「た、太古って……大昔ってこと、だよね……?」
「そう言う事、だけどあり得ないでしょ普通……」
「み、未来って……」
「それって、父ちゃんと母ちゃんが研究してた……完成したのか!!?」
『『ああ、その生涯をかけてね』』
唐突に告げられた真実に皆が驚愕する中で唯一、ラビだけが動揺する事もなく鋭い視線を作り続けていた。言葉の節々から感じられる不思議な違和感にペパーが眉を顰める中でラビの様子の変化に気づいた。
「な、なあラビさん……分かってたのか?未来と太古って奴を……」
「……ええ。伊達にイダイナキバとテツノワダチをゲットしてませんよ」
「でも、あり得んの?過去と未来ってのもそうだけど、タイムマシンなんてさ……」
「タイムマシンではありませんが、自然現象として時を越える現象そのものはあります。人間は神々の所業だと考えた現象を解明して来た、それを解明し科学で再現したと思えばタイムマシンだって実現できなくはないでしょう」
「えっ!?というか自然現象で時を越えるなんてことあり得るんですか!?」
「時空の歪みと言われる現象ですよ、極稀に空間と時間に亀裂が走ってしまい時空その物を越えるタイムホールというべき物が生まれる。その範囲内ではその時間軸や空間では有り得ないポケモンが出現した……そういう記録が残っています」
ナナカマド博士に連絡してヒスイ地方時代の事を調べて貰った結果、時空の歪みの前後で本来あり得る筈の無いポケモンの記録があったという。現在はその記録は信憑性が怪しいとして正式な物にされていないが……そこにはヒスイ地方の時代にポリゴンが出現したというのがあった。
「凄~い!!じゃあ博士たちはその時空の歪みみたいなタイムマシンを作ったって事ですね!?それじゃあ私達も未来とか過去に行ける!?」
『可能ではある』
『だが、人間ほどの質量になると帰って来ることが出来なくなってしまう』
「いや怖いし」
「……おい、父ちゃんと母ちゃんたちは……いやお前達は何のために俺達を呼んだんだ」
『ペパーそれは……可能であれば直接、話をさせてはくれないだろうか』
『実物とこれまでの事を照らし合わせながら話せばより理解出来る筈だ』
何処か距離を感じる親子の会話、無理もないだろうが……ロックを解除する間にペパーの肩を叩く。
「ラビさん」
「ペパーさん、貴方には貴方の事情があるのは承知しています。私にとっても親は煩わしい上にウザくてもっと大人になれと言いたくなるような存在ではあります……帰る度に年下の妹と弟が増えるとかマジで勘弁してほしいんですよ、いい加減にしろよ発情期って言ってやった事もあります」
「実感籠りまくっててヤバ」
「ま、まあ万年バカップルらしいし……」
親へいい感情を抱いていないのは同じではある、だが―――
「それでも、親にお前達と言わないで上げてください。少なくともあの二人は貴方と対話し、これまでの事を清算するつもりはあるように思えます」
「……仲直り、しろって言うのか?」
「いいえ違います。これまで言えなかったことを存分に言っておやりなさい、両親を巻き込んだ盛大な親子喧嘩をしなさい」
それを言われて思わずペパーは驚いた顔をした。それにはアオイ、ハルト、ネモも同じだったがボタンだけは納得したような声を出した。
「それ、言えてるかも。言いたい事は親でも言うべき、ウチも親父はクソウザいからいつも言ってやってる。スキンシップウザい、声でかくてウザい、変な呼び方してクソウザいからぶつけてやってる。言ってやると少しシュンとするし、気も楽になる」
「な、なんか可哀そうな気もしなくはないけど……」
「なんか、不憫だなボタちゃんの親父さん……」
「やーめーろー!!!兎に角っ!!ウチでも言えるんだからアンタでも言えるでしょ!!!あるんでしょ言ってやりたい事とか」
ボタンの言葉を受けてペパーは少し考え始めた、これまで家を留守にしたままでマフィティフとずっと一緒だったことを思い返していくと……沸々と何かが湧き上がってきた。
「なんか無性にムカついてきたぜ……よっしゃぁなら俺は、色んな事をぶちまけてやる!!そして、俺は決めたぞ、父ちゃんと母ちゃんの前でアオイ抱きしめて俺はこいつと付き合ってもう家には帰らねぇって言ってやる!!!」
「えええええええええええええっっ!!!!?」
突然のカミングアウトにアオイは顔を真っ赤にしてハイパーボイスを発した。
「おお~いいぞ~ペパー、なんだったら家に来たら良いんじゃね?母さんもきっと喜ぶし、アオイも嬉しいだろうし、俺も兄貴が出来て嬉しいな」
「兄貴!!?ちょっとハルト気が早い……!!?」
「おやおや、気が早いですか……ペパーさん、おめでとうございます。その時は言ってくださいね、お二人のイラストを描かせていただきますから」
「おっそりゃいいな!!俺がアオイをお姫様抱っこしてる所で頼むぜ!!」
「ちょっちょっとペパー何言って……!!!?」
完全に狼狽えているアオイを他所に周囲は完全に祝福モードになってしまい、ボタンは思っても居なかった事になったのでやっちまった……と言いたげな顔になり、ネモはおおっ~!!と素直に拍手を送っている。
「そ、それだったらボタンもウチにくればいいじゃない!!?ボタンだってどうせハルトとくっついてそのままゴールインするつもりなんでしょ!!!?」
「「ちょっおま!!!?」」
「おおっ!!?何だったら二人のお祝いの料理は俺が作るぞ!!」
「おいアオイ何言ってんだよ!!?」
「そ、そうだし!!」
「ボタンが困るでしょ!!?」「ハルトが困るじゃん!!?」
「「えっ?」」
「カップル成立です、おめでとうございます」
「わ~めでたいめでたい!!」
「「や~め~ろ~!!!??」」
エリアゼロの真実が明らかになった、筈なのに皆の顔に深刻さの文字もなく唯々賑やかで楽しげな雰囲気だけがそこにあった。
「いや~青春ですね、おじさんには好い加減にこの甘酸っぱさは辛いので早く次の観測ユニットへと行きましょうか」
「「「誰のせいだと思ってんですか!!?」」」
「ハハハッまあまあいい子ちゃんって事でいいじゃないですか」