サトシのゲッコウガは特別な個体、カロスで数百年前に一度だけ確認されたという絆現象による、絆変化を可能にしている。トレーナーとポケモンが完全にシンクロする事でポケモンの力を更に引き上げ、変化を齎すというメガシンカにも似た性質を持っているそれ。そこに掛け合わせられたメガシンカ……言うなればメガサトシゲッコウガへとなったゲッコウガは宙に浮かぶ水手裏剣に逆立ちしながらも静かな闘志を漲らせていた。
「行くぞリザードン!!ダイロックッ!!!」
「グオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」
キョダイマックスリザードンは、雄叫びを上げながらも地面を踏み締めると地面が競り上がるように盛り上がって巨大な岩盤の壁を生み出した。それを力一杯に押して押し潰すダイロックを発動させる。改めて見てもこればっかりはパワー系のポケモンなら素で出来そうな技だとサトシは思うのであった。
「行くぞゲッコウガッ!!!居合切りだぁ!!」
「ゴッゥガァッ!!!」
その時、サトシとゲッコウガの動きがリンクした。同じように水手裏剣に手を伸ばすと水手裏剣を巨大な一太刀へと変じさせるとそれを持ってダイロックへと突撃していく。
「コオオオオウウウガァアアアアッ!!!」
裂帛の気迫と共に放たれた居合切り、それは爆弾が破裂したような衝撃波を周囲へと発散させながらもダイロックを一瞬で粉々に打ち砕いてしまった。無数に岩石へと変化させられたダイロックは四方に散りながらもリザードンにも命中していく。
『い、居合切りでダイロックをぶった切ったぁ!?』
『ゲッコウガは身体から水を鋼鉄並に硬化させる粘液を分泌させる事は可能で、水手裏剣をあの形に変える事も出来るし、あれなら水タイプの技として繰り出す事も出来る筈だが―――だからってダイマックス技を真正面からブチ破るかよ!!?』
「まだだ、リザードン!!ダイドラグーン!!!」
「グオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」
「素早く―――影分身!!力強く―――冷凍ビーム!!」
「「「「「コウウガッ!!コウウウウガァアア!!!」」」」」
赤黒い竜巻を放つリザードンに対して一瞬でフィールドを埋める程の影分身を生み出したゲッコウガは息を合わせて冷凍ビームを放つ。それらは一点で収束すると爆裂するように規模を増大させて吹雪のようになってダイドラグーンを真正面から拮抗し始める。だがリザードンにも意地があると言わんばかりに咆哮を上げるとダイドラグーンのパワーが上昇して吹雪を完全に消し去る。しかしゲッコウガのパワーも凄まじかった為にダイドラグーンも力尽きる。
「次が最後の一撃―――リザードン、パワーを振り絞れ!!!猛々しく―――キョダイ、ゴクエンッ!!!」
「グオオオオオオオオオオオオオオッ……!!」
その言葉を受けて尻尾の炎どころか全身を燃え上がらせていくリザードン、炎の翼など青白い炎へと変じていく。文字通り最強の炎を喰らわせてやると言わんばかりの雰囲気にサトシは笑った。
「やっぱりバトルは楽しいなゲッコウガ!!だったら俺達はもっともっともっと強くなれるな!!」
「コウガッ!!」
「ああっゲッコウガ、迅く―――影分身!!!」
「コウガ!!!」
即座に無数の影分身が再びフィールドを埋め尽くしていく、ゲッコウガはそれらと同時に跳躍してリザードンを視線を交わし合う。受けてみろ、と互いに瞳で宣言する。
「行くぜゲッコウガ、これが俺達の力だ!!水手裏剣!!!!」
「コオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」
刹那、影分身が一瞬で掻き消えると本体へとエネルギーが収束していくように水手裏剣が巨大化する。その巨大さはダイマックスにも引けを取らない程に巨大で異様。そのまま、それを叩きつけるかのように投擲するゲッコウガ、空気が唸り、震える程のそれに対してリザードンも遂に―――
「グオオオオオオオオオオオンッ!!!!」
青白く輝く地獄の炎を吐き出した。全てを焼き尽くし消滅へと誘う冥土の炎、それと水手裏剣が激突する、互いが互いを消し合うかのような音が響き合う中で天へと伸びる異様な光、キョダイマックスの影響で染まっていたそれを貫く程の光の柱が伸びていく、そしてキョダイマックスの影響を打ち砕くかのように空には雲一つない晴天の青空が戻る。静寂が戻る中でバトルフィールドには、キョダイマックスが解除され、深いダメージを負いながらも確りと立っているリザードンの姿がそこにあった。ゲッコウガもいまだ健在。
「キョダイマックスでも押し切れないか……面白いじゃないか!!そうだ、俺はこういうバトルがしたいんだ!!」
まるで少年のような笑みを浮かべ始めたダンデは心からの喜びに包まれていた。そうだ、自分はこういうバトルを求めていたんだ。自分が勝てるかもわからず、もがき続けなければいけないバトルを、ガラルのチャンピオン、無敵のダンデだと言われていたがハッキリ言って物足りなさがあったそれを完全に忘れさせるほどの激戦を―――
「サトシ、こっからが本当のバトルだ!!リザードン、雷パンチぃ!!!」
「グオオオオオオッ!!!」
「水手裏剣!!」
「コウウウガァゥ!!」
加速しながらも迫って来るリザードン、その拳には雷が纏われている。あの時と似ているな、そう思いながらもゲッコウガは両腿に忍ばせている小型の水手裏剣を投げつけた、リザードンはそれを一撃のもとに粉砕するが、足場にしている水手裏剣を握り締めながらも上段からの振り下ろしを行う。
「負けるなリザードン!!!」
迫ってくる水手裏剣に真っ向から拳を振り抜く、先程のように粉砕する事は出来なかったが、それでも十分!!雷パンチを連打で繰り出すが、ゲッコウガは巧みな身のこなしと水手裏剣の扱いで雷パンチを全てブロックしていく。
「ドラゴンクローに電気を纏わせろ!!」
「ゥゥウオオオオオウウウウ!!!!」
「何っ!?」「コ、ガァァッ!!?」
突如、雷パンチのリーチが伸びた。雷パンチをしながらもドラゴンクローを発動させてその先端は雷を纏ったドラゴンクローが完成してゲッコウガの身体を抉った。だが、電気は長持ちせずに四散してしまい、ドラゴンクローが砕け散ってしまい、リザードンもわずかに顔を歪める。
「閃きでやってみたが、流石に無茶だったか……すまんリザードン!!」
「グオオオオンッ!!!」
「ああ、火炎放射!!!」
気にするな相棒、と返す相棒に更なるバトルの指示を出す。キョダイマックスの影響がまだ残っているのか、尻尾の炎はまだ青白い、このコンデションのまま押し切るしかない!!!と火炎放射を発射させるがそれは居合切りで一刀両断される。
「熱風をしながらエアスラッシュ!!!」
「ゲッコウガ、燕返し!!」
飛び立とうとしたリザードンを地に落とすかのような燕返しがクリティカルヒットする。リザードンの視界が揺れた、顎を的確に撃ち抜くかのような一撃が脳を揺らした、だが―――
「コウ、ガァゥッ……!?」
『な、なんとゲッコウガのボディに雷パンチが食い込んでいる!!』
『咄嗟に繰り出してやがる、なんつう根性だ……!!』
「コウウウガアアアアッ!!!!」
ゲッコウガは背負っていた水手裏剣をワザと破裂させて周囲に水をばら撒いてリザードンにダメージを与え、リザードンを怯ませながらもまるでラビを真似る様にガゼルパンチのようなグロウパンチをリザードンへと打ち放った。
「ゥゥウウオオンッ……!!」
「リザードン負けるな!!!最大パワーでブラストバアアアアアンッ!!!」
「ゲッコウガ、迅く―――水手裏剣!!!」
「コウウウガァァアアア!!!!」
ブラストバーンの発射体勢に入るよりもずっと早く、叩き込まれた水手裏剣。それはリザードンの身体を削るかのように激突し、巨大な水飛沫を上げて爆裂した。その爆心地でリザードンは目を回して動かなくなっていた。
『リザードン、戦闘不能!!ゲッコウガの勝ち!!!』
『リザードン陥落ぅぅ!!!ダンデ選手の相棒、リザードンもゲッコウガの前に屈してしまいました!!これがPWCSチャンピオン、これが世界で最も強いトレーナーの一人、サトシ選手だぁぁぁ!!!!』
「リザードン、済まない、本当に有難う……!!ゆっくり休んでくれ……」
リザードンをボールに収めながらも、ダンデは静かに自らの敗北を悟ってしまった。諦めたという訳ではない、あの時、サトシと絶対にバトルしようと思っていた時よりも遥かに強くなっていた彼を自分は心のどこかで侮っていたような気持になった。だが、彼は何処までもチャレンジャーでありながらも立派なチャンピオンとして自分を迎え撃ってくれている。そんな彼に……無敵のダンデと言われていた自分はもう勝てないな、と思ってしまったのだ。
「サトシ、最後の最後まで楽しませて貰うぜ、このバトル!!行くぜインテレオン!!!」
「レエエオオンッ!!!」
「よぉっダンデ、テメェも遂に負けたか」
「ハハハッそう言う事はやめてくれよキバナ、俺は精一杯やったんだぜ?」
ダンデはサトシに負けた、最終的には3対0でサトシのポケモンを一匹も倒す事が出来なかったのだから……インテレオンもサトシの最後のポケモンであるリザードンの地球投げの前に倒れた。本当に強かった……こんな気持ちになったのは初めてなのか、素直に気持ちを吐露した。
「なあキバナ」
「あん?」
「こんなにも嬉しいんだな、目標が見つかるって……レッドさんだけじゃない、サトシにも、勝ちたくなって来てしまった」
「へっどうだよいつもオレ様がお前に勝ちたいと思ってた気持ちを味わった気分はよ?」
「ああ、滾るな」
「テメェ」
「いて、殴る事ないだろ……?」
だがダンデは本当にいい顔をしている、それに免じてこの一発だけで許してやるとキバナは笑うのであった。
「もう一度鍛え直す為に旅にも出るか?」
「おい絶対やめろ、つうかテメェポケモンリーグ委員長兼四天王だろうがよ。せめて委員長は後任を決めてからだろっていうかテメェ方向音痴の癖に旅だぁ?一生帰らねぇつもりか」
「そこまで言うかお前」
「事実だろ、視界に見えてる昇降機にすら辿り付けねぇ馬鹿が何旅とかほざいてんだ」
二人はライバルだ、だがそこにあったのは完全な気心の知れた友人の空気だった。
すいません、キョダイマックスリザードンとメガサトシゲッコウガで全てを使い果たしてしまいました……。
さて次はラビとミクリかぁ……。なんで主人公の活躍が毎度遅いんですかね。