「ワイルドゾーン?」
「今、ミアレシティだと街中にポケモン達が溢れ始めててな。それで人間との間に問題が起き始めてる、だからそれを回避しつつ共存する為に特殊なフィールドでポケモン達が溢れている地点自体を隔離するって処置らしい」
「なんだそりゃ」
概要を聞いてもいまいち理解出来ない、つまり―――街中に野生ポケモン達の暮らす空間が突如として発生しているという事になるのか?だがそれはそれでかなり問題がある、ポケモンが人間の事を考えてくれるとは限らない、特に野生のポケモンは我が強いタイプが多い。
「どちらにせよ、それはある程度のレベルで抑える必要があるだろうな……それは共存というよりも人間の縄張りを明け渡してるだけだ。此方も強気に出てポケモンに圧を掛けないと逆にミアレシティそのものが飲み込まれるぞ」
「俺もそう思う、理想としてはワイルドゾーンの数は少数に絞った上でそこを保護区的な公園のような場所にするのが良いと思ってる。だがミアレシティの行政側もなんでこんな事になっているかを把握していないからこその応急処置的な考えだ」
「それは同感だな……益々カロスに行きたくなくなったな」
取り敢えず暫くの間はカロスに行かない事を決めた。そんな所に自分が行ったら確実に面倒事に巻き込まれる可能性が高い。
「カルネさんが来るのはその関係かな」
「なんだあの人来るのか?くそ忙しい筈なのに」
「流石のカルネさんもPWCSは優先されるらしくて仕事を偏らせてなんとかしてるらしい、女優と言ってもカロスの象徴に負けさせるようなスケジュール与えたら叩かれるのは向こうだからな……責任逃れと言えなくはない」
「またお前は……そこは気分よく騙されておけばいいじゃねぇか、何で裏側の事情を察しちまうんだよ」
「そういう性分だからな」
ミアレの事情なんて知った事ではないが……事前に連絡をして来たカルネはその関係だろうか……人を一人預かってほしいという旨の話も貰っているが……また業の伝授だろうか、まあカルネは確りと連絡と此方の了承を得てからなので問題はない、
「ンでラビ、テメェ本選に向けての準備は終わってんのか?俺は特訓で最高の状態よ、後はパルデアでの慣らし運転をするだけだな」
オーバ曰く、業の特訓も終わったし力も業も万全に使える状態らしく、ベストメンバー全員の皆伝も無事に終了。これなら自分にも勝てるぞと胸を張って言える状態にまで持って来た、挑発的にお前は如何だよと尋ねて来るがラビはお茶を一口飲んでから一言。
「知らん」
「知らん!?自分の事なのに!!?」
「当日になってみねぇと分からねぇよンなの、戦うのは俺じゃなくてポケモン達だ。必要によってはダイケンキだろうと外す、だからこそ出たい奴は体調を万全にするよう言い含めてあるから、多分大丈夫だとは思うんだけどな」
デンジはその言葉に少しだけ驚いた、これは自分で言うならばレントラーやライチュウを外す決断をするという事に他ならない。これほどの大会では自分の相棒と挑むというのが一つの夢だったりステータスだったりするのにラビはそれらに全く執着しない。
「そこは出せよ」
「無理して出して良い事でもあるのか、それで怪我をして一生続く傷でも残すか、違うだろ。トレーナーの役目は全てが全てポケモンの意思を尊重するわけでもトレーナーの意志を突き通す事でもない。たとえその時は不条理だと恨まれたとしても、過去を振り返った時にあの時は残念だったよな、って笑えるようにする事だろ」
「相変わらずのポケコン具合だな……」
「勝手に言ってろ」
オーバとしてはラビの意見には全面的に賛成する所、ポケモンの事を優先していると言いながらも自分の意志を放棄している訳でもない。その時がくれば彼はトレーナーとして求められる事を平然と、極めて合理的に実行してしまう。ポケモンに恨まれたとしても、それがトレーナーの役目だと自分に言い聞かせて。
「……ラビ、君はトレーナーをどういう存在だと解釈している?」
「歩む者」
即答だった。考えるまでもないと言わんばかりの返答、詳しく聞いてみたいとデンジが尋ねた、どういう意味でだと。
「トレーナーはポケモンがいて初めてトレーナーになれる、ポケモン達の命と生涯を背負ってる。それに寄り添って共に生きる者、だけど時には道の先にデカい穴や障害がある筈、それを共に乗り越えたり、迂回、諦めて新しい道を歩むのも必要。それを一緒にやってやる事」
サトシもこういう存在だと思っている。サトシはピカチュウの意志を尊重したり、共に解決したりし続けて来た。アイアンテールを覚えたり、自身の進化形であるライチュウに勝つ為に戦術を練ったり、共にZワザを放ったり……時には喧嘩をしたり、そういう者こそがトレーナー足りえるという持論を持っている。ただサトシを神聖視しているだけと言われたらそれまでな気もしなくはないが……自分はそれでいいと思っている。
「だから俺は皆が望むならば出来る限り叶える。でなきゃ、こんな気性難どもを率いるなんて事は到底無理な事だ」
「それは俺も思うわ、なんだあいつら、特にルカリオ」
「あいつなんて可愛い方だぞ」
「あれで?」
「ルカリオ~赤アフロがお前の事バカにしてるぞ~」
「おいバカやめろ!!?」
デンジはオーバをおちょくっているラビを見ながら微笑んだ。本当に不思議なトレーナーだ。
「あっそうだラビ、なんか炎タイプの紹介やってくれ」
「なんて雑な振り……まあいいけど」
「やるんだ」
「皆さんこんにちは、今日もポケモン育ててますか?まだまだな貴方もこれからの貴方も、此処をきっかけに一歩踏み出して行きましょう。本日はゲスト付きです」
「よおっ元気か皆、ガラルのジムリーダーのオレ様キバナだぜ!!」
「よぉっ四天王のオーバ、今日は宜しくな」
「本日はこのメンバーでいきます、そして今回紹介するのは此方」
「ブゥウウウスタア!!」
「ブースターです」