白いエンニュート、色違いの個体。それを見て真っ先に思ったのはエンニュートの纏っている空気の違いだ、それを見て理解した。あの個体は群れのボスか、それになる筈だった個体だと。
『ホミカ選手、次はエンニュート、とこれはっ白い、白いエンニュートです!!色違いのエンニュートです!!!白い身体が醸し出す妖艶な毒にご注意ください!!』
世間一般的には色違いとは幸運の存在だったり、通常とは違う特別感やらを感じるだろうが野生のポケモンにとってはメリットになる事は極めて少ない。通常の個体はその体色を狩りに生かしたり隠れるのにも利用するが、体色が違うとそれらが通じないし、仲間外れにされる事が多い。色違いとは、同種族の仲間とは明確に異なる異彩、だがエンニュートの場合はそれがいい方向に向かっているのが分かる。
「エニュットンッ」
「おっ調子いいじゃん、アタシもかき鳴らすよ!!」
エンニュートはヤトウモリというポケモンから進化するが……面白いのが進化出来るのはメスだけでありオスの個体は進化できずにヤトウモリとして一生を過ごすという事。それが色違いだった場合は群れのボスたるエンニュートに気に入られるしか群れに残る手段はないと明言される、だが、メスの場合は存在感の違いなどでボスになり易いという研究結果がある。
「(油断、出来ねぇなこれ……強いぞこいつ)」
10年の歳月で蓄積された膨大な経験にレッドなどと共に経験した殴り込みなどで得られた物を総合してあの個体は……確実に3Vはある個体だと認定した。
「サーフゴー」
「ゴウ」
「確実に潰せ、一瞬でも気を抜いたら死ぬと思え。全力で、あれを潰せ」
「―――ゴウ」
一軍への昇格を果たしているサーフゴーはある事を感じた、一軍と呼称されるラビの切り札たちに共通している事はラビの指示には100%の信頼を預けているという事、ならば自分もそれをする。
『NEXT BATTLE サーフゴー VS エンニュート!!3、2、1……BATTLE START!!』
「エンニュート、火炎放射!!」
「ニュウウウウッ!!!」
勢いよく放たれる火炎放射、エンニュートは典型的な高速特殊アタッカー。その分それ以外が脆い、特に地面4倍弱点を抱えているが……サーフゴーで恐れるべきはその火力。
「回避だ」
「フゥゴゥ」
「逃がすなぁ!!」
後ろへと飛び退くが、駆け出して火炎放射をぶつけようと迫って来る。高速アタッカーならではの攻め方だ。ならば此方はサーフゴーならではのやり方をやる。
「駆け抜けながら素早く―――光優先で両壁だ」
「フゴウ☆彡」
ウィンクをしながらもサーフゴーはあと少しで火炎放射を喰らうという所で急速に真後ろへとバックした。突然の事にホミカもハァッ!?という声を出すのだがやったことは単純である。所謂―――ローラーダッシュである。
『なんとサーフゴーが地上を爆走!!?どうなっているのでしょうか!!?』
『た、確かにサーフゴーの身体の黄金は自由自在でサーフゴーの意志一つで自在に形を変えるし、それを融合させるのもお手の物だって聞いたが……兄さん、アンタポケモンに何をさせてんだ……?』
「何をとは失礼な、合理的な移動手段を提案しただけだ。素早く―――悪巧み、力強く―――サイコショック」
「フウウウゴウッ!!!」
地面に設置した小型のローラータイヤのような物が足から伸びているサーフゴー、エンニュートも必死に火炎放射を発射しているが、見事な身のこなしのサーフゴーは次々と回避し続けていく。まるでフィギュアスケートの演技のような上体反らしで上半身を地面と接するようなギリギリの反りをしながらもサイコショックでフィールドに干渉し、地面から岩を浮かび上がらせながらも襲い掛からせていく。
「炎の鞭!!」
「ニュウウウンッニュニュニュニュ!!!」
両手に炎の鞭を握り込むとそれを振るってサイコショックを迎撃していく、鞭を持った姿は妙に様になっているというか、振り慣れている感じがしてならない。それと―――
「サーフゴー、絶対喰らうな」
「フゴゥ」
あの炎の鞭は、ウチのマルヤクデと同じものだ。鞭の先端が音速を超えている、その威力で持ってサイコショックを粉砕している。そうなると……戦術を少しだけ変える必要があるな。
「エンニュート、このまま行くよ!!素早く―――炎の鞭!!」
「ニュウウウウットウトウトウッ!!!」
「っ当たるな!!」
「ゴウッ!!」
再びローラーダッシュで回避するが、早業の影響を諸に受けて鞭を振るう速度が更に加速している。それによって先端は先程よりも更に音速を超えた速度で振われる上に、その速度に炎の鞭そのものが耐え切れないのが、フィールドに炎をまき散らしている。自分のマルヤクデでは見られなかった事だ、マルヤクデの方が技と業の練度の方が上だが、これは逆に練度が低い事が面白い効果を生み出している。
「(疑似的な炎のフィールド……シゲルのカメックス戦のフィールドを焼き尽くすんだ、みたいな事になって来た……)」
炎の鞭によってまき散らされた炎にはエンニュートの毒が混入しているのか、地面が妙な溶け方をしているし臭いが鼻につく……その時に気づいた、エンニュートが妙な笑みを浮かべている理由……このエンニュートは、戦い慣れしている。
「(……ニャロメェ……性フェロモンを混ぜて燃やしてるのか……完全にトレーナーを狙った戦術じゃねぇかこれ……)」
僅かに気分が悪くなって来た、心臓が早鐘を打つ、相手のエンニュートは明確に此方を狙ってきている。勝利の為にポケモンが此処までしてくるのは中々ない、自分もやる側なのでその効力は理解しているが……久しぶりにやられる立場になると、妙に腹立たしくなってきた。性フェロモンで此方の集中力を削ろうというのか、もう怒ったかんな。
「サーフゴー、いい加減にフィールドを支配してやろう」
「フゥゴゥッ!?ゴウ☆彡」
マジで!?やった☆彡と言いたげにテンションを上げていくサーフゴー、確かに強い、だがそれ以上にアイツは癖が強い……恐らくサーフゴーは性別がないから大人しい方だが、実際はオスならば篭絡を優先、メスであれば自分の方がより魅力的なメスで上だと屈服させる系だろう……戦う相手に性別がないならばトレーナーを狙えばいいじゃない、そうかそうかいい考えだな、だから潰す。
「素早く―――悪巧み、そして力強く――波乗りィ!!!」
「フウウウゴウッッ!!!」
後方へと伸身三回宙返り一回捻りを行いながらも飛び退きながらも空中で黄金のサーフボードを生み出して地面へと接地すると、膨大な水を出現させながらもそれに波乗りしながら突撃を敢行。
「ニュッニュウウウッ!?」「なんですとぉぉおっ!!?」
まさかの波乗りにエンニュートと一緒になってホミカも吃驚である。波乗りでフィールドの毒を炎ごと攫いながらも突撃していく。
「エンニュート避けて!!」
「ニュ、ニュウッ!!!」
言われるまでもない!!と空中へと避けた、そして着地しようとした瞬間、波によって一時的に水浸しになっていたフィールドの水分が一気に集結してエンニュートを飲み込んで球体状の牢獄と化し拘束してしまった。エンニュートの視線の先には指を揺らしてチッチッチッと挑発してくるラビと一緒になって指を揺らしながらもウィンクをするサーフゴーの姿があった。
「避けたまでは良かったが、着地こそが最大の隙。空中での事を考える奴は多いが着地の硬直まで考えてない奴は多いからな、狙わせて貰った」
「クソッ……エンニュート脱出を」
「させると思うか?」
「フウゴウ☆彡」
サーフゴーが腕をまるで指揮者の様に動かすと水球はさながら洗濯機の内部のように回転し始める。しかも単一方向だけではなく、縦に斜めに逆回転も三次元的な回転もお手の物。そんな中でエンニュートが脱出の為の行動が出来る訳もなく……水球が弾けた時には目を回して動けなくなっている姿を晒した。
『エンニュート、戦闘不能!!サーフゴーの勝ち!!』
『これで2タテ!!サーフゴーの快進撃は止まりません!!エンニュートの見事な鞭捌きを飲み込んだ波乗りも素晴らしかったですが、その後のサイコパワーによる水流操作も素晴らしかったですね』
『ええ、サーフゴーというポケモンの強さをここぞと見せつけられたような気分です』
「有難うエンニュート……マジでアガッたよ」
ラビが此処まで徹底的にやるという事はエンニュートを脅威と感じさせられたという事。つまり、自分はラビを追い詰める事が出来ていたという事……ならばあとはそこを目指して突撃するだけじゃないか。やればいい、やってやればいいんだ。
「最後の爆裂ラストナンバー!!!ペンドラーいっけえ!!!」
「ペエエドンッ!!!」
『ホミカ選手最後の一体はペンドラーです!!これは面白いバトルになるでしょうが、既に3対1、これを引っ繰り返すのは容易ではありません!!気張れるかホミカとペンドラー!!』
「やるだけに決まってっしょ、そう……ラビ、アンタの理性ぶっ飛ばしてやる!!!」
「出来る、もんならな」