「ただいま~」「ただいまなのです~」
「あっお帰り~カルネさんにアンシャちゃん~」
「ナンジャモお姉ちゃんただいまなのです~」
お買い物に行っていた二人、PWCSの本選中なのに大丈夫なのかとも思うが、カルネは女優として確かな腕前があるので演技力でカバーしつつも娘のアンシャにもバレないようにしっかりとお洒落という名の変装を施していたので全く問題はなかった。アンシャもなんだか映画の秘密のお出かけみたいだとノリノリで出掛けて楽しんでいた。
「流石に本選中だと人がいっぱいねぇ……戦闘準備期間中ではあったけど街の賑やかさは衰えてないわ。寧ろ、この時間を使ってパワーチャージするぞって雰囲気が感じられたわ」
「あれ、何か見てるのです?」
「第一回戦の名バトル選って感じでみんなで選んだバトルを見てるんだよ、特にラビ氏には次のバトルに関わるからねぇ~」
「成程ね、私も何とか勝ったけどギーマさんの博打スタイルには参ったわ……」
カルネも第一回戦は突破しているが、ギーマの死中に活を求めるというわけではないが、例え分の悪い賭けであろうとも迷う事もなくメリットがデカい方に常に全賭けするスタイルには調子を崩されっぱなしで、敢て此方も賭けに出て運を掴み取った事でなんとか勝利する事が出来た。
「ギーマさんのバトルはなんというか、見てて凄く冷や冷やしました……ドキドキもしました」
「あ~それ分かる、ギーマ氏生粋のギャンブラーらしいけどあそこまで定石を捨てて奇策と賭け全振りで挑むのはビックリするよね。リスクとか怖くないのかな」
「曰く、博打っていうのは負けたら痛いからやる意味があるって言ってたわよ?」
「あ~……なんか分かっちゃいそうなのがいまいち嫌だなぁ……」
そんな会話を続けながらもリビングへと入っていくと、皆がTVを見ていた。話の通りという事か……荷物を置いて膝の上にアンシャの乗せたまま観戦に参加すると、確かにこれはラビにも大きくかかわるのも納得のカード……シンオウ地方四天王のオーバ対ホウエン地方元チャンピオン且つトップコーディネーターたるミクリのバトルだ。
「今どの辺り?」
「ミクリさんが一本取った辺りっすね」
ミクリ対オーバの対決はかなり白熱していた、オーバは最初から主力級且つ準エースとも言うべきブーバーンを投入。サトシで言えば最初からピカチュウを繰り出すというなんと大胆不敵な作戦に打って出るのだが……それに対するミクリは初手からパートナーであり最大戦力であるミロカロスをぶっこんで来たのである。
「オーバの初手ブーバーンも悪くねぇと思ったんだけどな」
「戦力の出し惜しみは戦火拡大を防ぐ一番の手立てだからな、情報の観点からすると問題もあるがそれ以前に敗北したらそれまでだからな。なっユウリ」
「うううっ~……」
「あっユウリお姉ちゃんなのです」
「来てたのね?」
「はいついさっき……」
遊びに来たのか、ユウリもラビの家のリビングに居た。ユウリの敗戦はアランの執念というのもあるが、それ以上にユウリは確実に警戒されるであろうザシアンを温存しようとした事である。それに加えてダイマックスはルール上禁止されていないが、使用が出来ないと思ったので第一試合には出さない決断をしたのだが……それが悪い方に転がってしまった。
「それに最近ユウリのパーティはレジアイスとエースバーンが基本戦術になって来てたからなぁ……」
「それ、僕も思ったよ。チャンピオンとしてはイメージが定着したりしていいかもしれないけど、PWCSという舞台だと対策され尽くしちゃってる感じ」
「そっかぁ……う~んレジアイスに頼りきりだったかなぁ……」
「そうじゃないわよユウリ、レジアイスを使う事は良いわ。大切なのは手持ちを繰り出す順番やパーティメンバーとの組み合わせや役割の明確化よ。レジアイスを先鋒にして相手の出方を見たり、隙を見て積んだりするのは良いと思うの、でもそれを活かせるレジアイスとの良い相性のポケモンを入れた方が良いのよ」
「オレ様的にも賛成。例えばよ、レジアイスは特防高いけど物理低いだろ、どんなポケモンがいいと思う?ヒントはオレ様」
「キバナさん?キバナさんで物理をカバー出来る……あっギャラドス!!威嚇で相性がいい!!」
「「大正解」」
「やっぱ仲いいだろお前ら」
「ンな訳ないでしょ!!?」「よせよ、照れるじゃねぇか」
「ちょっとアンタお兄ちゃん相手に何誤解されるような事を……!!?」
一瞬で賑やかになるワチャワチャ加減にカルネは思わず笑ってしまった、そして愛する夫との間にもう一人ぐらい……と考えてしまって赤くなるのをサザレが分かりますよ……と頷くのであった。
『行くぜ相棒、ゴウカザルゥッ!!!』
『ゴウギャァァッ!!!』
『四天王のオーバ、何とここでゴウカザルです!!相棒で勝負出たぁ!!!』
『相性は言うまでもありませんが、オーバ選手と苦楽を共にした最強の相棒をここで投入してこれ以上の損害を出るのを防ぐつもりでしょうね、此処で流れを変えられなければオーバ選手の敗北は決定的となる。分水嶺、でしょうね』
「ミクリさんの初手からのミロカロスには驚いたけど、まさかここでゴウカザルだったのね」
「思い切ったことするよねお互いに、ボクだって最初はエレキブルだったけどあの子は準エース位の立ち位置だよ」
「問題は……ミクリさんのその後だな、最初から相棒を投入するって事は必然的に残りの二体は、ミロカロス程ではない事になる……それか、ミロカロスと同等以上のポケモンをゲットしてるか」
『負けるなゴウカザル!!火炎車から雷パンチぃ!!!』
『キイイイヤアアアッゴゥゥゥゥッ!!!!』
『ミロカロス、力強く―――アクアリング!!』
『ミイイイロオオオッ!!!』
火炎車で加速したゴウカザルの雷パンチに対して力業で強化したアクアリング、アクアリングの規模は拡大され、アクアリングの輪の連なりが雷パンチを防いでいる。加えて雷パンチによって水の一部が蒸発するが、その水蒸気がミロカロスの存在感と美しさを引き立てるというコーディネーターならではの戦術を取っている。
『ならこうだ!!!ゴウカザル、草結び!!』
『キャキャキャッ!!!』
地面へと勢いよく手を叩きつけると、フィールドから無数の草が飛び出してミロカロスへと巻き付いていく。本来は相手の体重を利用する草結びだが、今回は全くそれをせずにまるで蔓の鞭のような扱い方だが……ゴウカザルは草の一部を鷲掴みにすると―――
『やれっ力強く―――雷パンチィ!!!』
『ウ~キャキャキャキャァ!!』
『ミロォオオオオッ!!?』
『まさか、草結びに電撃を流す!?龍の舞で草を引き千切るんだ!!』
なんと草結びに雷パンチの電気を流して強引に電気を浴びせかけるという戦術に出たオーバ、だが直ぐ様に龍の舞でそこから飛び出されたのだが―――ゴウカザルはそのルートを見切っていたかのようにその前へと躍り出た。
『行くぜ、打てゴウカザル!!!』
『ウウウウッキャアアアッ!!!!』
その時、凄まじい音と共に打ち放たれた拳はアクアリングを越えてミロカロスの顔面へと炸裂、大きく吹き飛ばし、その身体を揺るがした。ミロカロスはダメージに自分は何を受けたのかと、目を白黒とさせ、ミクリは思わず一筋の汗を流した。
『今のは、雷パンチ、いやだが今の速度は……それにこのダメージ、明らかに雷パンチだ。だけど今のは早業でもその上でもない、何なんだい今のは』
『これが、俺とゴウカザルの特訓の成果だ』
オーバは業の訓練をしながらも思った。元からマッハパンチという超速の拳があるのだから、その拳に新たな力を加えられないか、つまりマッハパンチの速度に別のパンチ技を乗せる事は出来ないのかという疑問である。早業との併用、マッハパンチとの競合、それらを一から調べ、入念に訓練を重ね続けた結果として……マッハパンチの速度に他の技を乗せた状態で放てるようになった。
『マッハパンチの速度に雷パンチの威力とタイプを乗せたって訳だ、さしづめ雷鳴パンチとでも呼ぶかね……さあどうするよミクリさん、炎にマッハが加わる、炎は益々燃え上がるぜ!!』
『面白い、これほどまでに熱くさせてくれるか、四天王のオーバ!!いいだろう、僕の全力を持って君を倒そう!!!』