「はい、コーヒー淹れたよ」
「有難う御座いますサザレ姉さん。ラビさん、ずっと雨の中でいるなぁ……」
ポケモンバトルの最中でも耐えられるように補強が成されているテントの中で大粒の雨音を聞きながらもその中で指示を飛ばし続けているラビを見つめるサザレとユウリ。珈琲を啜ると思わず白い息が出てしまった。
「平気なのかなぁ……」
「大丈夫だと思うよ、聞いた事ない?トレーナーは自分が得意とするタイプ別に得意とする環境に違いが出てるってデータ」
「あっなんか聞いた事ある気がします」
炎タイプの使い手であるならば高い気温が得意だったり、電気タイプは乾燥した環境などといったように得意とするタイプによって得意とする環境があるというデータがある。そうなるとラビは雨が得意という事になるのだろうか。
「いやラビは雨嫌いだよ」
「関係なかった!?」
「あの人、仕事とプライベート分けられる人だからねぇ~」
ぶっちゃけ雨が降っている時の買い物なんて行きたくないレベルには雨は嫌いだが、それをバトルで言う馬鹿ではないという事である。だが、曰く雨の時は相棒が生き生きとするのでそれを活かせるようにしているだけとの事。というよりも日本晴れでも砂嵐でも雪でもそうすると答えている。
「ホントラビさんってポケモンが第一なんですね……」
「愛してるって公言する位だからねぇ」
そんな事を言いながらけらけらと笑っているサザレは悔しかったりしないのだろうか?と思わずユウリは思ってしまった、自分だってホップがポケモンにばかりかまけていると嫉妬してしまう時があるというのに。
「サザレ姉さんはラビさんがポケモンを愛してるって言って何とも思わないんです?」
「思わないよ、私だってポケモン好きだし一緒の好きでいられるって素敵な事じゃん」
「いやだからそういう事じゃなくて……」
「その分、私はもっとラビに愛して貰ってるから気にしてないよ」
少しだけ微笑みながらの言葉にお、大人だ……これが大人なのか……!?とユウリは衝撃を受ける。だがまあ確かにラビのポケモンへの愛情はそういう団体に属している過激な連中以上だと感じる時もある。ポケモンの為だけにあそこまで巨大な庭の管理をし続けているのは異常だと言われる事もある、それでいてバトルの時は極めて合理的なのも矛盾しているとも……
「それがラビだからね、人を愛するってその人の全てを愛する事だよ」
「愛って、深いなぁ……」
「ダイケンキ、どう思う」
「ケェエン、ケンンキダァァイキ」
「だな……こりゃ想像以上に慎重に立ち回る必要があるし……天候の専門家の意見も聞くべきだ」
力業で降らせた雨の中でダイケンキの動き、技の威力、スピード、環境の変化などを細かく観察したが……これはダイケンキの技量故の部分もあるが慎重に検討を重ねないといけないのが分かって来た。
「どう思う、ドータクン」
「ドォッ……」
急遽ナンジャモに連絡して寄越して貰ったポケモンの一体、ドータクン。トリックルームの始動役や相手の情報を集める為の壁として重宝しているポケモンで天候のスペシャリストでもある。ドータクンは力業で降らせた雨を興味深そうに見ている。
「ド~ド、タァアアアンクド~」
「ケン、キッダ……ケンッ」
「成程……こりゃ一度―――」
「おいラビお前こんな所で何やってんだ!?此処は突然の大雨で警報出てんだぞ!?早く街に入れ!!」
通訳を頼んでドータクンの言葉を仲介して貰っているとそこへ大きな傘を広げているキバナが走って来た。しかも如何やらここ一体は警報レベルの大雨という事になっているらしい。1時間当たり何ミリだっけ……確か30ミリだった気が……
「ああそうだ、キバナさんアンタ丁度良いから面貸せよインフルエンサー」
「んだよっていうかなんかオレ様の扱い雑だなおい!?」
「つまり、これはお前がやったって事か?しっかしポケモンの技で此処までの雨が降るとは……」
キバナ曰く、ワイルドエリア一部で突然降り始めた大雨は警報級の強さという事でワイルドエリア全域に注意喚起が成されている。キバナはナックルシティのジムリーダーとして調査にやって来たとの事。
「ネズさんが力業でブロッキングをやったろ?それから着想を得た力業変化技の実験調査中って訳で天候の専門家にも意見を求め集った所でアンタの登場は都合がいい」
「ホントお前、オレ様に対して雑になった……いや別に気にしねぇけどさ」
一先ずテントへとご招待されたキバナはユウリとサザレにも挨拶をしてから事情を聴き始めた。
「俺の主観ですしまだまだ調査はいるでしょうが……力業天候系は軽々と試していい領域じゃない、という事が分かった」
「そんなにか」
「俺もアンタからの話を聞いてそうなのかって思ったぐらいだよ、警報級の雨とは思わなかった」
試しにスマホロトムでお天気レーダーを呼び出して今の降雨量を調べて貰ったら、1時間当たりに56ミリという雨が降っている事になっている。しかも問題なのが雨のやむ気配が全く見えない事、雨乞いでの雨は短時間で止んでしまう、それなのに止む気配がない。第五世代辺りの天候を彷彿とさせる降りっぷりだ。
「まずこの降雨量、水ポケモンにとっては天国みたいな状態だが他のポケモンからしたら地獄だ、特に炎と地面と岩辺りはな」
「だがそれはポケモンバトルだと」
「ああ、自分に有利で相手に不利を押し付ける、戦術の基本中の基本だ。これだけじゃない、この雨によって得られる恩恵は幾つかある」
「だろうな、雨乞いだって幾つかの恩恵がある」
分かり易い所で言えば水タイプの技威力強化、炎技の威力半減と言った所だろう。
「まず、水技の威力が2倍になってた。炎技は恐らく半分から落ち込むだろうな」
「2倍……適応力並じゃねぇか」
「うっひゃ~凄い威力アップですね」
「それだけじゃない、この雨雲は明らかに雷雲だ。ピカチュウに雷を撃たせたが……雷の威力が上がってる、多分、1.5倍になってる上に恐らく確定命中のおまけつきだ」
「マジかよ……」
「何より……ダイケンキ、そろそろいいぞ」
「ケン」
そう指示を出すと途端に雨足が弱くなって来た、そして先程まで分厚く空を覆っていた雲が消えて行った。その光景は雨乞いを使うトレーナーからすると当たり前の物だが……ラビの言葉にキバナとユウリは顔を強張らせた。
「この雨はポケモンが技を解く、それか戦闘不能になるかにならない限り、永続的に振り続ける」
「……おいおいおい、そりゃ天候系特性ポケモンが目指す到達点だぞ」
天候の永続化、これが力業で天候系を使った際に起こる最大の事。ゲームのポケモンでも第五世代、BWまでは特性によって降らせた雨などは永続だった。だがこの世界では基本的に天候は永続ではない、日照りや雨降らしといった特性を持ったポケモンでも永続させる事は難しい。それこそ、長けているポケモンか、常に集中しなければできない。
「これはダイケンキがやったからなのかを調べていく必要がある、アンタにも手伝って欲しい。ガラルならワイルドエリアがあるから言い訳も付けやすいだろ」
「簡単に言うなよお前……まあやってやるけどよ」
「これ、他の天候ってどうなんです……?」
「考えたくねぇなぁ……」
他にもフィールドやらまきびしなどの設置系などの調査もしなければいけないと思うと本当に頭が痛い……というかなんか気分悪くなって来た……。
「まあいいや、適当にやろ」
「おまっそうやって軽々と……」
「今更ドタバタしたってしょうがねぇし、俺に出来るのはリーグ通じて力業で天候系を使う場合には最大限の注意とそれによって起きる被害を想定しろって注意喚起する位だ。それで何かやらかしてもそいつらの自業自得だ」
「ホントドライですねラビさん」
「だって本当に自業自得だし」
「サザレ、お前までラビみたいな事を……」
「あっ配信やろ」
「フリーダム過ぎんぞラビテメェ!!?」
「皆さんこんにちは、今日もポケモン育ててますか?まだまだな貴方もこれからの貴方も、此処をきっかけに一歩踏み出して行きましょう。本日のゲストは此方」
「よおっ元気か皆、ガラルのジムリーダーのオレ様キバナだぜ!!」
「どうも皆さん!!勝負いつでも全力でユウリに決めちゃおう!!ユウリです!!」
「本日はこのメンバーでいきます、そして今回ご紹介するのは此方」
「ド~タァ」
「ドータクンです」