「……♪」
「すいませんね昨日の残りで」
「いい、ご機嫌な朝食だった」
マスター帯に上がった翌日の朝食、夕食の残りのハンバーグカレーを出したのだがレッドには大変好評だったらしく、口元を緩めた笑みと機嫌が良さそうな雰囲気にラビは胸を撫で下ろしていた。と言ってもレッドとは旅をした仲なので自分がどえらい事でもやらかさない限りは怒らない事は分かっている。
「レッドが怒る時ってどんな時だよ」
「そうだな」
と、隣でまだカレーを食べているキバナが質問して来たので答える事にした。一緒に旅をしている時に一番レッドがキレたのは……
「ブルーさんとグリーンさんと合流して野宿した事あったんだけど、朝起きたらブルーさんが俺の寝袋に入って俺に抱き着いて寝てたんだよ。それで完全に思考停止してたらレッドさんが朝御飯……って入って来てその現場見られて、寝てるブルーさんの顔面にアイアンクローしながら……おい、面貸せ……って連れて行ったときかな」
「いいいいやあああああああああああああ私の黒歴史ぃぃぃぃぃぃっっ!!!!!???」
「あん時はビビったよな、朝起きたらレッドがマジギレしてブルー叩きのめしてるんだからな」
あの時ほど自分は純潔を奪われたのではと本気で顔を青くした事は無かった。そして、同時にブルーを襲ったのでは……と最悪の想像をして顔を土気色にした事はなく、そこをレッドに見られた時はもう……終わった……と殺される覚悟までしたが、レッドは冷静に昨晩ブルーが
『いやぁラビ君マジ私の好みドストライクでたまらんですたい、私が貰っちゃダメかな』
『グリーン、何言ってんだろこれ』
『俺様も分からねぇ』
『うぉいテメェら幼馴染が漸く恋人ゲットしそうな場面で何言ってくれてんの⁉』
というやり取りをしたのを思い出し、加えてラビの顔色がとんでもなく酷い事になっているのを確認した上で総合的に考えた結果……ブルーがラビの寝処に忍び込んだと理解し、幼馴染に対して初めてのガチギレを起こしたのだった。
「お願いだから忘れてください!!もう絶対にしませんから!!」
「いや当たり前だろ、何当然の事を誓ってんだよ」
「流石のオレ様もドン引き」
「いや俺はもう気にしてないって言ってるじゃないですか」
「被害者はそう言っても加害者の罪は消えない」
「マジすんませんでした!!!」
そんなマサラの三英傑とのコントもさておき、キバナと共に食器を洗っていると話を切り出された。
「お前も28位っていういい位置に着いた、お前の地位を狙ってくる奴も増えて来るぞ」
「やっぱり?」
「そりゃな、あそこの三英傑の内の二人は基本的に何処にいるか分からねぇし、内一人は基本ジムにこそいるが、基本的に街の顔役に徹しつつ後進の教育と新人トレーナー向けのセミナーとかで忙しくしてるから相手をして貰えない。だけどお前はパルデアに居を構えてるし、これまでバトルの申し込みを殆ど受けてるだろ、だったら明らかに狙われる。今回は32位までって触れ込みだ、お前なんて格好の的だ」
それは予想している。本選の地方に居て、場所も特定出来ていて、加えてその相手は自分からポケモンの事をベラベラと配信で垂れ流している。対戦相手からすればこれほどまでに美味しい相手はいないだろう。だからラビもかなりの人数が向かって来ると思ってきている、この順位を奪い取る為に……本来ならば8位までという遠き壁が32位まで拡大されているならば……自分でも取りに来る。
「まあやるだけさ、俺は」
「暢気な奴め」
「と言ってから1週間」
「だぁれも」
「挑んで」
「来ない」
「わねぇ……」
「平和だね」
キバナの予想を裏切るように、ラビの家に挑みにくるトレーナーは全くと言っていい程いなかった。来るのは仕事を持って来るアグや保護区の様子と密猟者の引き取りに来るジュンサーさん位でバトルの申し込みが全く来ない。
「サザレよぉ、お前なんか訳知り顔で茶啜ってるけど何か知ってんじゃねぇのか?」
「寧ろ知らなかったの?えっと、ほれこれ」
そう言ってサザレは自分のタブレットでとあるニュース記事を呼び出して突き付けて来た。そこには自分とメガペンドラー、そしてブルーとメガカメックスのバトルの様子が切り抜かれている記事があり、そこにはでかでかとこう書かれていた。
「マサラの三英傑、流麗なるブルー。イラストレーターのラビに敗北」「大波乱のPWCS、今大会の注目選手、ラビ選手とは」「流麗なるブルー、PWCS本選出場に赤信号」
先日行われたPWCSランクバトルにて行われた大注目の対戦カード、ランキング27位の流麗のブルー対ランキング35位、パルデア地方のラビの対決が行われた。ブルー氏はマサラの三英傑、流麗なるブルー、カントーの絶対女王と数々の名で呼ばれる超一流のトレーナーにして、ブリーダーとコーディネイターとしても名を馳せる人物、そんなブルー氏に対してパルデア地方のラビ氏はシンボラーで黄金パターンを持つピクシーを確実に排除すると続いてメガペンドラーでメガカメックス、そしてメガカメックスへと変身したメタモンを破り、最後の一匹を見せぬままの勝利を成し遂げた。
ラビ氏は現在再編成が行われる直前のガラル地方で行われたPWCSガラルトーナメントでも、哀愁のネズ氏、ガラル初のフロンティアブレーンとなったマサル氏、ガラルのトップジムリーダーのキバナ氏を下し、ガラルリーグチャンピオンであるユウリ氏とのバトルにも勝利する程の実力を見せつけており、今大会のマスターボールランクの増員にも繋がった大会参加者の増加にも貢献しており、ただのトレーナーとしての活躍には留まって居ない。今大会注目のダークホース、ライバルのオーバ氏とのリベンジマッチにも期待が高まる所。
「誰が赤アフロとライバルだふざけんな死んでもごめんだ」
「いやそこかよ、というかどんだけ嫌なんだよ」
記事の途中だがラビは思わずそんな事を言ってしまった。正直な所、こういう騒がれ方をするのは想定内だったので別に何とも思わないのだが……如何やらこの記事がかなりの効果を発揮しているのかラビを狙う挑戦者は少ないとサザレは見ている。
「私は買い出しに出るけどさ、そこで出場者の人を見るけどラビさんに挑戦する?無茶言うなよ……って話声も結構聞こえて来るの、ブルーさんに勝ったっていうのが相当に利いてるんだよ」
「なんかそういうと私がなんかいけないように聞こえるんですがそれは……」
此処では面白お姉さん的な立場に収まっているブルーだが、本業はブリーダーとコーディネイターであるにも関わらずPWCSでは本選出場の常連でレッドのライバルの一人としても有名なので、それが相当に効いてしまっているらしい。それにこのパルデア地方には本選出場を目指す他のトレーナー達もいるし、中には32位圏内の人も見かけるのでラビだけが選択肢ではなくなっているというのも大きい。
「実際、ブルーは今は30位だけどマスターズエイト圏内に入った事とか結構あるからな」
「それが効いてるってか?トレーナーだったら強い奴に挑むだろ」
「それが普通」
「いやそれはアンタらの理論だろ、本選出場者決定までもうそこまで日がある訳じゃ無いんだから、可能ならば戦う相手は選びたいと思っても可笑しくはないっしょ」
これは喜んでいいのか、それとも嘆くべきなのだろうか……最近漸くまともにイラストレーターとしての仕事が舞い込んで来て仕事に熱中出来ていたのだが……そんなカラクリがあったとは。
「まあ兎も角……配信でもするかな」
「あっじゃあ私リクエスト!!」
「却下、俺様のにしてくれ」
「うっす」
「ちょっと待って何で私のは即アウトでグリーンのはOKなの!?」
「皆さんこんにちは、今日もポケモン育ててますか?まだまだな貴方もこれからの貴方も、此処をきっかけに一歩踏み出して行きましょう。そして本日のゲストは此方」
「よっトキワジムジムリーダーのグリーン様だ」
「レッド」
「やっほいブルーちゃんよん☆」
「何がちゃんよん、だよいい歳して気持ち悪くて吐きそうだよ。こんなのベトベターだって避けて通る位にキモいぞ」
「おいグリーン今からちょっと付き合いなさいよバトルフィールドまで」
「……」
「おいレッドお前が行こうとすんな」
「あのいいですか、ゲストの皆さん方。え~っと今回紹介するのは此方」
「ピジョッ!!トオオオオオオオオオッ!!!」
「ピジョットさんです」