「……」
「ニャ、ンァァァァ……!!」
眼前のゴーゴートが放つ異様な迫力、前掻きするごとにそれが増している気がするのは気のせいだと思いたい。蹄の音と唸るような声が重なっているからこそ聞こえて来る錯覚だと信じたい……とマスカーニャとリコは同時に感じていた。
「如何したんだよリコおい、ガンガン行かねぇとメガ勝てねぇだろうが!!」
「元気になったと思ったらこれだよ、行った結果負けたのに何言ってんだか」
「負けてねぇ!!負けたのは俺であってヤミラミじゃねぇ!!」
「あ~はいはい」
復活したと思ったらこれだ、ヤミラミの強さを引き出してあげられなかった自分のせいだと言いたい事は取り敢えず分かったが……リコは甘いトレーナーじゃない、隙を探しているがその隙が無いのを理解しているしそれはマスカーニャも同じ。
「今突っ込んだら確実にやられる」
「はぁ?なんでだよ明らかに―――ッ……!!」
「分かった?」
「……今、攻撃のイメージしたら―――潰されてた」
身体を抱きしめる様にするウルト、ゴーゴートはラビがエリアゼロの探索にも連れて行くのを決めるようなガチメンバーの一体、その評価は決して忖度はされていない。
「来ないのか、なら此方から行こうか」
「来るよマスカーニャ!!」
「GOゴーゴート!!」
「ゴッ―――トゥッ!!!」
直後、ゴーゴートがまるで地面を破裂させるような勢いで地面をけり込み、その勢いで迫って来る。マスカーニャは冷静にそれを見ながらも回避するが、ゴーゴートはまるで急停止したかのようにその場で止まると再び此方へと迫った。
「ンニャ!?」
「マスカーニャ、草結び!!」
「ンニャアアア!!」
「捕まってやるなよ、飛び跳ねろ!!」
地面から勢いよく草が伸びて来るが、ゴーゴートはそれよりもずっと早くに地面を蹴って空中へと飛び上がった。そしてその背中に太陽を背負うとマスカーニャは思わず目を閉じてしまった。
「燕返し!!」
「ゴオオットゥ!!!」
「ンニャアアア……!!」
視界を閉ざしてしまった一瞬の隙に、抉るような角度の燕返しがクリティカルヒットする。空中に飛ばされるマスカーニャは空中で身体を捩って体勢を見事に立て直してみせた。
「良いよマスカーニャ!!そのまま、力強く―――トリックフラワーいっぱい!!」
「ンンンッニャ!!!」
そのまま空中で指を鳴らすとゴーゴートの視界いっぱいにトリックフラワーが展開された。力業トリックフラワー、一瞬で視界を埋め尽くしたトリックフラワーは一拍を置いて連鎖するように起爆してゴーゴートを包み込んでいく。フィールドを揺るがす程の大爆発が巻き起こる。
「うおおおっメガスゲぇ!!」
「やったっやっと成功したねマスカーニャ!!」
「ンンニャアアアウッ!!!」
「えっリコ初めて成功したの!?」
「うんっラビさん相手には無茶しないと!!」
その言葉にロイは参ったなぁ……と笑いつつも頭を搔いた。なんというか、本当にリコはラビさんの解像度が高いというか、相手を本当に理解してるなぁ……と思っているとトリックフラワーの爆発でまき散らされていた花粉が一気に流れていく、その中心地に居たのは―――無傷のゴーゴート、そして花粉を全て吸い込むと飲み込んでしまった。
「力業トリックフラワーをいっぱい?まぁたすげぇ事をやらかしてくれたなぁ……だけど残念無念だ、俺のゴーゴートの特性は草食で草タイプの技は効かない。トリックフラワーを使ったのは急所狙いって所だろうが……ダメージを無効化されちゃうならそもそもの意味が無いな」
「(トリックフラワーが使えない、それならもう巧業でのダメージも期待出来ない……いや待って、確か―――)マスカーニャ、まだ練習中だったけどもう一つあったよね技!!」
「ンニャァ?……ンニャ!!」
あっ確かに!!と言わんばかりに反応するマスカーニャ。これはまた来るな、と思いつつもゴーゴートと共に構えると、リコとマスカーニャの顔つきが一気によくなってくる。これは秘策があると見た。
「マスカーニャ、突っ込んで!!」
「ンンヤアア!!」
「さて、何を仕掛けて来るやら」
「力強く―――影分身!!!」
「「「「ンンニャアアア!!!」」」」
何とやって来たのは力業影分身、だが発展途上なのか本体を含めて4体しかいない。だがそれでも十分すぎる程の効果だ、周囲を完全に取り囲むとそのまま走り出して周囲を回り始める。
「そうやって困惑させる作戦かな」
「こうしますっ力強くそして鋭利に―――トリックフラワーいっぱい!!」
「「「「ンンナアアアアアアアウッ!!!!!」」」」
先程のトリックフラワーの4倍の量のトリックフラワー、更に巧業を掛け合わせてこれだけやれば特性も貫通するかもしれない、という事か?それはそれで面白い発想、そしてなんて恐ろしい事を考えるんだ……
「見せつけろ、鋭利に力強く―――リーフブレード!!!」
「ゴオオオオトオオオオッ!!!」
角にパワーを集めると巨大だが酷く細く鋭い剣を生み出し、それで眼前を覆いつくしていたトリックフラワーを全て切断してみせた。それらは爆発こそするが本来リコ達が狙っていた物よりずっと小規模な爆発。そしてその爆発すら斬ってみせるゴーゴートだが、マスカーニャが、いやっ居る!!
「踏み潰せ!!」「ゴオオオトオオオッ!!!」
「マスカーニャ、力強く―――辻斬り!!」
「ンンニャアアアアアウ!!!!」
貫手を作るとその先から悪タイプエネルギーが収束して鋭い刃が形成される。それを全力で振り抜いてゴーゴートの身体を切り裂こうとするのだが、力業を選択したが為に技の発生とスピードが落ちてしまい、先にゴーゴートの蹄がマスカーニャの頭部を捉えて、そのまま地面へと叩き伏せた。
「マ、マスカーニャ!!?」
「ン、ンンナァァァウ……」
「マスカーニャ戦闘不能、ゴーゴートの勝ちだな」
「メ、メガやべぇ……メガメガメガつぇぇ……」
「これが、ラビさんの実力……」
マスカーニャの元へと駆け寄ったリコはマスカーニャの様子を見る、ダメージは大きいが深くはない事に思わず胸を撫で下ろすが、その一方で自分がまだまだだという事を自覚する。
「ラビさん、私もっともっと強くなりたいです。だから、その……此処に居てもいいですか?」
「此処にか……それも悪くはないが……少年少女、ついでにウルトだったか?」
「お、応!!」
「お前らにいい所、個人的には良い所ではないんだが……ある場所に推薦してやるよ」
「ある、場所?」
「お前らも面識はあるだろ、ブライア先生の居る所、詰まる所俺の母校のブルーベリー学園だ」
規模で言えば彼方の方が圧倒的に上だし、あそこはあそこで色んな意味で競争率的な意味合いでも張り合いがあるだろう。弟もいる事だし連絡を取ってみよう。
「受け入れの許可が出るまではウチに居るといい、その間はバトルの相手はしてやる」
「い、良いんですか!?」
「但し、相手は多分選べねぇぞ?バ鴉の相手ばかりする事になるから覚悟しといた方がいいぞ」
「なんだよバカってひでぇ呼び方だな、そんな馬鹿がいるのかよ」
「ああいるぞ、ほらお前の後ろに」
「えっ」
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」
「ギャアアアアアアアなんだこいつぅぅ!!!?」
「あっ今逃げると」
「な、何で追って来るんだぁぁ!!?」
「ガアアアアアアアアアアッ!!!!」
「あ~あ……なあ、ウルト君っていつもああなの?」
「え、え~っと……」
「ひ、否定出来ない……」