『ラバイさん、先程のお言葉ですが何故サザンドラを戻さないと発言したかの意図をお聞きしてもよろしいですか?』
『単純な話です。あそこでサザンドラを戻してカイリューに交代する事へのメリットがない、それだけの事でしかありません』
『詳しくお聞きしても?』
解説としてまともに仕事で来てないし、この位はするか……とラバイは咳払いしつつも語り出す。
『あの時点でサザンドラは怪電波による特攻とブルーさんの時は防御でしたけど、あれは金属音でしたね。ですので特防が下げられておりました、加えてシグナルビームによって大ダメージを受けていた』
『だからこそサザンドラを最高のコンディションで戦わせるために戻したのでは?』
『あの段階では既にサザンドラに最高のコンディション何て存在しませんよ』
シンイチロウは驚いたようにラバイの顔を見てしまったが、ラバイは何も驚く事も顔色一つ変える事もなく続けてみせる。
『あの段階まで追いつめられるとサザンドラの役目は次に出すポケモンが可能な限り有利になるようなサポートに立ち回るのが最も有効です、それこそ最初に出すのを邪魔された追い風をするだけでもカイリューは相当にいい影響を受けて立ち回りも変わっていた事でしょう。バークアウトも持っていましたし、それこそそれを連発して特攻の低下を狙い続ければ、ナンジャモ選手に対してジバコイルの交代を強制する事も可能だったでしょう。サザンドラは確かに大地の力を覚えていたから有効打はある、だからと言っても電気技は等倍で入るカイリューへの交代はいまいち理解出来ませんでしたね。私ならあのままサザンドラを続投させたうえで追い風とステルスロック、バークアウトで圧を掛け続けます』
『な、成程……確かにそれならばジバコイルの打倒も可能だった、という訳ですか』
ラバイのこの意見は別段アイリスを責めている訳ではない、自分ならばそうするという一つの立場からの意見に過ぎない。そして経験則から来る意見、そうラバイもラビにやられている口だ。
「レベの特訓は中々にナンジャモにもいい方向性を与えたらしいなぁ……」
「ぁぅぁぅ……」
「お前好い加減にしてくれね?」
「素早く―――電磁波!!力強く―――ラスターカノン!!」
サザンドラが再度登場して必死に食いしばっている状態ではあるが、ジバコイルは一切の容赦をする事もなく苛烈に攻め続けて来る。僅かな間の休憩では息を整える事が出来た程度で全く回復はしていなかった。
「素早く―――羽休め!!続けて羽休め!!」
「サザァァァァッ―――……」
体力の回復を羽休めによって図る、羽休めを二連続で行えば大幅な体力の回復が見込める。これならばなんとか―――
「有難うね回復してくれて。力強く―――毒電波!!」
「ジジジバァァァァッ!!!」
「ザァァァアァッ―――……!!?」
脳天を貫き身体を揺るがる程の電波が身体へと入って来る、内部を搔き毟るかのような不快な音と電波が抉り取って来るかのような……能力変化を元に戻された所でまた落とせばいいだけの話、その隙を与えてくれたのならば力業で強化した物を与えて上げればいいだけの事。
「サザンドラ頑張って!!大地の力ぁ!!」
「素早く―――毒電波!」
サザンドラは毒電波を喰らいながらも大地の力を発動させてジバコイルの真下から火山の爆発のような勢いで大地のパワーを炸裂させて、ジバコイルを吹き飛ばすが―――ジバコイルはそれを逆に利用して空高く飛び上がって再び毒電波を浴びせ掛けて来る。
「ドラァァァッ……ドラァ!!」
「サザンドラ―――うん分かった!!素早く―――気合溜め!!そのまま突撃して!!」
「ザァァァアアアッ!!!」
気合を溜めてから一気に飛び出していくサザンドラは流石の600族だと言わんばかりのスピード。エレキネットを狙う事を考えるが逆にこれは当たらないと判断。
「だったらこうだよね力強く―――影分身!!」
「「「「「ジバババババンッ!!!」」」」」
空の浮かんでいるジバコイルは無数に分身した、力業である為に実体を持ったそれがズラリと並び立って一瞬でサザンドラを取り囲んだ。だがしかし、サザンドラもアイリスも迷う事が無かった。何故ならば―――サトシとデントに協力して貰った特訓こそがこれに関する特訓なのだから!!
「あれだよサザンドラ、太陽を背にしてる奴!!上を取って!!」
「ゲッ一瞬で見破ってきた!!?」
「サトシのピカチュウに比べたら、まだまだ分身に微妙な存在感にばらつきがあるからね!!」
「いやあの人と比較しないでほしいかなぁ!?」
伊達にドラゴンに愛されている姫君と言われている訳ではない、場に出しているドラゴンの感覚と可能な限りシンクロして、ドラゴンが見ている物を同じ視点と感覚で共に戦う事が出来るようにはしている。特にサザンドラの三つの頭には倍以上の感覚器官があるのだ、生憎力業影分身の効果は薄くなってくる。
「そのまま、力強く―――のしかかるように地震!!!」
「ドオオオオラアアアアアアッ!!!!」
「ジバコイルラスターカノン!!!」
「ジイイバアアアッ!!!」
真上を取ったサザンドラはそのままの勢いで落下してきた、まるでボディプレスのようだ。それはジバコイルを捉えつつも周囲の分身ジバコイル達が本体に当たる事を恐れる事もなくラスターカノンを連射してくる、ある程度は充電で特防も上がっているからもあるが、タイプ的に心配もいらない……だとしても躊躇が無さ過ぎるそれをサザンドラは受けつつも一気に落下―――そのままフィールドへと墜落し、地震が起動して大きな衝撃波が巻き起こった。
「前にラビさんがアーマーガアのボディプレスで同じ事やってたからね!!それで閃いた新しい地震だよ!!」
「またラビ氏かよ……何処でも出てくるなぁ……未来の義兄ながら恐ろしい……ジバコイルまだいける!?」
「ジ、ジバァァンッジババババンッ……!!」
フラフラとしながらも浮きあがって来たジバコイルだが、幾ら鉄壁で固めていたとはいえ力業且つ4倍のダメージを無事にいられる程ではない。それと同時にサザンドラもゆっくり這い上がって来るが……その瞳はまだ輝いている。
「いっけえええサザンドラ!!火炎放射三連!!」
「「「ザッドラアアアアアア!!!!」」」
頭部と両腕から同時に火炎放射、それはジバコイルを飲み込むが即座にジバコイルが飛び出して来た。負けてたまるかと言わんばかりの瞳を作りながら。
「素早く―――鉄壁!!力強く―――ラスターカノン!!!」
「最後は貴方の自慢の技で行くよ!!素早く―――龍の舞!!力強く―――諸刃の頭突きぃ!!!」
突撃したサザンドラはそのまま放たれたラスターカノンを突き破ってしまった、そしてそのまま―――ジバコイルの硬い硬い身体へと激突するのだが……サザンドラ自慢の技はジバコイルの硬い身体を突き抜ける衝撃を生み出してジバコイルを揺るがした。その代償だと言わんばかりにその身体に無数の青い電流のような光が走ると、サザンドラはゆっくりと落ちていくが、同じ視線の高さにジバコイルがいて、思わずサザンドラは笑うのであった。
『ジバコイル、サザンドラ、共に戦闘不能!!両者、新しいポケモンを同時に出してください!!』
『サ、サザンドラ最後の最後に凄まじい意地を見せ付けました!!諸刃の頭突きという文字通りの諸刃の一太刀で見事にジバコイルを打ち倒しましたぁ!!!』
『……これは甘く見ていましたね、伊達にチャンピオンのポケモンではないという事ですね』
「有難うサザンドラ、ごめんね無理ばっかりさせて……でも有難うね」
「ジバコイル、お疲れさま。いい働きだったよ」
これでナンジャモは残り2匹、アイリスが1匹という状況になった。状況的に見ればナンジャモの方が有利だが……アイリスは全く動じていない、寧ろ笑っている。
「さあてそれじゃあ……行こうかレントラー!!」「トゥッラァ!!!」
「最後の最後まで、楽しもうオノノクス!!」「ノックサァ!!!」
ナンジャモはレントラー、アイリスは相棒たるオノノクスを繰り出した。これがどのようにバトルに繋がるのか……次の瞬間を誰もが待っていた。