『そうですね、端的に言えば今ガラル地方の評判はかなり下がっています』
「やっぱり?」
ワイルドエリアで引き続きキャンプ中のラビの元にオモダカからの連絡が来た。開口一番に随分と暴れましたね、と苦みを込めた笑いを浮かべられて若干イラっと来たラビを制しつつもオモダカはガラルの現状について語りだしている。
『貴方の配信というのは貴方の想像以上に力を持っているんですよ、それを自覚なさってくれると有難いんですがね』
「知りませんよ、俺は荒れない程度にやるだけです」
『じゃあ今回は大いに荒れましたのでご理解ください』
「ああやっぱり?」
露呈したガラル地方のトレーナーの意識の差、配信中に書き込まれたコメントによるガラル民と思われる戦術への批判と非難、そこからトレーナーへの誹謗中傷なども行われていた。ダイマックスを推し続けた影響が諸に出た事でトレーナーの戦術の雑さなどなど……様々な事が発覚してしまった上に所謂特定班?と呼ばれる人たちによってPWCS中に公開されているバトルから推定ガラル民と思われるトレーナーの戦術考察なども頻繁に行われるような流れが出来てしまった。
「あれま、そんな事になってたんですか」
「なんというか、ガラル民としてはお恥ずかしい限りです……」
『チャンピオンユウリ、貴方はそんな空気を換えようとした一人です。貴方は胸を張って自分を貫いてください、それが今のガラルを変革する為の一歩です』
ワイルドエリアに居ると分からないだろうが、現在ガラルは色んな意味で揺れまくっている。主にガラルリーグの運営委員会は大揺れ、ラビが前以てサポートをお願いしていなかったら大規模な人員整理やらが行われていた事だろう……。
『ガラル出身トレーナーに関する軽視というのもありますね』
「それは元々の実力の平均が低いだけの話では?つまりガラルリーグの怠慢です」
『……本当にあなたという人は……まあ実際そうなのがなんとも言えないのが……これを見てください、ポケモンリーグ本部とPWCS運営が纏めた各地方別にどれだけのトレーナーがどのランクに上がっているかというグラフです』
地方別に分けられたデータは残酷なまでに正確な物でユウリは思わずう~ん……と声を上げた。これは、ダンデに教えてあげた方が良いのだろうか……それともまだ言わない方が良いかな……と考えさせられてしまう。ガラル地方のハイパーランク昇格率が一番低い……それだけならいいのだがスーパーランクへの昇格も低めだ……。
『ガラルの人々の意志とは裏腹にデータとは正確な物です、ガラルのバトルの最大の売りは派手さと言えば聞こえはいいでしょうがそれだけを重視してきた結果です』
「……これ今すぐガラルにばら撒きません?」
『お止めなさい、如何して貴方は人々が頭を抱える事をやろうとするんですか』
「被害者だからです」
それは加害者を貶めたり攻撃していいという免罪符ではないのだが……まあ兎も角、これほどまでのデータが出ている以上、ポケモンリーグ本部としてもガラルリーグの改革に本気で取り組む理由にもなっている。
『それでラビさん、貴方は何時頃此方に戻られるので?』
「思った以上に長引いたのでさっさと帰りたいんですけど……PWCS運営が取ってくれた飛行機の都合もありますので最速で三日後ですね……ナンジャモさんには頭は下げてあります」
『こちらからも保護区周辺の警戒強化はお願いしていますのでご安心を』
などと言った事を話し終えると通話を切る事にした。思った以上にガラルの改革は大事になりそうだ……と思ったがそもそもの話が一地方のポケモンリーグやらバトル意識などの改革をするのだからそれが大事じゃない訳が無かったのであった。
「それでラビさんはこれから何をするんですか?」
「そうだな……ダイケンキ」
「ケン」
呼ばれたダイケンキ、ダイケンキで何かをするのだろうか?と思う一方でもう一匹ポケモンを準備しておく。それはフルバトルになった時の為に連れて来ていたポケモンの一匹、カバルドンである。先に雨と雪の実験をするつもりなので流石にこの段階で出すなんて事はしない。
「力業+変化技の実験だ。分かり易い所だと天候からだな……」
「あっ成程、雨が強くなったりとかですね」
「そゆことだ。ダイケンキは雨乞いに雪景色が使える、カバルドンは言わずもがなだが砂嵐に日本晴れも使えるからな、分かる所から調べていくのが合理的だ」
これで懸念しているのが力業で天候技を発動させた場合、どんな部分が強化されるのかという事。影分身が強化された事で調べようとは分かり易い天候系にしたのだが……それで思わず連想したのが、ゲンシカイキを行ったグラードンとカイオーガの特性だった。終わりの大地と始まりの海……それらが起こす天候である大日照りと大雨状態を引き起こすとなると……冗談抜きで注意喚起をしなければならなくなる。一応ユウリとサザレは補強しておいたテントの中へと避難させ、それを確認してから指示を飛ばす。
「んじゃまずは―――……ダイケンキ、力強く―――雨乞い!!」
「ケエエエエエエンッ!!!」
高らかに吠えるダイケンキ、その咆哮は天へと届いた。天への祈りが通じたかのごとく、あっという間に曇っていくのだが……明らかにその雲の色が可笑しい。灰色の雲などではなく……どす黒い雷雲が立ち込めており、既に雷が耳を劈くような音を立てている。
「これは……」
そんな言葉の直後に雨が降り始めた、通常の雨乞いではそこまで酷い雨ではない筈だが……これはかなり強い雨だ、風も強かったら確実に最悪な天候になる事間違いなしな大雨が降り始めた。しかも酷く荒れており雷がいつ落ちても可笑しくないような状態だ。
「……一応、ピカチュウ!!」
「ピカッ!!」
フルバトルに向けて連れて来た二匹目はピカチュウ、ピカチュウに頼んで雷を適当な場所に撃って貰うようにお願いしてみる。
「ピカッチュウウウウウウウウウウッ!!!!」
「うううわあっ!!?」
飛び出したピカチュウは跳躍すると天から自らに向けて雷を落とし、それで自らの電力を増幅させた雷を放ってみせた。その一撃は目を眩ませ、ラビを吹き飛ばしそうになる程の爆風をまき散らした。そしてターゲットにしていたと思われる岩は……木っ端みじんに吹き飛び、地面には雷で焼け焦げた跡が残されていた。
「……あれ、大雨って電気技を強力にする効果もあったっけ……?」