週刊エンジョイポケモン放送局   作:魔女っ子アルト姫

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エンジョイ?:ライナンとラビ。

「それにしても……本当に凄い所だ……」

 

思わずそんな言葉が口から出ていた、ラビの庭は庭というスケールを完全に超越している。ネットニュースでラビ氏の庭は巨大なビオトープのようだと報じられていた、野生ポケモン達の姿も見られるし、時折鳥ポケモン達が木の実を欲しそうにしているのを上手く誘導して形が悪かったり熟しすぎたりしている物を分けて上げたりもしている。本当に上手く共存している。

 

「しっかし、ラビさんはどれだけタフなんだ……?」

 

ライナンは疲れ切っていた、朝食の準備後のブラッシングだけでも数が多いし一匹一匹に違いが大きい為、注意深く進めたりしなければいけないしポケモンのタイプによっては金属製のブラシへと変更しなければいけなかったり、ブリーダーとしては当たり前な事ではあるが、兎に角ポケモンの数が凄い……。

 

「なんだもうバテたのか」

「い、いえまだ大丈夫です……」

「ちょうど小休止にしようと思ってた所だ、一息つこう」

 

ポフィンを出しながらもお茶を出してやる、ライナンはそれを摘まみながらもお茶を飲む。

 

「……本当に凄いですね、ラビさんは。息一つ切らしてないですし」

「毎日やってる事だからな、最早ルーティンと変わらんのよ。それに自分のポケモンだぞ、なんでそのトレーナーが手入れの仕方を熟知してないと思ってるのよ。この位は出来て当然の事だ」

「当然……」

 

そう、ブリーダーからすればこの位は当然の事、自分のそれも同じだ……そんな自分にポケモンの世話なんて……。

 

「お前、何があったよ。マサルから簡単な話は聞いてたが……それだけじゃないって面してるが」

「……分かり、ますか」

「伊達に三十路じゃねぇのよ、10年も旅してりゃいやでも色んな人間の顔色を見て来た。その中でもお前のそれは極めて最悪な部類だな、自罰的で何かの強迫観念に囚われてますって面してる。そのくせ、自分はそこから抜け出す資格もないとすら思ってんな?」

「―――エスパーですか」

「そりゃお前の相棒だ」

 

正直な事を言ってしまうと完全に正解だ、もう見透かされていると言っても過言ではない……これは、礼儀の面から見ても全てをぶちまけるべきだろう……此処に置いて貰っているのだから……とライナンは少しずつ語り始めた。

 

「……女がいました、初めて……本気で好きになった人でした。俺はどうしてもポケモンを優先してしまうような男でした、そんな俺が初めて……ポケモンよりも優先したくなるような人だったんです……でもその人は、俺をただの金づるとしか思ってなくて、結婚詐欺までやってるって事も分かって……そんな奴から離れたと思ったら、あいつが来て、俺が一番だって、言って来やがって、何を抜け抜けと思ったら、あいつ弟を、マサルがフロンティアブレーンになったからってふざけた事を……!!」

 

思わずグラスを握り潰さん勢いで握り込みながらも血を吐くような表情で言った。自分の事だけならまだ許せた、だけど弟にまでその手を伸ばそうとしたのが本気で許せなくなって、もう何がなんだか分からなくなって、自分でも自分が抑えられなくなった時―――ブリムオンがその女の顔を、引っ叩いた。一瞬、何をと思ったが、ブリムオンは本気で怒り、自分が止めなければブリムオンはサイコパワーで強化した爪を向ける所まで行きそうになった。結局、その女は逃げて行き、結婚詐欺の容疑で逮捕されたと聞いたが……

 

「俺は……自分でケジメを付けなきゃいけなかったのに、大切なポケモンにそれをやらせた上に、相棒に大変な事をさせる所でした……そんな俺にブリーダーとしての資格なんて……あるんでしょうか……」

「あるだろ」

 

えっ……まさか直ぐに返って来るとは思わなかったライナンは茫然としながらもラビの方を見た。ラビは何を言っているんだと言わんばかりの顔をしながらもお茶を啜る。

 

「お前はポケモンに暴力をふるったのか、それともポケモンを傷つけたのか?違う、お前は相棒が助けたいと思われる程に愛される事をし続けた」

「そ、それは……」

「相棒の気持ちを否定する事はこれまで自分が注いできた愛情すら無下にする事、それは歴史の否定と同義だ。お前はブリムオンがそう思ってくれた事すらなかった事にするのか?」

 

そんな風に考えた事もなかったのか、ライナンの視線は自分の隣に座っているブリムオンに向った。ラビの言葉に恥ずかしがっているのか、視線をズラしている。

 

「それにな、お前の腕前は中々なもんだ。今回ブラッシングした中で一番難しかったのは?」

「えっと……ゴーゴート、です」

「何故?」

「なんというか、ブラシを入れる角度、力加減、速度、回数、全てに好みがあると思いました。本当に大変でラビさんにして貰うのが一番だったんじゃないかなって……」

「じゃあ、なんでゴーゴートはメブキジカにグルーミングされてない?」

 

ゴーゴートを見ると、自分の毛並みを姉貴分であるメブキジカに自慢するように見せつけている。メブキジカもそれを入念にチェックしつつも逆にゴーゴートにグルーミングを強請っている。ラビではなく他人であるライナンがしたならばメブキジカは恐らく容赦なくメブキジカが整え直す筈、それなのに寧ろ彼女の方がグルーミングを強請っている。立派な毛並みになった妹分に自分の毛並みを整えて貰うかな、と甘えている。それはゴーゴートの仕上げが良かったことを意味している。

 

「ポケモンを世話していいかを決めるのはお前じゃない、ポケモン達だ。ポケモン達の顔を、お前は見て来なかったか?ポケモン達は全てをお前に任せている、お前は独り善がりじゃなくて任せられている、それがもう証明みたいなもんだろ。トレーナーもブリーダーもポケモンがいてこそ初めてその存在になれるんだよ」

 

ウインディのブラッシングをしながらもラビはそう思っていると語る。

 

「ブリーダーはトレーナーとは違う、育てる者だ。そのポケモンが健全な成長を出来るように尽くすのが仕事、大切なのは自分が手入れしたポケモン達の気持ちだ、自分じゃない。自分が世話をしたいと思って手を広げて、そこに自分を預けてくれるポケモンがいたらそれで成立する」

「俺は……自分、じゃなくてポケモンを疑ってた、のか……?」

「自分を疑い過ぎて、自分に身体を預けてくれるポケモン達にすら疑念を持ってしまった。だからお前がすべきなのは―――一旦落ち着いて、ポケモン一匹一匹の気持ちを感じ取れ。人間関係で色々あったのは分かるが、それをポケモンに向けるのはもうやめとけ」

 

ポケモンに、自分が……嫌悪感が湧き上がりそうなところでラビに背中を叩かれた。

 

「ほれ、次行くぞ。早くしないと昼飯になっちまうぞ」

「あっ……は、はい!!」

 

駆け出すようにその背中を追いかけるライナンを見てブリムオンは少しだけ笑いながらもその後に続いていくのであった。

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