自分とシルヴァディの出会いは極めて異質且つイレギュラーな物、エーテル財団によって生み出されたというのがシルヴァディだが……彼はエーテル財団が生み出したわけではない。彼はウルトラホールからやって来た、いや正確には自分が迷い込んだウルトラホールの奥でたった一人……ある物を守り続けていた守護者だった。彼が守っていた物は狙われていた、それはダイマックスをしたポケモンかと疑う程の巨大な存在だった。
「凌駕しようじゃねぇ、あの時の再現と行こう―――シルヴァディ、UBキラーの実力をガラルに示せ、世界に刻め、行けぇシルヴァディ!!!龍の嵐を超克せよ!!」
「来やがれラビぃ!!ダイスチル!!!」
「ジュウラアアアアッ!!!」
巨体となった身体で足踏みをする、地面からは金属の棘が無数に出現してシルヴァディへと襲い掛かって来る。それを跳躍する、その上を伝っていくかのように走っていく。
「まずはお前好みの環境に作り替えるか……見せつけてやれ!!素早く―――水の誓い!!そして再び素早く―――炎の誓い!!」
「シヴァアアア―――ディッ!!!」
矢継ぎ早に放たれた水色の光、赤い光は一つに融合しながらもジュラルドンへと直撃した。瞑想と悪巧みを継承しているので高火力、効き辛くはあるがジュラルドンへとダメージを与えるが―――水と炎が四散するとフィールドへと鮮やかな虹が掛かった。
『こ、これはっフィールドに虹が掛かりました!?これは、一体……』
『これは誓いのコンビネーション!!』
『ご存じ、なのですか!?』
思わず解説へと尋ねてしまう実況、と言っても完全な素である。ダイゴは解説として答える。
『ポケモンの技には特定の技同士を合わせる事で初めて真価を発揮するコンビネーションを大前提とした技が存在します、その中でも最も顕著なのが誓いと呼ばれる技です。炎、水、草、この三種類が存在します。ただ同じ技では成立せず、別々のタイプと掛け合わせることで成立します。草と炎では火の海、草と水では湿原、そして今ラビ君がやったのは水と炎の虹です。追加効果の発動確率を2倍にする、天の恵みの効果をフィールドに付与する物です』
フィールドに影響を齎す技は数多くあるが、これは極めてレアだ。そもそもとして使い手が少なすぎて存在すら知らないというトレーナーも多い。だがこのシルヴァディはそれが使える、それを用いて守っていた物に虹、煌めく襷を掛けていたのだ。
「素早く―――噛み砕く!!そこから繋げ、アイアンヘッド!!そして再び素早く―――噛み砕く!!」
「ヴァアアアアアル!!!!」
駆け出していくシルヴァディは瞬時の大ジャンプをすると大口を開けながらジュラルドンの頭へと噛みついた、そしてその時に淡い光がジュラルドンに走る、行動を起こそうとした瞬間に顔面に向けてアイアンヘッドが炸裂すると数歩後ろへと下がって動きが鈍った、その直後、再び噛み砕くが炸裂した。そしてまた光が走る、防御ダウンの発動の連続、早速虹の恩恵が起きている。
「ジュラルドン、全てを消し飛ばせ―――龍よ吠えろ、一撃必殺、キョダイゲンスイ!!!」
「ジュウウウラアアアアアアアアアアッ!!!!」
着地と同時を狙った攻撃、シルヴァディを中心にダイマックスと龍のエネルギーが融合した超弩級の竜巻が生み出されていく。唯の竜巻ではない、純粋なエネルギーで生み出されたそれはシルヴァディの身体を蝕んでいく、ラビはその目の当たりにしてこれが本当に最弱のキョダイマックス技と揶揄されたキョダイゲンスイか?と言いたくなった。だが同時にこの世界だと自分が広めた業の影響もあって需要があるのでは?とも思いつつも指示を飛ばす。
「奮い立て、流星群!!!」
「シルゥゥゥゥウウウウウッ―――ヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
雄叫びと共にキョダイゲンスイの嵐の中心で輝く一等星、それはキョダイゲンスイの中で打ち上げられるとその中で四散し、その中で何度も何度も無数に乱反射して竜巻の中を荒れ狂った。外からはキョダイゲンスイの中で無数の龍が暴れ狂っているかのような光景に映っていた、そしてそれは―――その中で加速しきったかのようにキョダイゲンスイを食い破るかのように外へと飛び出してフィールドへと降り注いでいく。
「ジュッラァァァッ……!!」
「くそっなんつう突破方法を……!!!」
相棒の必殺技を破られたというのに、キバナは笑っていた。楽しくて楽しくてしょうがないと言いたげなその笑顔にダンデは本気で彼がバトルを楽しんでいる事が伝わって来た。そしてそれに応えるかのようにラビも服の袖をまくってZリングを露出させると、そこにZクリスタルを装着した。
「行くぞ友よ、命を燃やせ、全力でな!!!」
「ヴァアアアアアアアアッ!!!!」
喉を震わせ空気を裂くような雄叫びが上がる。それに応じるかのようにラビも互いに拳を腰だめにし、Zワザのポーズへと入った。装着したのはノーマルZ、だが唯のノーマルZではない。シルヴァディが守り続けた宝物、それから譲り受けた絆の象徴。
「人とポケモンが心を一つにして放つそのワザ、其方が産まれた意味、それを肯定し形とする究極の一、万物を超克したその先へと導くは……我らなり!!万物の創造主よ、ご照覧あれぇぃ!!!行くぞシルヴァディ!!」
「ヴァアアアッ!!!!」
Zクリスタルからのエネルギーを受けてその全身を煌めかせていくシルヴァディ、そのエネルギーを全身に受けてその身体が黄金へと変貌していく。その輝きは神々しく、神の化身が顕現したのかと錯覚させるような暖かく、優しい輝きだった。
「裁きの―――光ぃ!!!!」
「シィィィッルゥゥウヴァアアアアディィィイ!!!!
「迎え撃てジュラルドン!!キョダイゲンスイ!!!」
「ジュウウウラアアアアアアアアアア!!!!!!」
これが俺達最後のバトル!!その気迫から撃ち放たれたキョダイゲンスイは先程の比ではない膨大な物だった、ジュラルドンは知らず知らずのうちに重撃にして放っていた。壮絶な龍の嵐と光の矢のようになって突撃するシルヴァディ、その激突は瞬時に光となって天へ伸びて行った。天をも焦がすかのような……視界を焼き尽くす猛烈な光、観客が目を覆う中、ラビとキバナ、ユウリ、マスタード、ネズ、ダンデ、マサル、そしてダイゴはそれを見つめて素直に思った。なんで綺麗な光……その光が消え去った時、フィールドには天からの一筋の光が差し勝者を祝福していた。その勝者とは―――
「ヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」
『ジュラルドン、戦闘不能!!シルヴァディの勝ち!!BATTLE OVER!!ラビ選手の勝利となります!!』
『け、決着ぅぅぅぅぅぅぅっ!!!!白熱の準決勝を制したのはラビ選手だぁぁぁぁ!!!ですがこのバトルは間違いなく、ガラルのバトルの歴史に確実に刻まれた事でしょう!!私目頭が熱くなって堪りません!!もうこの気持ちを表現する為の言語化能力を持ち合わせていないので、取り敢えず泣きます!!なんて素晴らしいバトルだったのでしょうか、皆様惜しみない拍手をぉぉ!!!』
実況が言うまでもなく、全員が立ち上がって拍手をしていた。こんなバトルを見せられて感動しない者はいない。それを全員で表現されていた。その中心にいたキバナは静かに笑いながらもジュラルドンを労いつつボールへと戻す。
「よくやってくれたな相棒、オレ様達ももっともっと進化出来る事を証明してくれてありがとよ……頑張ろうぜジュラルドン」
その言葉にボールが震えた、お前もそのつもりなんだな……と思いながらもラビの元へと歩く。
「お疲れ様シルヴァディ、久しぶりにやったがいい光だったぜ」
「ヴァア~♪」
「疲れた~じゃねぇよってのしかかるな馬鹿お前重いんだ……てば!!ああもう、本当に成長しない奴だな……」
「負けたぜラビ、完敗だ。終わってみりゃ3対0の完敗だ」
だがそれでもキバナの表情に悔いはなかった、清々しい笑みを浮かべている。全てを出し切った末の敗北に後悔などはないと言わんばかりだ。
「だけど次は負けねぇぜ?今度はもっと準備をしてから挑ませて貰うぜ」
「何時でも相手になったるよ。だけど生憎俺は対ドラゴンは慣れっこでな、そういう意味合いだとダンデ以上に強敵だぜ?」
「おっ言ってくれるじゃねぇか、だったら確実に上行ってやらぁ」
「おうおう出来るもんならやってみろってんだい」
「あっ?」「おっ?」
バトルも終わった直後なのになぜかバチバチな空気になる二人だが、直ぐに二人のスマホロトムが周囲を飛び始めると何の打ち合わせもしていないのに同時にポーズを取って自撮りを行った。
「次はユウリか、勝てよ」
「負けるつもりで此処には来ないさ」
なんか厨二臭い?大丈夫、もっと痛いのがいるから。