「……すげぇな」
自然と口から出た言葉に、思わず妹達が頷いた。VIP席に観戦しているラビとレビとロル、そしてサザレという組み合わせ……本来ならば此処にいるべきレベが居ないのだが、そっちの方は問題ない。ポリゴン2がカメラを通じて教えてくれた、尚、運営側には偽の映像を送りつけて二人のプライバシーを守っている。ポリゴン2曰く、これは自分が悪い子だから悪い事との事。
「二人は今のナンジャモに勝てるか?」
「……無理、ね……善戦するのが精一杯、いや……圧倒されて一矢報いるだけね」
「同じく~……ナンジャモってあんなんだっけ?強くなり過ぎじゃね?」
「キレッキレだねナンジャモちゃん」
そう、形容するならばその言葉が一番だと思う。酷くキレている、戦術も予測も。エレキブルというポケモンは伝説ポケモンなどを除けば電気タイプ最強の物理攻撃力を持っている。特性の電気エンジンや地震を覚える事を加味すると、電気タイプでありながら最強の電気キラーというべき存在なのである。だが、その分扱いが難しい部分があり、ネックになるのが素早さなのだが……それを業と自ら電気エンジンを起動させるという手段を用いて上手くカバーしている。
「そして……電磁浮遊、レベの奴、一体どんな特訓をしてたんだ……?」
ナンジャモ曰く、レベの特訓は自分の為にもなったと言っていたが……ある種の惚れた弱みによるお世辞……のようなものだと捉えてしまっていたが、そういう者ではないのだと既に示されていた。何故ならば彼女のPWCSランキングは26位、世界で26番目に強いと言う結果が示されているのだから。
「ニドちゃん、大地の力!!」
「エレキブル、尻尾で地面を殴って!!」
地面を殴りつけ、そこから地割れのような亀裂を生み出しながらもそこから大地のエネルギーを溢れ出させるニドクインの攻撃を地面を叩きつけて跳躍したエレキブル、あの規模だと電磁浮遊だとカバーしきれずにダメージを受ける恐れがあるとナンジャモは判断した。
「複合技いっくよぉ!!毒電波ぁ!!」
「ッレキブルルルルルル!!!!」
尻尾と腕を向けながらも大声を出すエレキブルだが、それを聞いた途端にブルー、いやレッドですら耳を塞ぎたくなるような極めて不快な音波が体中を貫いてきた。
「いいいいやああああああああっ鳥肌が立つぅぅ!!?」
「ニドオオオオオッ!!?」
『こ、これは何でありましょうかぁぁ!?嫌な音、でしょうか!?』
『い、いや違う、これは嫌な音と怪電波の複合技だ……!!超音波と嫌な音を同時に出すっていうのはよくやる手だが、電気タイプだと怪電波と複合出来ちまうのか……!?」
毒電波は嫌な音と怪電波というそのままで使っても相手に極めて強い不快感を抱かせる技、それなのにその二つを合体させてしまうと言う悪魔的な発想で誕生した技。ポケモンどころかトレーナーにも作用してしまうそれ。
「う、うおおおおうっ流石に来る……!!だけど、今だよエレキブル、力強く―――影分身!!からの叩き落とす!!」
「ッレキブルルルルルル!!!!」
その指示を受けて走り出しながらも次々と分身していくエレキブル、ニドクインは頭の中をかき乱されたような気分になっているのか、まだ視線すら定かになっていない所で飛び込んだエレキブルの一撃が炸裂、直後に真下からのアッパーが炸裂して空中へと打ち上げられると分身エレキブルが次々と飛び掛かって身体に斬撃が如く、叩き落とすを決めていく。
「キッブラアアアアアアアアアア!!!!」
トドメだと言わんばかりに真上を取ったエレキブルが渾身の一撃を浴びせかけてフィールドへと叩き落した。着地すると影分身は次々と消えていくが、エレキブルの足元にはアイテムが転がっていた。それを見てブルーは舌打ちをした。
「ちっバレてたか……!!」
「当然だよ、大地の力があんなにパワーがあるなんて力尽くだけじゃ納得できないもんね!!」
ニドクインは身体を起こしながらも身体に付けていた物が無くなっている事に気づいた、そしてエレキブルはそれを遠くへと蹴り飛ばしてしまった。
『命の珠……マジか、命の珠力尽くだったのかよあのニドクイン……』
『命の珠、と言いますとダメージを受けますがその分技威力が上がると言うあの?』
『ええ。ですが特性が力尽くのポケモンはそのデメリットを打ち消す事が出来るんです。何故そうなるかは現在も研究が続けられてはいるんですが……力尽くのポケモンには命の珠を持たせるというのは極めて強力な戦術なんです、この双方がかみ合った際の技の強化倍率は兄曰く、約1.7倍にまで上昇するらしいです』
『そ、それほどまでに……』
「闘争心も疑ったけど、流石に力尽くか……」
「―――ニドちゃん、もう遠慮はいらないわ。全力で応戦していいわよ!!」
「ニドオオオオッ!!!」
突如として発せられた制限解除と言わんばかりの言葉にエレキブルとナンジャモの動きがリンクする。身構えるとニドクインは地面を尾で打ち据えると放たれた砲弾と見紛うような暴力的な速度で迫って来た。
「逃げるな真っ向から受け止めろぉ!!!」
「キブルルルッ!!!」
これにはブルーも驚いた、確実に回避してくると踏んでいた筈なのに真っ向から受け止めに来た。尻尾をフル活用した3次元的な行動を取り、例え飛行ポケモンだろうが、力を込めさえすれば、空気を殴りつけて空中でも移動可能な高機動がニドクインの売りなのに―――それを真っ向から叩き潰しに来た。
「そのまま持ち上げちゃぇ!!」
「ブルルルルルラアアアアアアアッ!!!」
「ド、ニドオオオッ……!?」
尻尾が何も捉えない空中へと持ち上げる、それでもニドクインは必死に空気を捉えようとするが、エレキブルもそれに気づいているのかニドクインを振り回してそれを妨害する。
「ブルー氏、地面タイプなら電気タイプは効かない、そう思ってない?」
「いや普通は―――ああいや、レッドとサトシ君のピカチュウのなら貫通してくるよね……」
「だったら、味わってみなよ!!エレキブル!!」
「ブルルルルルアラァアアアア!!!!」
ニドクインの腕へと尻尾を伸ばして確りと掴み、そのままフリーとなった腕で空へと向ける。雨乞いによって呼ばれた雨雲から雷が落ち、エレキブルの腕へと帯電するとその腕が真っ赤に発熱し出した。
「マ、マズいっ!!ニドちゃん、ヘドロウェーブ!!」
「ニドオオオオッ!!!!」
「叩きこめぇっ電熱パンチィ!!!」
「エレッキッブウウルルラアアアアア!!!!」
ヘドロウェーブを放とうとしたニドクインへと向けて放った一撃は、雷撃とそれによる熱を纏った一撃、最早電気タイプではなく炎タイプの一撃。それがニドクインの頬を力強く捉えた、そのままニドクインを思いっきり殴り飛ばし、ブルーの後方の壁へと激突した。
「ニ、ニドちゃん!!?」
特殊合金の壁を容易にへこませ、生々しい傷跡を生み出している様子からその一撃の破壊力が伺いしれた。壁にめり込んでいるニドクインは完全に目を回して動けなくなっていた。それを見て、勝利の雄叫びを上げるも胸を叩きながらも雄叫びを上げるエレキブルを祝福するように審判が声を張り上げた。
『ニドクイン戦闘不能!!エレキブルの勝ち!!!」
『エレキブル二体抜きぃぃぃぃっ!!!なんという大番狂わせ!!マサラ三英傑のブルーを圧倒しているのはパルデア地方のジムリーダーのナンジャモ!!しかもタイプ相性で言えば地面タイプを有しているニドクインが有利であるはずなのに、それを真っ向から捻じ伏せております!!!』
『兄さんが業を真っ先に教えたから業の習熟度も別格だ……エレキブルの特性と業の性質、それらと業を組み合わせて新たなコンビネーションへと昇華させてる……』
「ボクにだってジムリーダー以前にトレーナーとしての意地がある、舐めるのは勝手だけどさ……ボクの実力を見誤ってるのはNGさ」
ニドクインを戻しながらもブルーは素直に感嘆の念を抱いていた。本当に強い、ポケモンと技、特性、そして業を全て調べて研究しなければ辿り着けない領域に踏み込んでいるからこその強さに、ブルーは久方ぶりに血が滾った。こんな思いを抱くのは以前のPWCSでレッドやグリーンと戦った時以来の感覚だ。
「だったら越えて行こうじゃない、行くよ――――カメっち!!!」
「ガメエエエエエエエエッ!!!!」
『ブルー選手最後の一匹は矢張り相棒のカメックスだ!!!過去、幾度もなくPWCSの舞台でレッド選手のピカチュウ、サトシ選手のジュカイン、苦手な相手と死闘を繰り広げた亀々の王は雷撃の鬼神たるエレキブルと渡り合えるのかぁ!!?』
「渡り合えるのか?違うわよ、勝ちに行くのよ!!」
その手に握りしめたテラスタルオーブとキーストーンが埋め込まれたメガブレスレット、それを見せ付けながらもブルーは笑みを強めた。これからが真の戦いだと言わんばかりに。
「渦巻け激流、狂えよ大波!!我らが敵を、全て押し流せ―――メガシンカぁ!!!」
「ガメエエエエエエエエエ!!!!」