続くレッドの二匹目はオオニューラ、既に絶滅されたとされるヒスイ地方に生息していたとされるポケモンの登場。それに沸き立つ中でレッドの視線は未だに厳しいままだった。状況的には此方の方が圧倒的に不利……オオニューラを出したのはその速度ゆえだが……厳しいと言わざるを得ない。
「オオニューラ、厳しいけど頼む」
「ニュウンラ」
オオニューラはそれ以上言うな、分かってると言いたげに瞳を閉じながらもレッドの言葉を制するように手を翳す。相手はあのミカルゲ、体力を大幅に削る事が出来ているが、それすら此方の不利材料になってしまう。
『NEXT BATTLE オオニューラ VS ミカルゲ!!3、2、1……BATTLE START!!』
「オオニューラ、突撃!!」
「ニュルンラァッ!!!」
『オオニューラ素晴らしいスタートダッシュです!!これは良いスピードです!!』
『流石にヒスイポケモンの情報はないですねぇ……こんな時はっ―――って兄さんに繋がらねぇ!!?』
『流石に対策されましたか』
オオニューラが身軽な身のこなしで迫ってきたその時、シロナは少しだけ笑う。なんて素晴らしいスピード、これはショウの日誌に書かれていたオオニューラなのかと少しだけ感動してしまっていたが、その瞳は間違いなくトレーナーとしての彼女の光があった。
「素早く―――フェイタルクロー」
「素早く―――痛み分け」
両者ともに業が発動がされる。だがそれは異なっていた、オオニューラの得意技であるフェイタルクローとミカルゲの痛み分けが発動されるが―――レッドは道連れじゃない事に疑問を覚えたが、即座に理解した。見抜かれた、ならばプランを変更するだけだ。
「ニュウウッラァクァアンッ……!!」
「耐えろオオニューラ、そのままブチ抜け」
「ニュウラアアアッ!!!!」
痛み分けで自身の体力を大幅に削られながらもミカルゲに奪われていく実感を味わいながらもオオニューラはフェイタルクローを直撃させた。吹き飛ばされるミカルゲだが、即座に体勢を整えて来た。体力は恐らく半分近く回復している、此方も大幅に体力を奪われている……だがこれで―――
「―――……ルゲェッ……」
「毒、毒ならまだめっけもんって所かしら……」
ミカルゲは苦しげな声を漏らす、フェイタルクローのダメージだけではない。毒を受けている、確かオオニューラの特性は毒手……その場合のフェイタルクローは、毒になる確率は60%を超えるとラビが言っていただろうか。この状況の毒、いや利用する事を考えるしかない。
「面白いのを見せよう、オオニューラ」
「ニャウウウウルンッ!!!」
爪をぶつけ合い、まるで研ぐような動作をした後に両腕へと滴らせていく毒液。地面へと垂れていく毒液は音を立てながらも毒の煙を立ち昇らせていく。
「素早く―――毒突き」
「ンンンヤアアアアアニュラニュラニュラニュラニュラ!!!!」
そのままレッドは早業を指示、それによって超加速した毒突きは毒液が拳のような形をしながらも弾丸のように発射された。オオニューラ持ち前のスピードと業の組み合わせの影響か、オオニューラ自体はその場から動いていないのにも拘らずオオニューラの拳が離れているミカルゲにも届くという事態が発生した。
「なんて事を考えるのかしら、素早く―――守るよ!!!」
「ルゲェッ―――ルゲェッ!!?」
その時になってシロナもミカルゲも理解した、ミカルゲの身体を蝕んでいるのは毒などではない―――猛毒だ。
「鍛えたからってこうなるなんて……ヒスイのポケモンにはこんな可能性もあるの……!?」
「ル、ルゲェェッ……!!」
気付かぬうちに侵されていた猛毒、これによる精神的なダメージは中々に大きい。
「この毒突き……どういう威力を……!!」
守るで防御出来ているが、徐々に守るの防御壁に亀裂が入り始めている。ミカルゲの守るの防御力はそれこそ一級品。守るという技の性質にミカルゲ自身の耐久力も合わさって鉄壁と自慢出来る物であるはずなのに……オオニューラがラッシュを止めると漸く、ミカルゲも守るを解く事が出来た。これ以上は集中力が持たなかったと思った直後、ミカルゲの身体がガクンと落ちそうになった。
「ミカルゲ!?」
「ル、ルゲェッ……!!?」
まるで寝落ちしそうな人のような動きにシロナは猛毒の疲労がもうそこまで来てるのか、と思ったが違う。このフィールドに撃ち込まれ続けた毒突きの残滓……それが放っている毒の煙にシロナは素早く口元を覆う。
「ミカルゲ、気を付けて!!様々な毒をばら撒かれてるわ!!」
「ルゲェッ!!」
「オオニューラのスペックを活かす、でも多分これはラビなら出来ると思う」
―――出来てたまるか人を何だと思ってんだ赤帽子。
どっかからラビの声が聞こえてきそうなこの状況。これに関してはレッドも想定外の事でオオニューラを鍛えている際に毒タイプの技精度向上を目指した訓練をしている時にフェイタルクローを見て思いついた。
『オオニューラ、フェイタルクローの毒を毒突き、いや常に使えない?』
『ニュ、ニュラ?』
流石のオオニューラもお前何言ってんの?と言いたげな顔をしたが、レッドは検証と研究を重ねた結果として、フェイタルクローで齎す状態異常の毒を全て混合させる事に成功し、それを別の毒の技の起点として使えるようにした。つまり、先程の毒突きは毒突きとして指示を出しているが、実質的にはフェイタルクロー。オオニューラだからこそ出来る技その物を発展させた応用ワザ。
「これはマズいわね……!!」
自分側のフィールドにはオオニューラの毒がばら撒かれてしまっている、これでは実質的にオオニューラのフィールドだ。毒タイプを持っているオオニューラにはこれらの毒は無意味、ならばどうするかと思った直後に先程まで自分達を警戒していた筈のオオニューラが懐に飛び込んできた。
「力強く―――フェイタルクロー!!」
「ニャアアアウラァア!!!」
「ミガアアアアッ……!!」
「今度は道連れを恐れないですって……!?」
先程の攻防で明らかに向こうは道連れを警戒していた、だからこそ早業を用いてもラグを埋めきれないので痛み分けにしたのだが、今度はそれを恐れずに突っ込んで来る。思考の転換と切り替えが本当に上手い。
「だけど負ける訳にはいかないわね。素早く―――瞑想、力強く―――サイコキネシス!!」
「オオニューラ、勢いよく回転素早く―――剣の舞、力強く―――地獄突き」
「ニュラニュラニュラニュラァァァ!!!」
その場で高速回転し始めたオオニューラはそのまま剣の舞、跳躍からの地獄突きへと繋げていくが―――火力を増強した地獄突きを回転しながら作り出す事でまるでドリュウズのドリルライナーが如く突き進み、サイコキネシスを真正面から突き破り、そのまま突破してしまう。
「ならば―――ここよ!!素早く―――道連れ!!」
来た、矢張り来たかとレッドは思った。此処しかないというタイミング、オオニューラでもこの距離を詰めるのは容易ではない。
「迅く―――フェイタルクロー!!!」
「ニュウウウラアアアアアオオオオオッ!!!」
刹那、オオニューラはミカルゲの背後にいた。道連れの動作を完了しようとした時にオオニューラは爪を振った。爪に残った余分な毒液を払うかのような動き、その直後にゆっくりとミカルゲは倒れ込んで動かなくなってしまった。
「ミカルゲ!?」
「お、んみょ~ん……」
『ミ、ミカルゲ戦闘不能!!!オオニューラの勝ち!!!!』
『こ、これは一体何が起こったのでしょうかぁ!!?道連れの体勢に入ろうとしたミカルゲをオオニューラが素通りしたかのように背後へと回り、ミカルゲが倒れました!!!何が起こったというんだぁ!!?』
『あの一瞬で、技を繰り出した、それしかない……ミカルゲも道連れを出す事に必死になっていた……気付かれない間に……』
瞬撃による超加速した一撃、それは相手にダメージを負ったという認識すら残さない。突然ダメージが発生したように感じる程のスピード、だがオオニューラにはまだ瞬撃は早かった……とレッドは少しだけ後悔した。他のメンバーは何の問題もなく放てるそれに対してオオニューラは業の反動でダメージを受けてしまっている。まだレベルと慣れが足りないか……と反省する。
「有難うミカルゲ、いいバトルだったわ。ゆっくり休んでね」
ボールに軽くキスをしながらもシロナは前を見る。レジェンドチャンピオンマスターたるレッドの実力を自分の身体で感じ取っている。矢張りとんでもないトレーナーだ、だがだからこそ勝ちたいのだ。この強いトレーナーに……!!
「恵の翼、ここに!トゲキッス!!」「トゥゥウスッ!!!」
『シロナ選手の次のポケモンはトゲキッスです!!地上対空のバトルとなりそうだ!!』