「如何だラビ、オレ様実はカロスに行った事なくてよ」
「……と言っても俺も最近行ってないから何とも言えないけど……俺の知ってる感じのミアレって印象もあるけどちょっと違う感じもしてる」
「あたくしもなのです。知ってると思う所と違うって思う所が混ざってるのです」
推定ミアレシティに到達して真っ先に思ったのは、ラビの知っているものと違い、アンシャが知っているミアレとも違うという点だった。ラビもラビでカロスに行ったのは数年も前だからそこまで鮮明に覚えているという訳でもないが……これは違うと違和感を覚える程度には違いがある。
「ラビとアンシャ嬢ちゃんの認識が混ざってる、って事か?」
「多分……記憶か深層意識内にあるそれらが反映されてると思う……確かミアレシティだと今プリズムタワーって立ち入り出来なくなってるんだよね」
「はい、確か……古くなってきたから直すためにも工事をするってお母様言ってました」
そうなると此処に入った人間の意識に干渉、というよりも記憶などを読みとって形を変える空間と認識した方が良さそうだ。そうなると自分の家だけがやたら鮮明になったのも分かる。二人の記憶と家主の物が合わさればそりゃ鮮明にもなる、あと妙にドーナツが置いてあったのは多分アンシャの記憶由来だろう。
「って事は、ナックルシティもそんな感じなのかもしれねぇって事か?」
「まあナックルシティは俺も最近行ってるからそこまでの相違はないと思うが……問題はこの空間からどうやって脱出するかって事だな……流石に入口が一方通行です、なんて戯けた事は無いと思うんだが……」
「フーパにお願いしてみるです?」
「ピィヒャ!!」
「なんか、タワーを指さしてんのか?」
フーパにお願いすれば帰れなくもないだろうが、とにかく今は帰りたくはないと言いたげな様子で兎に角タワーに行ってみようと言いたげだ。一先ず、それに従って歩みを進めていくしかないだろうな……と歩いていると
「ラビさんラビさん、あのポケモンさんはなんていうのです?」
アンシャがラビの袖を引っ張って尋ねて来た、その先には……
「ありゃぁ……セグレイブか?いやだけどあれは―――……」
そこにいたのはセグレイブ……だが明らかに様子が可笑しい。元々武器として使っていた背びれの刃が更に巨大化し、最早薙刀というより大剣のようになっているし瞳も赤くなっている。それはゆっくりと鎌首を擡げる様に此方を認識すると腰を落として唸り声を上げ始めた。
「まずい、こりゃ避けられねぇぞ……」
「ムーランド、アンシャちゃんの安全を最優先!!いざという時は俺を見捨てて逃げろ!! 良いな!?」
「バウッフッ!!」
ムーランドはゆっくりと数歩下がって安全圏を確保しつつもいつでも逃げられるようにしている。アンシャは如何してとも思いつつ、その考えに至った意味を理解した。セグレイブというポケモンの瞳は明らかに此方に攻撃をする気満々というもの、自分の力を試したいというもので溢れていた、いきなり攻撃してこないのはラビとキバナに敬意を払っているから。
「ムーランド、如何してラビさんの指示を、そんなに素直に……」
アンシャからすれば信じられない指示だ、トレーナーが自分を無視して逃げても良いという言葉を言い放ち、ポケモンはそれを咀嚼して飲み込んでいる。そんな事言われたら普通は躊躇したり、反論したりするはずなのに……ムーランドとラビの間には自分では想像出来ないほど強固な絆と時間があったのだというのが分かる。
「さてとトリデプス、仕事の時間だぜ」
「ップサァ」
「んじゃ俺様は、行くぜ相棒!!!」「……ジュラアアアアアアアアアスッ!!!」
トリデプスの隣に繰り出されたのはジュラルドンではなくブリジュラス。長年キバナの相棒として定着していた程のジュラルドン、遂に進化してブリジュラスへとなったのである。
「遂に進化させたのか」
「ああ、お前に負けた後にな。特性は持久力だったぜ」
「そっちか、頑丈の可能性もあった筈だけど」
だがまあこれはこれで悪くはない。超防御のトリデプスと持久力を活用すればボディプレスと特殊技の両刀の両立も容易いブリジュラスというのはこの状況としては有難い物がある。
「ンでラビ、あのセグレイブ……多分だがメガシンカしてるじゃねぇか」
「ああ、カロスじゃ暴走メガシンカってのがあるらしいからな。それが起きてると思えば……此処になんでセグレイブがいるんだって事は置いておく必要があるけどな」
そう、このセグレイブはメガシンカしているメガセグレイブ。ラビも完全初見のメガシンカには最大限の警戒と注意を払わなければならない。
「どういうメガシンカだと思う」
「メガシンカには幾つかパターンがある。一つは自分の足りない部分を伸ばすタイプ、二つ目は長所を伸ばすタイプ、三つめは満遍なく伸ばしていくタイプ、四つ目が特性が本体であるパターン」
「一番やべぇのは」
「長所が伸びてる奴と特性、メガガルーラなんて見てみろ」
「だよなぁ……」
分かり易い所としてはヘラクロスだろうか、あれは攻撃と防御が一気に伸びてとんでもない事になる。そして特性は言うまでもないだろう、メガガルーラ並のぶっ壊れ特性が誕生したら洒落にならない事になる。だが、注目するのはあの背びれ……となると攻撃強化が中心で防御や特防も上がっているパターンが一番ベター……特性の見極めは流石に無理だ、あれは攻撃なんかをして判断を重ねていくしかない。
「セッ・・・・・・グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアウアアァン!!!!」
「ひゅう~迫力のある咆哮上げてくれるじゃねぇかよ!!こっちも気合入れて行こうじゃねぇかブリジュラス!!ラビもいるんだ気の抜けたバトルじゃするんじゃねぇぞ!!」
「ジュラアアアスッ!!」
「キバナ一言言っとくぞ、野生だと俺達も攻撃の対象になるから気を付けろよ。特に氷は攻撃範囲が広い」
「ゲッそう言えばそうか……ったく運動はしとくべきだなやっぱり」
「トリデプス、正面から押しつぶすぞ!!」
「リデェェェッス……!!」