「……う~ん……」
パソコンには私が行った取材を掲載した記事がある、基本的にウチはやりたい事を貫くというモットーがあるので記事に余程の問題がない限りは変更はされないし、されるとしても誤字脱字を直す程度だ。だが……
「此処までの評価されるとなんというか、嬉しさを通り越して呆れすら出て来る……他の記者って何をやってる訳?」
そこにはシンオウだけではなくマサラの三英傑のインタビュー記事もある。自分としては出来る限りの事を尽くしたのだが……如何やら他社では此処まで三英傑が饒舌に話してくれるという事はない、というよりも、レッドさんのコメントを取れていない。あの人の無口で無表情な鉄仮面具合は有名だ。だからこそコメントを取れている事が凄いというコメントが多く付いた。
「というか、私個人のコメント荒れてんなぁ……」
恐らく同業であろう人からのコメントが特に酷い、三英傑を貶めているやら馬鹿にしているなどといった物が散見される。神格化が過ぎる、なんで『私としてはお三方は特別な人などではなく、私達と同じでただ毎日の成長に一喜一憂にバトルを本気で楽しんでいる人達だった。ただ、その数が私より多いだけ』というコメントが此処まで荒れるのか……。
「まあ気持ちは解るんだよなぁ……」
ポケモンと密接に生活する私たちにとってポケモントレーナーとは憧れの物として見られることが多い。一般の人でもポケモンを持つことが出来るが、トレーナーでもない限りは一匹だけ、そして管理出来るのは三匹辺りだと言われている。その枠を取り払えるトレーナーは頼りにされる、ジムリーダーともなれば街の顔役で何かあれば即座に相談を持ち掛けられる。その極致ともいえる人達が信仰にも近い神格化されるのはある種当然。そんな人達を自分達と同じだという事は侮辱だと、言いたくなるのは解る気がする……。
「でも、あんな顔をする人達が私達と違うなんて思えない」
言いたい奴には言わせておけばいいんだ、どうせ顔も素性も分からないコメント上でしかイキれない弱い人間の感想をいちいち気にする方が可笑しいんだ。でも、折角だから……。
「それが如何した!!それで終わりですね私だったら」
「ですよね~」
以前インタビューした時に連絡先を交換していたユウリの元を訪ねてみた。ポケモントレーナーの意見を直接聞いてみたくなったのでいいかな、と聞いてみたら良いですよ!!と二つ返事が来た。既にパルデア入りしているらしいので、宿泊先を訪ねたのだ。
「私的にはこの記事好きですしレッドさんと同じだってのは良い言葉だと思いますよ、寧ろレッドさん達はそういう事を望んでいる可能性があります。音声を聞く限り、お三方はラシーマさんの取材には凄いリラックスして受け答えしてますし……これが演技だとしたらとんでもない演技派ね。ただ強さでしか計れないランキングを絶対視して何がしたいんだが……それだったら0から上げたラビさんの快進撃とかどう思ってんですかね」
ユウリはチャンピオンとしての視線を持ち合わせながらも一人の少女としても意見を述べていく。その意見は私が求めていた物を次々と答えてくれるので正直気分が良くなった。
「強さだけを絶対視して当人の人格や信条は全無視……気にする事はありません、その価値すらありません、ラビさんに聞いてたみたらどうです?あの人だったら多分配信中でもお構いなしにそういう事をぶっちゃけますよ」
ガラルのリーグトーナメントの場で本当にそれをやったから否定出来ない……というか平然とやるだろうなぁ……あの人なら。
「おっユウリなんだお客さんか?」
「……お客さん?」
「あっお帰りなさいお二人とも、調子どうです?」
「ああ、絶好調だ。だけど―――オニオンに負けそうだった!!」
「あと少し、だったんだけどなぁ……」
ダ、ダンデさんにオニオン君……って、オニオンがダンデをあと一歩で負かしそうだった!?なにそれどういう事!?と思っているとオニオン君の背後から何やら女の子が出て来て此方を見てきた。
「あはっどうしたんこの人、何何々ユウリ何読んでんの~?」
「ああ、このラシーマさんっていう人は記者さんで、その記者さんが書いた記事だよ」
「何それウチも読む~!!」
「おっ俺も読みたいな、しかもマサラの三英傑のインタビュー記事か!!是非読みたいな」
「……出来れば、僕も」
「モチ、オニっちもみるし」
その女の子はあっという間にダンデさんとオニオン君を巻き込んで記事を読み始めた。しかもダンデの膝の上にその女の子、その膝の上にオニオン君という休日のお父さんと子供スタイルで……。
「あ、あのユウリちゃん、あの子って……」
「ラビさんの妹さんのロルちゃんです、オニオン君の彼女ですよ」
「―――えっ彼女!!?」
「あっこれオフレコでお願いしますね」
「アッハイ勿論」
話を聞いてみると以前、ブルベリ学園にゲストとして呼ばれた時から交流があり、その時に意気投合して友人になり、今ではお互いを信頼しまくっている彼氏彼女になっているらしい。因みにラビにもまだ話していないらしく、オニオンはこの本選で結果を出し、その成果を持ってラビに挨拶に行くつもりとの事……いやラビさんはあくまで長男だよね、ご両親じゃなくていいの?そんなにあのご両親って信頼されて―――というよりも会いに行き辛いんだねきっと……。
「俺は素晴らしいと思うぞこれ、細やかな質問の仲にもお三方への配慮が光っているし何よりレッドさんが此処まで饒舌に話しているんだ、素晴らしい」
「ウチもそう思うし、というかなんでこれに批判あんの?それが可笑しくね?」
「……世の中にはそういう馬鹿もいる」
ホッ……思わず安心してしまった。我ながらも良い記事だとは思っていたが、改めてそう評価してもらえると自信と嬉しさが湧き上がる物だ。
「あっそうだ、折角だからラシーマさん。私たちの取材していきませんか?折角来たんだしまた来るのは面倒じゃないです?予定があるならここで予約を入れるって事で」
「えっでもいいんですか?皆さんこそ予定とか……」
「予定っつってもウチがお昼ご飯作って食べるとかだったしね~取材の間にウチがご飯作っちゃうからその間にやっちゃっても良いんじゃね?」
「そうだな、他に予定も無いし……ユウリが信頼している記者さんなら俺もいいぞ」
「……僕も別に」
……我ながら、なんか仕事運可笑しくないかな……。