「……ひっでぇ目覚めだよ全く畜生が」
昨日の取材が終わった直後に遭遇したトレーナーに申し込まれたバトル、しかも相手はPWCSランキング32位のネモだった。最下位だと馬鹿にする者もいるが、ギリギリの滑り込みセーフだとしてもそれを成す為には実力がいるし運だっている、彼女は自分でそれを引きつけたのだというのが、私でも分かったしあの実力は並の物じゃない……3対3のバトルで、メガジュペッタまで切ったというのに負けてしまった。あと一歩だったのに……いやあと一歩で道連れが成功したとしても1対0で私の完敗が揺らぐ事は無かったか……。
「だからって原稿無視して対策に乗り出すとか……何考えてるのよ私は……」
若い時はオカルトマニアだったし本気で相手を呪い殺そうとしたことも幾度もあった、だからこそゴーストタイプのポケモン達とは気が合ったし、若い時なんてそれでポケモンリーグでもベスト8に行った事だってある……まあそれが仇となってもうバトルしない筈の相手のガチ対策を考えようとして折角の時間を無駄遣いしたのだけど……。
「……はぁ、いいや取り敢えずこれは送って、先に原稿にして貰お……」
音声データと手帳に書いたものをロトムにスキャンして貰ってメールで送信。今日は如何しよう……この出張はPWCS本選が終わるまでだから数か月の時間がある、旅行のつもりで楽しんできてと言われたが……いざそう言われると如何しようか悩むのも私なのだ。どうしよう……。
「取り敢えず街に繰り出してみたが……見事にPWCS一色だな……」
そりゃ本選会場なのだからその色になるのは解るのだが……初開催という事もあって気合が入っているのも分かる。トレーナー応援ペナントにキーホルダー、なりきりグッズやら沢山ある。パルデアの景気が此処数十年有り得ない程の超好景気を迎えているというPWCSバブルというのは聞いた事があるが、此処までとは……逆に此処まで来るとPWCSが終わった後は大丈夫なのか?思ってしまう。
「あっこれ……」
思わず手に取ったのはパチリスの人形だ、子供の頃、シンオウ地方の旅行に行った時に強請って買って貰ったっけ……よく抱いて寝てたなぁと懐かしさに浸っていると値札には値段と商品名が、まあパチリス人形だと思ったのだが―――……そこには
「ラビのパチリスさん人形……?」
ああそういえばあったな、トレーナーのポケモンの人形の○○のポケモンシリーズ。ポケモントレーナーの象徴と言えばやはりポケモンだ。そのポケモンを人形にしたりフィギュアにしたりはよくある事だが……なんでパチリス?と思っていたら
「ブフォッ……www」
その隣にはやたら姿勢よく、しかも胸を張っているように見えるようなポーズのメガスターミーがあった。そしてこれも……ラビのメガスターミーと書かれていた。そういえばパルデアでは今大ブーム中なんだっけ……他地方にも勿論進出しており、自分もあの配信は大爆笑させて貰った。
「……あれ、他にはないんだ」
ラビさんと言えばダイケンキを相棒だと公言しているし、最強だって言っているのにぬいぐるみは意外にないのか……あるのはアーマーガアにアシレーヌ……なんというか色んな意味で存在感を発揮しまくってる連中が基本的に優先されている感じなんだろうか。
「そうなんだよな~会社も分かってねぇよな、此処はダイケンキを出す所だろ」
「私もそう思うけど、ダイケンキは相棒だけあって中々出さないからね……」
「でも強い」
「いやだからそれと人気が直結するわけじゃないっての」
「やあやっぱり―――って……!?ッ~!!?」
「おっお前良いな、俺達的にポイント高い」
そんな風に言い出しているのは変装をしているグリーン、ブルー、レッド、あのマサラの三英傑であったのだ。思わず声を出しそうになったのを抑え込んだのは我ながら本当に良くやったと褒めてやりたい。グリーンに言われて、深呼吸をしつつも何とか平静を取り戻した。
「ど、どうしたんですかお三方……?」
「いやよ、俺達もそういえばパルデア土産とか全然買ってないしこの辺り詳しくねぇなって思って顔出したんだけど……なんかこう来るものがねぇな、と思ったらこの前のインタビューでいい記事書いてた記者がいるんじゃねぇかと思ってよ」
「中々良く書けてた、面白かった」
「ほら、このムッツリンも評価する位には良い記事だったのよ?」
そう言われると思わず照れてしまう……といかんいかん、つい取材を申し込みそうになってしまった……事前の申し込みもせずにそんな事をするのはNG、確りと許可を取ってからしなければ……と思っていたらブルーが何やら意味知りな顔をし始めた。
「ねぇ二人とも、取材したいみたいだけどいいわよね?」
「あんっ?土産どうすんだ?」
「良いじゃない別にこれから帰る訳じゃないんだし、どうせ買うのはもっと後よ。有名税って奴よ。それにどうせ取材されるなら礼儀をわきまえてる相手にして欲しいじゃない」
「……それはそう、分かった、良いよ」
「……まあレッドが良いなら俺も良いけどよ、どうせだ、なんか飯でも買ってきて俺達の宿でやろうぜ。ラビの所が一番いいけど、今あそこはカルネとその娘さんがいんだろ?親子の時間邪魔すんのは野暮だからよ」
な、なんでこうなったんだ……?私は買い物に付き合って材料を買い込むと、お三方がシェアで拠点にしている賃貸の一軒家に案内された。でも私の家よりずっと大きかったです。そしてそこでブルーさんの料理が振舞われた筈、だったのだが……ブルーさんは料理の当たり外れが大きいので、二人から全力で止められ、ブルーさんは今日は行けるから大丈夫!!と言っていたけど、ダメでした。だから私が代わりに作ったら凄い感謝された……なんで一緒の拠点にしたんだろ……その後、ご飯を食べている時にレッドさんがメガシンカの匂いがするやら、カイリューがいるね、とか色々言い当てられるという経験をする羽目になった。
「レッドさんって何なんです?」
「色んな意味でバトルに特化しまくってるチャンピオンだな」
「無敵のあほで朴念仁で女泣かせの人誑しで無表情無口の鉄仮面ね」
「……ちょっと待ってて」
「しまった言い過ぎた!!?いいいやあああああ!!!??」
「気にしないでくれ、いつもの事だ」
「ええ~……」
ブルーさんってこんな残念な感じだったの……?それはそれで親近感あるけどなんか複雑……。