このPWCSは今大会でも屈指の熱を纏っていた。インターネットでの配信視聴者数、TVでの視聴率は過去にない程に高く、全世界が文字通りにこのバトルに注目を集めていたのである。その理由は―――準々決勝第一試合、シロナ対レッド。これに尽きる。
『準々決勝第一試合、大注目のカードが今切られようとしています!!シンオウ地方チャンピオン、地方別チャンピオンランキングでも常に上位をキープし続けるクールビューティ、シロナ選手!!!!対するは生ける伝説としてそれが歴史に刻まれる事が確定しているレジェンド!!皆は彼の事をこう呼びます、原点にして頂点だと!!レジェンドチャンピオンマスターレッド選手!!!!』
遂に行われる伝説対伝説。この試合をどれ程懇願した者がいただろうが、見たいと思ってもトーナメントは時の運で決まる偶然の世界、近くに配置されようとも敗北によって阻まれる事なんてざらにある事。それが今回遂に見られると皆興奮冷めやらぬ状況、暴動にならぬのが不思議な程の熱狂がパルデアどころか世界中に蔓延している。特にカントーとシンオウは凄い熱気になっている。
『準々決勝より、対戦ルールは6対6のフルバトルとなります!!各選手はメガシンカ、Zワザ、テラスタル、ダイマックスは一度ずつの使用が許可されます。ポケモンの交代は両者自由となります。それでは……シロナ選手、レッド選手。両者、最初のポケモンをフィールドへ』
「震えよ魂、ミカルゲ!!」「ミィッィイカアアアルゲエエ……!!」
「ピカチュウ……!!」「ビィガッ!!!」
『シロナ選手の先鋒はミカルゲ、対するレッド選手はお馴染みの切り込み隊長ピカチュウです!!これは奇しくもサトシ選手とシロナ選手のバトルを思い出させる対面です。ですが、レッド選手はサトシ選手とは違います、どのようなバトルが繰り広げられるのか!!?』
『FIRST BATTLE ミカルゲ VS ピカチュウ!!3、2、1……BATTLE START!!』
「素早く―――瞑想、力強く―――バークアウト!!」
「素早く―――高速移動、力強く―――ばちばちアクセル!!」
開始早々の技の応酬、瞑想で強化しつつも力業で範囲と威力を向上させたバークアウトが放射されるが、それをまるで瞬間移動かと見紛う程のスピードで移動するピカチュウ。そしてあっという間に懐に飛び込んでばちばちアクセルを当てようとするのだが、ミカルゲは即座に地面に沈ませて回避する。ゴーストタイプ特有の透過回避、レッドも予測していたのか、それとも挨拶代わりの一撃程度のつもりだったのか落胆も驚きもしない。
「流石のスピードねピカチュウ」
「其方も、並のミカルゲなら当たってる」
「あら、私のミカルゲが並だと思っていて」
「思う訳が無い」
「なら良かったわ、私の目標の一人が耄碌したなんて思いたくないもの」
「其方も腕が落ちてないようで何より」
ポケモンだけではなく、舌でも戦いを繰り広げ始める二人。一部界隈ではラビがミクリ戦で披露したあれらを非難するという事も聞いたが、レッドとシロナはインタビューでそれの意見を求められた時は何を言っているんだと思ってしまった。あの程度で調子を崩す方が悪いし、バトルはポケモンだけですると思っている方が浅はかで愚かだと二人は同じ意見を述べ、ラビのそれは反則でもないし自分達だってする事だとコメントしている。
そしてこういう技を使う事にも非難があるが―――馬鹿な風潮だと、シロナは思いながらも言う。
「素早く―――瞑想、そして力強く―――呪い」
「ミカンン……ルゲエエエエエ!!!」
「っ素早く―――悪巧み、力強く―――10万ボルト!!!」
「ビカビカビカ、ビカヂュウウウウウウウッ!!!!」
ミカルゲの行動を見て即座にダメージを元に戻す悪巧みをしながらも10万ボルトを指示。矢張り10万ボルトは安定したダメージと命中を誇るのでレッドも愛用する、それは確かにミカルゲに命中するがミカルゲの目は死なず、そのまま身体に巨大な釘が突き刺さると―――ピカチュウは10万ボルトを思わず中断してしまいながらも歯を食いしばりって苦痛に耐える。レッドは舌打ちをしてしまった、間に合わないのとダメージが届かなかった事への後悔。
「……驚いたわね、力業呪いに耐えるなんて……ウチのガブリアスでも動けなくなるのよ、これ」
「ビイガァァァァゥ……!!!」
こんなもの、全然苦しくないさ……!!と言いたげに不敵な笑みを強めるピカチュウ。流石はレッドのピカチュウだと言わざるを得ない、だがシロナは同時によくぞミカルゲは耐えてくれたと思っている。力業呪いは通常の呪い以上に体力を消費する、瞑想の特防アップ分をチャラにされた10万ボルトを受けているのに耐えた、本当によく耐えてくれた。
「此処は攻めるしかない、素早く―――高速移動!!力強く―――アイアンテール!!」
「そう来ると思ってたわ!!素早く――瞑想、力強く―――嫉妬の炎!!!」
一気に加速しながらも力強くアイアンテールを放とうとするピカチュウだが、そこへ紫色の炎が立ちふさがってその身体を焼いてきた。ピカチュウは更なる痛みを感じながらも突破して、ミカルゲの身体に一太刀と言わんばかりにアイアンテールを炸裂させるが、まだミカルゲは落ちない。この日の為に耐久訓練を積んで来た甲斐があったとシロナは笑う。
「ビ、ビイイガァァァ……」
「嫉妬の炎、読まれたか……」
嫉妬の炎は能力上昇をしてから少しの間、時間にして20秒程度までに相手に命中させる事が出来れば確実に火傷にする事が出来る技。耐久戦が得意なミカルゲを落とす為に能力を上げて来る事が多い為にこの技は刺さり易い。
「ビィィイガァァァアッ……!!!」
「(後一撃……やるか)素早く――ピカピカサンダー!!!」
「ピイイイイイガアアア……!!!」
大きく跳躍しながらも頭上に雨雲を生み出しながらも電力を高めていくピカチュウ、ラビのピカチュウから習ったこの技で行くしかない、ボルテッカーは最悪の場合はミカルゲに迫るまでの間にダメージで落ちてしまう可能性すらあるのでこれしかない。が―――相手が神出鬼没のゴースト、容赦ない悪のミカルゲ。シロナは悪い笑顔をしながら言った。
「不・意・打・ち♡」
「ルッゲエエエエ!!!」
「ビッ―――ガァァァァ……」
真上へと瞬間移動するように移動したミカルゲが要石を叩きつけるようにしてピカチュウに不意打ちを炸裂、ピカチュウは自らが落とそうとしていた雷のようにフィールドへと落下した。そして―――
「チャァァァ~……」
目を回して動けなくなっていた。
『ピカチュウ、戦闘不能!!ミカルゲの勝ち!!』
『ミカルゲ渾身の不意打ちが炸裂ぅ!!!先手を取ったのはシロナ選手です!!レジェンドチャンピオンマスターの切り込み隊長たるピカチュウを討ち取りましたぁ!!!これまでピカチュウを倒す事に成功しているのはシンジ選手のみです!!』
『序盤から呪いでピカチュウの体力を削る作戦に出るとは思い切ったな……私だったら体力が限界近くになった際に使う事を考えてしまいますが……ピカチュウ相手には序盤の方が有効という事でしょう』
ラバイの解説を聞きながらもレッドはピカチュウをボールに戻す。本当によくやってくれたと思いながらも次のボールを手に取る。
「なら次は―――オオニューラ!!」
「ニュウルラァ!!!」
『お、おっとレッド選手次鋒はなんと今や超希少種となっているヒスイポケモンのオオニューラです!!どんなバトルを見せてくれるのでしょうかぁ!!?』