週刊エンジョイポケモン放送局   作:魔女っ子アルト姫

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エンジョイ:ホウエンの父、ガラルの少年。

「……いかんな、気持ちを落ち着けられない」

 

試合前、センリは何度も立ったり座ったりを繰り返しいかにも落ち着きませんと言いたげな雰囲気を醸し出していた。PWCS本選出場は初という事もあるが、それは自分だけが経験している物ではないと自分を言い聞かせながらも何度も顔を洗って冷静になろうとしてもそれが許さないもどかしさにも似た感触が自分に不快感を植え付けていく。

 

「私は、こんなに落ち着きのない性格だったか……?」

 

驕りなどではない自信はある、ホウエン地方のジムリーダーの中でも最強格だと、四天王にも引けは取らないと言う評価に相応しい実力を持ち合わせているつもりではいるが……そんな自分でも、今回はイレギュラーばかりの大会になる。

 

「……」

 

もう一度相手のデータを確認する。オニオン、ガラルポケモンリーグにて新設された四天王に抜擢されたジムリーダーの一人。ガラルの気風故にゴーストタイプの長所であるトリッキーさを発揮する事が出来ない状態にもかかわらず、オニオンのトレーナースキルとポケモンのレベルを合わせた事でメジャーリーグでの活躍をしていたゴースト使い。

 

が、ゴースト使いらしからぬ戦い方は既に矯正がなされている。同じジムリーダーのカブに仲介をお願いしてホウエン地方の四天王たるフヨウの元で修行をした結果、ゴーストらしさを取り入れることに成功したとの事。フヨウ曰く、あの子は相当に厄介な育ち方をしたから覚悟をした方がいいと言う有難くも辛いアドバイスを貰ってしまった。

 

「幸運なのは、最大の攻撃を封じられているという点か……」

 

ノーマルタイプはその性質上ゴーストタイプの技を無効化出来るという点にある、だからこそ相手の最大打点を封じる事が出来る訳だが、それに関しては此方も同じ。だがそれはノーマル使いへの命題でもあるので対策は十分に考えてきている。

 

「故に問題はない……ああそうだ、自信を持てセンリ……お前はジムリーダーだ」

 

漠然とした不安のような緊張が如何しても付き纏って来る、如何して此処まで不安を重ねている。

 

「……そうか、私は勝ちたいのだな」

 

このPWCS本選の舞台に何度立ちたいと思った事か、ジムリーダー業の傍らでエントリーして挑戦を重ねてきたが、ジムリーダーとしての職務もあるので難しかったそれに漸く手を届かせる事が出来た……その嬉しさが明確にあった、息子にも応援を受けているし、娘からも応援のビデオメッセージを貰ったりもした。だからこそ勝ちたいのだ……。

 

「思った以上に私も若いのだな」

 

気付いてしまえばもう此方の物だ、それを掌握する術は心得ている。ならばこそ、その為に邁進しよう。今日の為に死力を尽くして構築してきた戦術を活かすだけの事。

 

「さぁて―――家族の為にも頑張るとしようか!!」

 

 

 

「ロル、見てて。俺……頑張って来るから」

「う、うん、がが、頑張って―――?」

 

呆けている恋人、ロルをもう一度抱きしめながらも自分は控室を出た。この日の為に頑張って来たんだ、ホウエン地方への遠征も全ては今日これからの日の為に尽くして来たんだ。ガラルリーグにおいてゴーストタイプ使いというのは良い顔はされない事が多い、ゴーストタイプの真骨頂などは受けが極めて悪いからだ。余りにもバカバカしくて愚かな考え方だとフヨウや少しだけお話出来たキクコも言っていた。だけど、それでも自分はゴーストタイプの良さを知って貰う為に、考えて、考えて、実践して、練習して、修正して、を数えきれないほどに重ねて来た。我ながらよくやったと思う程に。

 

「……変かな、ゲンガー」

「ゲンロゲン?」

 

首をかしげるゲンガー、此処まで誰かの為に身体を張ろうとする自分が自分で自分ではない気が、してしまった。4歳の頃に生死を彷徨ってから自分はゴーストタイプが見えるようになった、興味を持ち、彼らのトレーナーになりたいと願った。その時以来かもしれない。

 

「勝つよゲンガー、ラビさんにカッコよく挨拶に行く為に」

「ゲヒャヒャヒャハッゲンガ~!!!」

「そんなに笑うなよ、もう良いから戻って」

 

過去の自分と比較して人が変わり過ぎだろと大爆笑するゲンガー、変われているのは良い事だろ、と思いながらもゲンガーをボールに戻す。こんな風には変われたのもロルのお陰だろう。自分の事を素直に受け止められるようになった、卑下してばかりの自分を変えてくれた彼女には感謝している。

 

『しょ、勝利のおまじないだし!!ほら、レベがナンジャモンにやったらあの結果出し、もう勝ち確定くね!?』

『―――有難うロル、だから……僕からもお返し』

『ふぇ?』

 

僅かに唇へと触れた指、まだ残っている感触、温かさ……それを理解しながらもオニオンはゆっくりと顔を上げた。まじないは呪いと書く、ならばゴーストタイプ使いの自分としては最高の呪文となる事間違いなしだ。

 

『ホウエン地方のジムリーダーとしては最強格と叫ぶものが多い事はご存じでしょう。驚異のケッキングことシュッキングを伴い、ポケモントレーナーとしての育成能力は世界的に見ても凄まじいの一言であります!!さあ本日はどんなバトルを見せてくれる、PWCSランキング20位、ホウエン地方ジムリーダー、センリ選手!!!』

 

聞こえる、もう直ぐだ、もう――――踏み出した途端、真っ白だったはずのスモークが真っ黒に染まった。異様な雰囲気の中で真っ黒な闇の深淵から此方を見つめ返す亡霊が如く、瞳を輝かせる。

 

『黒い闇の中に揺蕩う紫焔の眼光、恐怖と怪異をその身に纏う者共を率いるサイレントボーイが、ゆっくりと幽鬼のような足取りでこの本選へと姿を見せます。さあ亡霊共が行進を始めるぞ、気を抜くと魂ごと引きずり込まれるぞ!!PWCSランキング21位!!ガラル地方四天王、オニオン選手!!!』

 

「悪いが勝たせて貰うよ、お父さんって奴は家族の前だと見栄を張りたい物でね」

「……張るなら身体だけにしときなよ、ゴーストの前だと特にね」

 

 

『対戦ルールは3対3、メガシンカ、Zワザ、テラスタル、ダイマックスは各選手一度ずつのみ、ポケモンの交代は両者自由となります。センリ選手 VS オニオン選手。それでは両者、最初のポケモンをフィールドへ』

「行くぞ、ムクホークゥッ!!!」「ムクホオオッ!!!」

「行くよ―――ゴルーグ!!」「……ルッグ」

 

To Be Continued……!!

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