「ピヒャ!!ヒャヒャヒャヒャッ!!!」
「このドーナツ美味しいです!!」
「良かったなラビ、高評価押して貰えてるぞ」
「それは良かった……」
美味しそうにデザートに拵えていた杏仁豆腐風のドーナツを食べているアンシャとフーパを見守っているラビとキバナだが、ラビは非常に頭が痛かった……プレシャスボールの時点でなんか、嫌な予感がしまくっていたのだが、そこから出て来たのは幻のポケモンであるフーパであった。
フーパとは身に着けている黄金のリングを用いて空間と空間を繋げる事が出来るというパルキアに喧嘩を売ってそうな能力を持っている。その能力を用いる事で大好きなお宝を集めるという習性があるのだが、問題なのはそのリングでその気になればキロ単位で巨大化させる事が可能で、宝が眠っている島や城を丸ごと自らの住処に移動させるという芸当も可能なのである。過去にフーパの力を利用しようとした組織がアジトごと住処らしき砂漠に転送させられ、肝を冷やした彼らが解散したという記録もある程だ。
「ピィヒャ!!」
「なんだお代わり御所望だとよラビ」
「フレンチクルーラーならあるけど……これ以上は夕飯が入らなくないか?」
「フ、フレンチクルーラー……ぅぅっでもお母様とのご飯……」
「じゃあフーパと一個を半分こしようか」
「おっナイスアイデアラビ」
しかし今のフーパは所謂、戒められしフーパの姿でそれだけの能力は恐らくはない。だがフーパ自身がその気になってしまえば何かを呼び出すこと自体は出来る、戒められし姿で出来ないのは自分がリングを通過して何処かに行く事。召喚が出来ない訳ではない……実際映画ではルギアにラティ兄妹、レックウザを呼び出しているのだから油断できない……この状態のフーパは悪戯好きなポケモン、何かの拍子にとんでもない物を出されたらたまったもんではない。
「はい、ラビさん特製クラウドフレンチクルーラーです」
「頂きます!!はわぁっ……クリームが、ふわふわで、お口の中が―――幸せでいっぱいですの♪」
「フパァッ……♪」
「……おいラビオレ様にも「ほい」あむっ!!いやうめぇなこれ!?」
キバナに餌付け染みたドーナッツのやり方を決めつつもラビは本当にいろんな意味で困ってしまった。カルネさんからのお願いを、娘さんがフーパを持っているからやっぱり無しで、なんて言えるわけもない……というか、こんなに嬉しそうな顔をしている子を今更追い返すという鬼の所業が出来る訳もない。
「アンシャちゃん、このフーパとはどこで?」
「(あむあむっ……んんっ~♪)んむっ!?」
「ああ、別に急がなくていいよ。はいミルク」
「(ゴクゴクッ……)プハァ……はい、えっとフーパとはお家のお庭で会いました。お庭でお花を見てたら私を屋根から見下ろして来たのでおやつの時間に招待したら、仲良くなって、あたくしのポケモンになってくださいってお願いしたら喜んでボールに入ってくれました」
「話だけ聞いたら、子供の頃に一度は経験ある奴だな」
「だな」
それだけを聞いたら極めて美しい幼少期の思い出の一ページと言えるような出会いだ。ラビだってそう思うけど……フーパというポケモンの力を知っているが故にこんな事を思ってしまうのだろうか……これはフーパを信用していないという事になり得るのだろうか。
「夕ご飯は何がいい?カルネさんの好きな物とか分かるかい?」
「お母様は、アンシャと一緒に作ったハンバーグが大好きです。一緒に作って、アンシャが形を作ったハンバーグを食べた時はいつもニコニコ笑顔です」
「おっいいじゃねぇかハンバーグ、オレ様も久しぶりに食いてぇな。ガラルでも食えなくもねぇんだけどどうしてもハンバーグカレーになっちまうことが多々あってな~」
「なんでガラルってあそこまでカレーキチが多いんだ?」
「キチってお前いや否定出来ん……確かあれはカレーメーカーがダンデをCMに出したあたりから徐々に人気が上がっていって、ある時になってから爆発的になった気が……」
「またダンデか」
本当にあの方向音痴はどれだけガラルの文化に深く食い込んでいるんだ……そりゃユウリがチャンピオンになったらいろいろと問題が起きる訳だ、ダンデが前提になってしまっているのだから。
「フーパもハンバーグでいいか」
「ピヒャ!!」
「よしそれじゃあ早速今から仕込みでもするか……折角だ、付け合わせにはポテトサラダだけじゃなくて色々と凝ってみるか」
「なんだよお前、自分が食う分には適当って言ってたじゃねぇか」
「アンシャちゃんとカルネさんにも出すんだぞ?客人がいるなら凝るさ」
「オレ様は?」
「短期間の居候」
「否定出来ねぇ」
そんなやり取りをしているとアンシャは笑った。フーパはそんな少女の頭に着地するように抱き着いて首を傾げた。楽しいの?と言いたげな問いかけるような声にアンシャは笑顔で答える。
「うん、楽しいです。あっそうだ、ラビさん、あたくしお家の探検もしたいですの!!」
「ああそうか、忘れそうだったわ……んじゃまずは庭から案内するな、ムーランド、お姫様を乗せてやってくれ」
「バァフ」
ムーランドは身体を沈みこませるように身体を下げると、アンシャはお礼を言いつつも何とかその背中に乗ろうとするのだが、ムーランドは簡単に1mを超える大きめなポケモンなので、子供が登ろうとしても一苦労。なのでラビがそっと手を引いてあげて背中まで導いてやる。
「さてと、ラビの家のワクワク探検ツアーにお越しいただきまして、本当に、本当に有難う御座います」
「馬鹿丁寧だなおい」
「お乗りになりましたムーランドはお家出発、ベランダ経由、お庭行き冒険ツアーだよ」
「いやそこでなんでタメ口なんだよ」
「それではムーランド、出発オーライ」
「バゥ、ム~ラン」
「わっ背中に乗るとおっきいのです!!」
「フパァッ!!ピィヒャ!!!」
アンシャはラビとキバナの軽快なやり取りに笑顔を浮かべつつもムーランドのモフモフな背中での視点が一気に上がった事に喜びフーパと一緒にキャッキャッと声を上げる。
「それでは、探検ツアー出発しま~す。尚、ツアーの案内役は私ラビが、ツッコミ役はキバナがお送りいたします」
「よし任せとけ……ってなんだよツッコミ役って!?」
「ほらツッコんだ」
「ハッオレ様としたことが⁉」
完全アドリブなのだが息がピッタリな二人にアンシャはワクワクとウキウキが同時に押し寄せながら庭探検ツアーへと出発するのであった。