「ギャアアアアアアアアアスッ!!!」
一度翼を軽く羽ばたかせただけで民家を吹き飛ばす力を持ち、羽ばたくと40日嵐が続くと言われているポケモンが敵意と悪意を持って翼を羽ばたかせれば一度で雨雲を呼び、二度で大雨を呼び、三度で嵐を呼ぶ。一瞬で周囲は猛烈な雨に包まれて、雷も天を走る最悪の天気となり果てていく。
「素早く―――チャージビーム!!同じく剣の舞!!」
「ボララアアアアンッ!!!」
「ケエエエンンキ!!!」
チャージビームが放たれてルギアへと直撃するが、全くダメージを受けている様子がない。流石にルギアともなると種族値もエグいか……と思っているとルギアは一気に潜水していった。ダイビングか?とも思ったが、直後にその身に竜巻のように水を纏ったまま浮上して体当たりしてきた。
「ダイケンキ、鋭利に―――シェルブレード!!!シンボラーは追い風!!」
海から顔を覗かせた巨大な蛇のように身体をくねらせながらも迫って来るルギア、それを一切恐れる事もなく真っ向から向かって行くダイケンキ。そしてそれを後押しするように追い風がスピードを上げていく。そして真っ直ぐに此方を飲み込まんと迫ってきたその時こそシェルブレードにパワーを集中させた。
「ケエエエエンキヤァァァァァ!!!!」
振われた一撃は膨大な量の水を丸ごと取り込んだ竜巻を一息に両断し、その奥に潜んでいたルギアにも当ててみせた。
「ギャアアアアアッ!!!」
「見えたっ!!力強く―――悪の波動!!!」
水の竜巻が避けたその先に見えるルギア目掛けて発射される悪の波動、それは確かにルギアの頭部を捉えて完全に水の竜巻から弾き飛ばした。頭を振っているのは怯んだ証拠、その隙に更に剣の舞と瞑想を指示しておく。
「ギャアアアッ……ギアガアアアアアアアアアアア!!!!」
一段と激しく振るわれた翼と咆哮と共に放たれたのは、闇の旋風というダーク・ルギアの異名そのものを象徴しているような技だった。その一撃はダイケンキ、シンボラーだけではなくラビにも襲い掛かり、その身体を切り裂き、皮膚、いや肉から血が流れだし始めている。
「ボ、ボラァァ……」
「シンボラーよくやった、戻れ!!」
ダークポケモンにはダークポケモンの技が存在する。ダーク技は通常のポケモンに向けて放たれると問答無用で効果抜群になるという性質を持っており、シンボラーは飛んでいるが故にそのダメージを色濃く受ける事となってしまった。素早く戻しながらも今度はポリゴンZを繰り出す。
『ラビ、ダークポケモンの攻略法見つけた』
『えっもう?』
『パイラタウンについてまだ数戦しかしてない筈だけど……』
『聞かせてくれ』
『奴らは技を放つ寸前に溜めがある、ソーラービーム的な溜めじゃないけど溜めてる。それに合わせて攻撃するとダーク技のエネルギーが全て自分に跳ね返る、だから先手先手を打てばいい』
『『それ出来るのアンタだけだ』』
『成程、分かった』
『『分かった人もう一人いたよ!!?』』
正直言ってあれを実践しようとしても実践できてなかった、偶然出来たのはあったのだが意図的に出すのは全く出来なかった。なんでレッド達は平然とあれをやってのけたんだ……と思うが、今はそれをやるしかない。
『ラビ、早く決着を付けなくては……私たちが入って来た空間が少し小さくなって来た。フーパ殿のエネルギーが減ってきているのかもしれん』
「くそ、もう時間切れか……分かった、ポリゴンZ、お前が要だ」
「リリリリリリィンッ」
「デオキシス、皆をシャドーで抱える準備!!」
『もう出来ている』
「ナイスだ、んじゃ行きますか!!!」
そういうとラビはテラスタルオーブを取り出した。
「染め上げろ、自らを、世界をっポリゴンッ―――ゼエエエエトッ!!!」
「リイイイイイイインッ!!!!」
ノーマルテラスタルを発現させたポリゴンZ、それを見てダイケンキもすぐに狙いを理解して力を集中させ始めた。ダーク・ルギアはそのまま更なる力を溜め始めた、先程のがダークストーム、だとすると次来るのはレッドも驚いていたダークブラスト、エアロブラストのダークポケモン版だ。ダークストームでこの威力だとしたら……絶対に受ける訳にはいかない。
「ギャァアァァァッ……!」
エネルギーを収束させ始めた、まだだ、まだ違う……。
「素早く―――悪巧み!!」
此方も力を蓄える、それと同時にデオキシスがアシマリとラルトスを抱え、オーガポンを肩に乗せた分身体達を傍に置いた。此方も実行されたら速攻で出発する。
「ギャァアァァァッ……!!」
エネルギーが更に高まってきている、海もその余波で更に荒れ始めてきている。これは―――本当にやばいエネルギー、だがピンチはチャンスに変えられるポイントだ、此処まで来てしまったらもう自分の狙い通りに行くように全力を尽くすしかない。更に悪巧みを早業で指示を出す。
「ギャァアァァァッ……!!!」
「来るぞ、覚悟決めろよテメェら!!!」
「ギグギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアスッ!!!!!!」
収束したエネルギーを瞬間的に開放し、暴発寸前のそれを此方へと発射する寸前のほんの一瞬の時の切れ目、その瞬間が―――来た!!
「今だっ!!!ポリゴンZ、素早く―――破壊光線っ発射ぁぁ!!!」
「リイイイイインッ!!!!」
刹那、世界の色を塗り潰したかと思う程の閃光がポリゴンZから放たれた。適応力ノーマルテラスタルで放たれる破壊光線を早業で撃ち出してダークブラストが発射される刹那に発射、破壊光線は発射寸前のダークブラストに誘爆したのかダーク・ルギアを飲み込むほどの大爆発を巻き起こした。巨大な火球と化したダーク・ルギアはそのまま全てを呪うような咆哮を上げながらも海中へと没していった。
「―――今だ今!!いけいけいけっ!!!みんな戻れ!!」
ダイケンキとポリゴンZを素早く戻しながらもラビはデオキシスに指示を出して元居た場所へと向かった。アシマリとラルトスは大丈夫そうだ、ダーク・ルギアはあの位じゃ倒せない、本当に時間稼ぎしかならないが、今はこれでいいのだと思っていると先程まであった空間が海に飲み込まれていた。ルギアが暴れた影響で海が更に大きくなっていたのだ。
「くそダメか!?」
「ぽんに!!ぽおおにおおおおおおんっ!!!!!」
デオキシス・シャドーから勢いよく飛び出したオーガポンは力任せに力業蔦棍棒で海をぶっ叩いた。すると海は大きくクレータ―のように抉られ、自分達が入って来た空間が見えた。
「ナイスだオーガポン!!!デオキシス、サイコキネシスで跳ね上がった水を!!」
『分かった!!』
跳ね上がった海が戻らないようにデオキシスがサイコキネシスで固定している間にそこへとシャドーたちが入っていく、オーガポンが入った所で遠くの海から爆音が響いた。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアスッ!!!!」
怒り狂ったダーク・ルギアが咆哮を上げながらも再び海中から姿を現しながらも此方へと迫って来ていた。最早ダークポケモンとは畏れ多くも言えない程の怒気と殺意、最早邪神のような風格を纏っていたそれにラビは寒気を覚えた。
「来やがった、デオキシス!!」
『捕まっていろ!!!』
デオキシスはラビを胸に抱いたまま、その姿を鋭角な物へと変貌させて抵抗を軽減させ、高速でその異空間へと突入した。此処までくればと思ったが―――
「ギャアアアアアアアアアアアアッ!!!!!」
ダーク・ルギアは執拗に自分達を捉えようと異空間にまで入り込もうと頭を突っ込み、無理矢理空間を広げながらも迫ってこようとしている。とんでもない執念だと思いながらも空間を突破して、自分の庭へと戻って来た所でフーパはリングを空間から外すと空間は一気に縮小して閉じた。最後にルギアの咆哮を木霊させながら……空間の歪みは消えさった。
「―――……か、帰ってこれたぁ……」
『やれやれ……寿命が縮むとはこういう事か……』
そこには達成感というよりも絶対的な恐怖から逃げ延びたという安堵と圧倒的な疲労感が身体を蝕んでいた。まさかこんなことになるなんて……と思いながらも視線を動かせば
「きゅうううんぬ、きゅううううんん……!!」
「しゃまっ!!しゃあまままあしゃぁま!!」
「ラッグァ……ラァグッ……!!」
「ル~……ララルル~!!!」
「サナァァァ……サナ……」
「レイドゥ!!レルエルレィィドッ」
我が子を抱きしめて涙を流しながらも安堵している彼らを見れば……報われた気分にもなるという物だ……選抜したポケモン達をボールから出しながらも皆を労う。
「お疲れ皆……いやぁ……疲れたな」
「ペド」
俺何もやってねぇんだけど……と言わんばかりのペンドラーの何処か複雑そうな顔を見て、ラビは思わず笑いながらも大慌てでやって来るタブンネとハピナスとラッキーの医療班の姿に一言だけ呟いた。
「……疲れたぁ……」